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乗合バス

作者: 尚文産商堂

プシュとブレーキのガスの音を響かせて、バスが一台、俺の前に止まった。

久方ぶりに乗るバスは、俺以外の乗客はいないようだ。

整理券を、入り口そばにある発券機から引き抜き、それから一番後ろの座席に座る。

リュックサックは、空と同じ水色だ。

それも席の横に置くと、ほぼ同時にドアが閉まった。


外は乗ったところの田園風景から、徐々に山に入ってくる。

道の左側は崖で、右は切り立った崖だ。

左下には小川が流れているが、これは俺が動いている方向と同じ方向に流れている。

海がこっちにあるということもあるが、街もみんなそっちにあるからだ。

川だって、たまには街に行きたいこともあるだろう。


しばらくして、久々にバス停で止まった。

単なる時間待ちで誰も乗ってこないが、そこからの記憶があいまいになる。

要は、寝てしまっていたようだ。


起きた時にはバスの座席は半分くらい埋まっていて、山ももうすぐ終わりに近づいていた。

目的地はあと少しある。

それまで再びまどろみの世界へと落ちていった。


街中の賑わいが、耳に心地いい。

それがきっかけで俺は目を覚ました。

目的なのはバスの終着点の駅前広場だ。

そこで友人と待ち合わせだ。

カタン、カタンと、道路の段差とエンジンによって揺れ動くと、それだけ道が近づいていることが分かる。

そして、ようやく終点へとたどり着いた。

だいたい30分くらい乗っていただろう。

尻も痛くなってきた。

バスがバスターミナルへともぐりこむと、少しして止まった。

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