表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/55

29

 祈の家のリビングはとても綺麗で、それから、置いてあるものが少なくて、そして、すごくしっかりと片付いていた。

 掃除も行き届いているようで、埃っぽいところもない。

 白いカーテンが開いている四角い窓から差し込んでいる太陽の光が、ぴかぴかに磨かれている楕円形をした木のテーブルの上や、木の床の上で輝いている。

 壁には八角形をした時計があった。

 時計の針は二つとも『12の数字』を指している。今は、お昼の十二時だということだろうか? (でも、その時間の感覚には少し違和感があった)

 ……今は本当にお昼の十二時なのだろうか? 祈は、森の中でも、家についてからも、晩御飯のカレーと言っていたけど……。

(お昼ご飯のカレー、ではない)

 叶のいる静かなリビングの中は、窓から差し込む太陽の光で、本当に明るいのだけど、今が真昼の時間帯のようには、思えなかった。(もう少しだけ、時間がたっているような気がした。太陽も少し傾いていたようだったし、感覚としては、……三時か、あるいは、四時くらいと言ったところだろうと思った)

 でも、実際に時計は12の数字を指しているのだから、今はお昼の十二時なのだろうと叶が自分の時間の感覚のずれを、それもきっと記憶喪失のせいなのだろう、と思いながら、実際に近くまで歩いて行ってみていると、その時計は『どうやら、両方とも時計の針が止まっている』時計のようだった。

 ……時間が止まっている。

 その止まっている時計を見て、……なるほど。そういうことか、と叶は納得した。この八角形の壁掛け時計は現在の正確な時刻を指していないのだ。そう思って、叶は自分の中にある針の動いていない、時間の止まっている時計の時間と現在の本当の時間の、自分の中にある『時間の感覚のずれ』を納得することができた。

(今は、本当は何時なんだろう? 三時くらいだと思うんだけど……)


 叶は、ずっと手に持っていた青色のスポーツバックを、なるべくリビングの端っこのほうにある、あまり汚れが目立たないような場所を選んで、その木の床の上に置いてから、(家に入る前に裏口のところで、できるだけ手ではたいて土の汚れは落としたのだけど、叶のスポーツバックはそれでもまだ結構、土で汚れていた)木のテーブルの周りを、ぐるりと一周、ゆっくりと歩いてリビングの中を見て回ってみた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