25 あなたは、美しい。
あなたは、美しい。
あなたは美しい。だから世界も美しいのだ。
あなたは美しい。だから世界はあなたのものだ。
この世界はあなたのものだ。だから、あなたの好きにすればいい。
祈の家は思っていたよりもずっと立派な家だった。(祈は小屋と言っていたけど、普通の家のように見えた。森の中にある避暑地のような、別荘のような家だ)
全部が木で作られた小さな家で、入り口の前には小さな木の階段があった。
屋根がとても綺麗な赤色をしていて、その屋根にはオレンジ色をした煉瓦造りの煙突があった。(暖炉の煙突だ。冬には、暖炉を使って、暖を取るのだろう)壁には四角い窓が幾つか見える。
薄緑色の草原の中にある小さな土色の道は、祈の小屋の前まで届いていた。(土色の道は祈の家の手前で二股にわかれていて、もう一方の道は、まだずっと先まで、薄緑色の草原の中に続いていた)
家の前には赤いポストが置かれている。
「どう? ここが私の住んでいる家なの。素敵な家でしょ?」と祈は言った。
「うん。すごく素敵な家だね」叶は言う。
叶は祈の家を見て、本当に、とてもいい家だと思った。
家の前についた二人は、その手を離れ離れにしていた。
そっと、手を離したのは、祈からだった。(手を離すときに、祈は、少し恥ずかしそうな顔をしていた。叶がそんな祈の顔を見ていると、「恥ずかしい。ずっと手をつないで、家まで歩いて帰ってきて。なんだか、子供のころにタイムマシンで戻ったみたい」と照れた顔をしながら叶に言った)
「部屋は三部屋あるんだ。私の部屋と、リビングと空き部屋。その空き部屋を使っていいよ」叶を見て、祈は言った。
「ありがとう」と叶は言う。
二人は祈の家の玄関の前まで移動をする。
祈の家の玄関は、とても綺麗な樫の木で作られた木製のドアで、そのドアにはベルのような小さな鈴が、白い紐でくっつけられていた。
その場所に立って、「私たち、泥だらけだね」と自分の家のドアの前で、二人の姿をまじまじと見て、祈は言った。
「本当だ」と叶は言う。
森の中をときには飛び跳ねたり、四つん這いになったりして、頑張って歩いてきた二人の姿は、全身がくまなく泥だらけだった。
そんな二人の姿をあらためて、二人でじっと見合ってから、二人は本当に楽しそうな顔で、自然とお腹を抱えて笑いあった。
「こっち来て。裏口から入ろう」
と祈が言った。
叶は祈はあとについて祈の家の裏口まで移動をする。
家の裏には小さな白いドアがあった。
その横には小さな水道のある、灰色の石で作られている水浴び場があった。祈は水道の蛇口をひねると、そこからは透明な水が出た。
その水で祈は自分の手を洗った。
「冷たくて気持ちいい」
叶を見て、祈はにっこりと笑って、そう言った。
祈が手を洗っている、水道から出ている透明な水は、太陽の光を浴びて、きらきらと輝いて見えた。




