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シアの赤い空  作者: 光政
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1.過去 -出会い-

初めての投稿です。

文字間違えや、おかしな部分もありますが、

楽しんで貰えたら嬉しいです。

 シアは首につけたネックレスを右の人差し指で触りながら、夕日で赤く染まる空を見上げた。


  いつもと同じ赤く染まった空の色を目に映して、あの日の光景や出来事を思い出し苦しくなる。


  シアはぎゅっと目をつぶり、深い深呼吸をしてまた空を見上げた。


  あの日、親代りをしてくれていたマーサが、私の八歳の誕生日を祝ってくれていた。


  マーサは、親がいない私に家と教育を与えてくれた人で、美人で頭が良く、どんな時も優しい笑顔で温かく見守ってくれるような人。


  夜は寂しくなるのが嫌で、寝るまで近くにいてほしいと、母に甘えるかのようにマーサに甘えていたのを覚えている。


 ケーキを食べて、マーサと久しぶりに今日は一緒にお風呂に入ろうかと、笑いながら話していた時、爆発音が響きわたり地面が揺れた。


 シアが住んでいたのは、サリーシャ連合王国の一つであるタリジア国。そのタリジア国内でも最北にある街だった。


  サリーシャ連合王国は五つの国で形成されていて、シアが住むタリジア国は中央のサリーシャ国の上に位置している。


 中央であるサリーシャ国には、君主であるジルベート王が住んでいる為、政権を担う人達は皆サリーシャ国に集められていた。


 連合王国は各国毎に風習や法に少しづつ違いはあるが、お金や言語は全て共通になっている。なぜなら、連合王国内で生まれた民は、連合王国内の国であればどこの国でも住む事が出来るのだ。


 そのおかげで、民は人種に関係なく結婚し、仕事を求めて国を行き来する生活をしている。


  サリーシャ連合王国の近くには、リバイア連合王国とガバス連合王国が存在し、ガバス連合王国は、ガバス国の王女がサリーシャ君主の正妃に輿入れしたことで比較的友好な関係である。その反面、リバイア連合王国とは小さな争い事が絶えず、いつ戦争になるか分からない状況であった。


 シアがいる街の近くにはリバイア連合王国の一つ、ターダ国との間に国境壁があり、リバイアの兵により破られた事で爆発音響き、シアのいる街に兵士が押し入り次々と火をつけ始めたのだ。


  マーサと私は地面の揺れがある程度収まると、外の様子を見る為おそるおそる窓に近づく。


  アパートの二階から見えたのは、夜なのに赤く燃え上がる空と、逃げ惑う人々と追いかける兵士の姿。


 マーサは窓から震える私を引き剥がすと、食卓の椅子に座らせ、私の目線をマーサの目に無理矢理合わせて口を開いた。


 「ここから逃げます。 必ず生きなくていけません。 気を強く持ちなさい!」


 マーサは居間のキャビネットから金の腕輪を取り出し、シアの腕に急いではめる。シアには腕輪はまだ大きく、マーサは肘の上まで腕輪を押し上げて無理矢理つけた。


 「私の言うことを絶対に忘れないで、この腕輪はシアの瞳と髪色を変えるものです。 必ず取らないように、あと首にしているネックレスも必ず守りなさい。これから走ります。 私の近くから離れないように、いいですね」


 マーサの言葉は力強く、私は涙が出るのを堪えながら唇を噛み、マーサの目を見て小さく頷いた。


  マーサと共に部屋から出て、アパートの入り口まで行くと走る兵士の姿が目に映る。


  兵士が行くのを入り口でやり過ごすと、森がある方角へ向かう為、家と家の間の狭い裏路地をすり抜けながら、街の中心を通り過ぎて行く。


 途中で人々の叫び声や馬の走る音が聞こえ、火の粉が顔について熱くて足が止まりそうになったが、マーサが私の手を引っ張ってくれてどうにか立ち止まらず前に進むことが出来た。


