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「あれ? 怒った?」

 女の子は叶に言う。

「別に怒ってないよ」むっとしながら、叶は言う。

「怒ってるじゃん」笑ながら女の子は言う。「怒ってない」怒りながら、叶は言う。

「はいはい。わかった。怒ってない。君は全然怒ってない」うんうんと一人で納得しながらその女の子は言った。

 それから女の子は地面の上に尻餅をついている叶の前に両膝を抱えるようにして座り込むと、そこからじっと叶のことを見つめた。

 叶もその女の子のことを見る

 二入はお互いの顔を見つめ合うような格好になった。

 ……その森の中で出会った不思議な女の子は、とても綺麗な顔をした美人の子だった。

 長い黒髪をした、雪のように白い肌の背の高い女の子。(叶の前に座り込む前に見えた女の子の身長は、間違いなく160センチ以上はあった。おそらく165とか、168とか、それくらいはあると思う)その女の子は、モデルとかをやっていても全然違和感のないような美しい顔と細く整った体をしていた。

 着ている服は真っ白な無地のフード付きのパーカーと白のハーフパンツ。足元は黄色のスニーカーを履いていた。荷物はなにも持っていない。アクセサリーのようなものも、腕時計なども、余計なものはなにひとつ身につけていなかった。

 その女の子はとても印象的な目をしていた。大きくて綺麗な目。(まるでガラス細工のようだと叶は思った)

 その瞳に見つめられていると、なんだか、自分の心がすべてその女の子に読まれてしまうのではないか? 伝わってしまうのではないか? と思えるような透明で綺麗な、……そんな純粋な瞳を女の子はしていた。女の子の大きな黒目の中に写り込んでいる自分の顔を見ながら、叶はそんなことを考えていた。

「どうしたの? じっと見つめちゃって。私に一目惚れでもしたの?」

 少し首をかしげて女の子は言った。

 女の子が首を動かすとその長い髪の毛がかすかに叶の目の前で揺れ動いた。

 その女の子の長い髪の毛からは、とてもいい匂いがした。凛と咲く白い花のような匂い。あるいは、雨上がりの少し湿気を残した、森の匂い。……残り香のような、雨の匂い。そんな匂いがその女の子の長い黒髪からは漂っていた。

 確かにその女の子は美しかった。叶でなくても、この年頃の男の子なら、ほとんどの男の子がその女の子を見て一目惚れをしてしまうような姿をその女の子はしていた。

 でも、叶がその女の子の顔から目をそらすことができなくなったのには、別の理由があった。

「違うよ。そうじゃない。……ただ」

「ただ?」

 もう一度今度は逆の方向に首をかしげて女の子は言う。

「……僕たち、以前にどこかであったことないかな?」とその女の子の顔をじっと見つめながら、叶は言った。

 記憶喪失のはずの叶は、なぜか、その女の子の顔に見覚えがあった。その女の子のことを以前どこかで見たことがあるような気がしたのだ。

 叶はじっと女の子の顔を見つめた。

 すると、その女の子はそんな叶の言葉を聞いて、「……ねえ、それってもしかして君は私のことを口説こうとしているの? なんだ、やっぱり私に一目惚れじゃん。君、素直じゃないね」

 と、一度ため息をついたあとに、その女の子は叶に言った。

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