唐突
「ねえねえ、秋の味覚って言ったら何思いつく?」ずいぶんと唐突な質問をしてきた。
「んー秋でしょ?やっぱり柿とかりんごじゃない?あげたら色々あるでしょ。」私は授業のまとめをノートに書きながら答えた。
「そうだよね~」・・・会話が終わった。たわいもない会話なのでこれ以上の広がりは考えていなかった。
「てことで、今日から旅行行こ!集合は自分ちの前で着替えとあと・・・モバイルバッテリーとか諸々持っといでね!」ちょちょちょ、話の展開が急すぎてついていけない。佐紀は幼馴染で性格は知りすぎているくらいに知っているので唐突な提案には慣れていたがまさか旅行を出してくるとは。お互い家族ぐるみの付き合いなので両親も「佐紀ちゃんがいるなら大丈夫ね。」と言ってくれるので私としても安心している。
「え、旅行って言ってもどうやって行くの?」心配性なのでいろいろと聞きたいが佐紀は一切秘密にして教えてくれる気配がない。「じゃ、今何時だっけ・・・。11時だから3時にうち集合!また数時間後にね!」と言うと颯爽といなくなってしまった。
そこから急いで帰宅し、両親へ連絡をいれて旅行の準備をささっと済ませた。着替えにモバイルバッテリー、お菓子、洗面用具などをキャリーケースにいれて2時50分くらいに佐紀んちの前に着いた。そこから20分してから佐紀がばたばたと出てきて「おまたせ!じゃ行こ!」と歩き出した。目的地は佐紀のみぞ知るといったところで私はわくわくしながらついていった。駅について電車に揺られること一時間半。有名温泉街へと到着し、今日泊まる宿へと入った。夜ご飯やお風呂を済ませ、部屋でゆっくりしていた。
「いやー、どこに行くのかと思ったけどいいとこ選んでくれてありがとうね。」
「いえいえ!美央が喜ぶ顔が見たかったからね。幼馴染ならではのやつよ(笑)」
しばらくたわいもない話をした後に佐紀が急に思い出したかのような顔をし始めた。
「そういえば金庫の中に何か入れてた気がするんだけど、美央ちょっと出してくれない?」
金庫の中身くらい自分で出してくれとも思ったが佐紀の頼みなので開けることにした。カギを開けると中には紙袋が一つ入っていた。袋から箱を取り出したタイミングで佐紀がクラッカーを数発鳴らした。
「誕生日おめでとう!」
驚きと嬉しさで思わず涙がでてしまった。そうだ、今日は私の20歳の誕生日だ。佐紀は私を祝うためにずっと前から計画していたのか。いろいろ考えると嬉しさで胸がいっぱいになった。
「ありがとう。これからもよろしくね。」
「こちらこそよろしく!」
あぁ、最高の誕生日だ。