  森近くの家まで辿り着いたが、森に入るには目の前の大きな道を走らなくてはいけない。マーサは、柱の影で兵士がいないか何度も確認していた。


 マーサの後ろから道を覗き見ると、血で赤くなりながら倒れている人々が目に飛び込んでくる。倒れた人々の中には、私と同じくらいの子もいるのに気づき怖くなった。


 倒れている子に自分の姿を重ねてしまい、足がすくむ。震えていると、マーサが私の方へ体を向けてしゃがんだ。


  マーサは私の肩に手を置き、煤で黒くなった顔を私と同じ高さにして語りだす。


 「ここから森まで、今までよりも早く走らなくてはいけません。 真っ直ぐ前を見て走るのですよ、何があっても足を止めてはいけません。 いいですね、約束ですよ」


 マーサの緑の瞳が不安で揺れていたが、すぐに立ち上がると私の手を引いて走り出した。


 自分の大きくなる息の音を耳にしながら、マーサから言われた通り真っ直ぐ前を見て走る。いきなりマーサの手が離れて、そのまま前に飛び出すように転んでしまった。


  顎や肘が痛かったが、転んだ拍子で腕輪が外れてしまい前に転がっていくのが見えたので、急いで立ち上がり腕輪を手に取る。


 マーサはどうしたのだろうと、後ろを振り返ると兵士に足で蹴られ蹲っていた。


 兵士が剣を持ち上げたので、私はマーサの元へ駆け寄ろうとすると、マーサと目が合い足が止まる。


 「早く、真っ直ぐ走るのです! 約束したでしょう、あなたは必ず生きて!」


 「あ-- ぁ---」


 「早く行きなさい!」


 マーサの叫ぶような声に涙が溢れたが、震える足をどうにか動かし、マーサに背を向けて森の方へ走り出す。体も心も痛く、視界もぼやけ嗚咽で息も上手く吸えない。


 どれくらい走ったか覚えていないが、疲れて大きな木の側でしゃがみ込み、咳き込みながら目を閉じて涙を流した。


 どうして走ることも出来ないのか。ただ泣くことしか出来ない自分に苛立つ。

 

 どうして ----、何で ----


 頭の中がぐちゃぐちゃになり、側に落ちていた石を掴んで投げた。


 「見〜つけた! なんでさっき逃げちゃったの? 疲れちゃうじゃん。君も殺してあげるからね」


 声が聞こえたので振り向くと、先ほどの兵士がすぐ近くにいる。頭の中が急に真っ白になり、体が震え動けなくなった。


 兵士は、血がついた顔でにっこりと笑って私に問いかけてくる。


 「首がいいかな、お腹かな〜、足からもいいかな、ね、 何処がいい?」


 --- やだ、どうして--- やめてよ!


 「---- イヤっ」


 「質問に対して、イヤって答えはないよね〜、じゃあ決めちゃうよ? 足からかな!」


  兵士が剣を振り上げた時、シアの体が急に浮いた。


 誰かの腕がお腹にあるのを感じ、目線が地面を捉え剣の音が鳴り響く。


 「誰あんた、邪魔しないでよね」

 

 「煩い」


  兵士の声と自分を抱えた人の声が聞こえると、再び剣の音が鳴り響き、音が大きくなっていく。誰かの血がシアの顔に飛んでくると、ドスンっと音がして倒れた兵士の姿が目の端に入り込んだ。


 「大丈夫か? 怖かっただろう。もう安心していいからな」


 男性の腕から地面に優しく降ろされ、ゆっくりと目を上げると透き通った真っ赤な瞳を見つけた。

 

  黒髪に、赤い瞳の騎士は私の頭を撫でた後、顔についた血を指で拭いながら優しい笑顔を向けてくれる。


 その瞳と優しさから、安心してしまい力が抜けていく。私は意識が保てなくなり、視界は黒く塗りつぶされた。


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