branch = 枝
昨日、失恋した。
彼は、失恋しなかった。
わたしは、なんでもない存在だった?
かれは、わたしのすべてだったのに。
三年程、身動きがとれなくなった。なんていうのは、わたしの心の中だけのこと。
日常生活において、わたしはむしろ活発に動き回った
昨日のことのように思い出せる、というだけのことだ。
さまざまな本を手にとってみて読むと、多くの人が必ずなにかをなくす体験をしているらしい。
各々が、それぞれ大切なものを失くし、無くして、亡くなって。
いっそ、わたしとひとつになってしまえばいいのにと思う。
そして皆が同じ瞬間、同じ場所で、同じシチュエーションで彼を失うことになるのだ。
そんなことを言うと、唯一無二の親友、でんちゃん(本名:枝田 喜雨 えだた きう)は
「いや、そいつがいなくなったからなんなの?」
と辛辣な一言。いや、わたしとひとつなんだから、同じように苦しいし悲しくなるんだよ。
「いや、だからそれがまずキモい」
親友になんてことを言うんだ、とすこし傷ついたけど、唯一無二の親友であるというのも、わたし側だけの認識だというのは、嫌でも日々思い知らされている。
高校に入学してから彼女に出会い、よくこうして無駄話をするが、彼女はそもそも誰とでも付き合いがよく、わたしのような人間にも時間を割いて(むしろ作らせて)こうして付き合ってくれているだけなのだ。
わたしは、一人なんだなぁ。
「アタシはね、夏休みが惜しい。」
キウイちゃん(こう呼ぶとキレられる)は頬杖をつきながら答える。
確かに。
今日の日付は月日、高校最初の夏休み前日。
ホームルームが始まる前の他愛もない会話。
まてよ、わたしと彼女、最愛の彼も、この学校の生徒も先生も、みんな、同じものを失くし、無くして、亡くなって?
これこそまさに運命共同体といえるではないか
「けど、あんたとだけは一緒に過ごしたくない。」
やっぱりわたしは独りぼっちだった。