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9 ……最近、本当に思うんです。ずっと昔から思っていたことだけど、あなたに会えて、本当に良かったって、……本当に思うんです。

 ……最近、本当に思うんです。ずっと昔から思っていたことだけど、あなたに会えて、本当に良かったって、……本当に思うんです。


 叶が自分が記憶喪失であるということを祈に話すと、祈はまた、腹を抱えて爆笑した。

「そんなに笑うことないだろ」顔を真っ赤にしながら叶は言う。

「……ご、ごめん。ごめんなさい。でも、だって、……叶くん。君、面白すぎるよ。ここがどこだかわからない。なんで自分がこんな場所に一人でいるのかもわからない。おまけに弱虫くんだし、ぼんやりくんだし、さっきまで全然笑わないし、さらに、『記憶喪失』なんだって。……本当に叶くん。君は最高に面白いよ。……もう、ちょっと待ってよ。それ私のことからかっているわけじゃないんだよね? 本当のことなんだよね?」

 と笑いながら、祈は言った。

「本当だよ。全部本当のことだよ」と祈の背中を追いながら、森の中を歩いている叶は言う。

 するとまた、祈は腹を抱えて爆笑した。

「ちょっと待って。死ぬ。死んじゃう。……笑い死にしちゃう。……本当に死んじゃう」

 と笑いながら祈は言った。 

 顔を真っ赤にしたままの叶は、「おい。そんなに笑うなよ。僕は本当に困っているんだよ」と祈に文句を言った。

「ごめん。ごめんなさい。……でもさ、そんなことってある? ふふ。叶くん。最高だね。君は本当に」と祈は言った。

 そんな祈のことを見て、叶は(二人が初めて出会ったときのように、また)内心、むっとした。

 どうやら祈は、叶が元気がないように見えたから、叶のことを元気付けるために、あえて、叶のことを驚かせたり、叶うの前で笑って見せたりしていたようだったけど、でも、どう見ても今の祈は、心の底から笑っていた。明らかに叶のことを馬鹿にしていた。

「僕、先にいくよ。こっちに歩いていけばいいんでしょ?」と少し早歩きをして叶は祈に言った。

「あ、こらこら。待ちなさい。森の中は危険なんだよ。まずはこの森のことに詳しい祈お姉さんに任せておきなさい。叶くんは私の後ろについてくること。いい、わかった? ちゃんとお姉さんと約束できる?」

 と叶のことを見て、祈は言った。

 歩きながらの会話で判明したことなのだけど、祈は十八歳で、今、十七歳の叶の一個上の年齢のお姉さんだった。

 そのことが判明してから、ずっと祈は叶のことを一個下の年下の男の子扱いしてからかっていた。

 叶のほうも、祈が同い年ではなくて、一個上の年上のお姉さんだとわかると、今までのように、あんまり強く祈に反論することができなくなった。

「どうしたの? 叶くん。もしかして怒ったの?」と笑いながら祈は言った。

「なんでもないよ。なんでもない」とそっぽを向いて叶は言った。

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