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 ぐつぐつとカレーが銀色の鍋の中で煮込まれながら、いい匂いを出していた。

 炊飯器の中のご飯は、もう炊きあがっている。

「あと、カレー以外に、なにか作ろうか?」

 ふと、思い出したように、叶は言う。

「あ、そうだ! そうしよう! (自分で料理をするつもりだったから、カレーだけで、まあ別にいいかなと思ってた。まあ、二人の出会いのお祝いの食事ではあるのだけど、ちょっとだけ、めんどくさかった。楽したかった)じゃあ、サラダとゆで卵。それを、作ろう。それ、私も手伝うよ!」と、ようやく仕事を見つけた、とでも言いたげな、楽しそうな顔をして祈は言った。

「わかった。じゃあ、サラダとゆで卵は一緒に作ろう」と叶は言った。(本当は全部一人で料理をするつもりだったのだけど、ずっと手伝いたそうな顔をしていたので、ここは祈に頼むことにした)

「おう!」と手を上げて祈は言った。


 それから祈は手を洗ってから、張り切ってサラダを作り始めた。

 祈の料理の腕は、なかなかのものだった。

 毎日自分で料理をしていることが、その一切の無駄のない、あるいは、迷いのない、動きからすぐにわかった。

 祈りの料理の手際の良さに感心しながら、銀色の鍋に水を入れて、叶はコンロの上に乗せて、火をつけた。

 冷蔵庫から卵を取り出して、沸騰したらすぐに、鍋の中に入れられるように準備をする。

 ダンボール箱の中の食材は、ほとんどなくなった。(祈はちゃんと必要な分だけ、地下から食材を持ってきていたようだった)

 祈りはざくざくと綺麗に洗った新鮮な野菜を、キャベツ、レタス、きゅうり、そして、真っ赤なトマトを切っていき、それを引き出しの中から出して、用意した木の丸い深みのあるお皿の上に順番に盛り付けていった。

 それは、シンプルだけど、とても美味しそうなサラダだった。

 叶は卵をお湯の沸騰した鍋の中に入れて、ゆで卵を作り始めた。茹で時間は、……十分でいいだろう。そう思ってから、時計がないことに叶は気がついた。……まあ。かんで行こう。だいたい十分。と叶は思った。

 待っている間に、洗い物を片付けてしまおう。

 そう思って、叶は流し台の前に移動をして洗い物を始めた。


 その間、祈はてきぱきと動いて、キッチンの棚にしまってあった、真っ白なお皿を二枚取り出して、それから銀色のフォークとスプーンを二人分取り出した。紙ナプキンを用意して、それに白い陶器のコップを二つ、取り出したところで、祈は叶を見る。

「叶くんは、飲み物はコーヒーでいい? それとも、ミルクのほうがいいかな? あ、あとオレンジジュースもあるよ。どれにする?」冷蔵庫の蓋を開けながら、祈が言う。

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