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僕だってチートがあれば苦労なんてしていない  作者: 結城慎二
戦わなければ生き残れない!
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悲しいけどこれ戦争なのよね

 さて、なにから話せばいいだろう。

 結果から言えば僕らは戦に勝った。

 順を追って説明するとまず、オギンとサビーが首尾よくジョー隊に出会い作戦を伝達。

 そこで魔法効力が切れて行動不能に。

 二人の代わりにカーゲマンら三人を選抜して兵糧焼討ち隊を結成して送り出したジョーは、街道に出て敵本陣を背後から急襲する作戦を敢行。

 折りよくというか、防御柵を焼いたズラカルト軍は好機とみて一気いっきせいに僕らめがけて騎兵を吐き出していたため、手薄な本陣をじゅうりん

 背後から合戦の音が聞こえてきて動揺した騎兵の気配を直感的に察した僕が、全軍に反転攻勢を命じたことで攻守逆転、戦線を支え切れなくなったズラカルト軍が潰走したというのがことの顛末だ。

 そして、戦後処理だ。

 三日目の敵軍戦死者は騎兵二、剣兵七、弓兵一。

 捕虜は騎兵二、正規剣兵六、傭兵二、正規弓兵四、傭兵六。

 味方の死者は九人に及んだ。

 地味に痛い。

 そうそう、ホルスを全部で七頭手に入れた。

 こっちは大収穫と言っていいかな?

 数字の話が続いてアレなんだけど、今回のズラカルト軍総数百五十(騎兵二十、弓兵五十、剣兵八十)に対して戦死三十五、捕虜三十四。

 この世界の戦争が一般的にどんなもんだか判んないけど、戦死者だけで全兵力の四分の一ってもう大惨敗としか言いようがないだろ、これ。

 こっちとしては大勝利だけどな。

 確か事前情報ではズラカルト男爵の現有戦力三百人って話だったから、これだけ打撃を与えられればしばらく来ることもないだろう。

 ひとまず当面の危機は脱したと言っていい。


「さて……」


 僕は騎士の捕虜二人を前に座っている。

 ここは僕の館だ。

 僕の右側にはジョーが、左にはルビンスが立っている。

 ルビンスが心持ち苦虫を噛み締めるような表情をしているのがおもんぱかられる。

 それもそのはず、捕虜の二人というのがルビンスの父ルビレルとその主筋にあたるオルバックJrジュニア.だからだ。

 こりゃもう、ボンクラジュニアを助けるために奮戦して一緒に囚われたとしか思えない。

 余談だけど、以前ルビンスと一緒に捕虜になったあと、ルビレルに使者として送り出した従者が今回もルビレルの従者として捕まっている。

 ついてないねぇ。


「騎士は捕虜として丁重に扱うことになっているのだけど、どうしたもんかね?」


 事前にジョーとは打ち合わせをしてのぞんでいるわけだけど、ホント、どうしたもんかね?


「お館様のご随意に」


 ったく、ジョーってばさ。

 ちょっと意趣返ししないとダメだろ、これは。


「我が館には客間が四部屋あるので三人なら留め置くことは造作ないが、ここは()()の館であるから客人が来た折の部屋がないと困る。こちらの御曹司はジョーの家に預けよう」


「え……ふむ、そうか。うむ、仕方ない……のか?」


 へっへっへ、ちょっと溜飲が下がった。


「いずれ代官殿から使者がこようから、せいぜい身代金をふんだくってやろうじゃないか」


 と、うそぶいて見せたらジュニアってばきっとまなじりあげて僕を睨みつけてくる。

 あー、やっぱダメだなこいつ。

 さすがにわめいちゃうほど教養なしじゃないようだけど、自分の立場を判ってない。

 態度ってのは心証に大きく関わってくるから、その後の待遇が随分と変わるんだけどねぇ。

 ルビンスからこいつの代わりになる後継がいないって聞いたから、オルバック家の未来は決定したようなもんだ。


「じゃあ、よろしく頼むよ」


 と、ジョーにさっさと引き取ってもらうことにした。

 ジュニアがいなくなったあと、改めてルビレルと向き合う。


「お久しぶりです」


 と、言っておこう。

 ルビレルは目を伏せることで返事を返してくる。


「話したいことは色々あるのですが、気持ちの整理もつかないでしょう。外聞もありますのでしばらくは幽閉させて頂きますが、要望があれば言ってください」


 それにも無言で頭を下げるだけだった。

 いかにもふるつわものって感じだよな。

 クレタに客室に案内させてフゥとため息をつく。


「積もる話もあるだろうから、行っていいよ」


「かたじけない」


 ルビンスは親父によく似た仕草で頭をさげてルビレルの後を追う。


「オギン」


「ここに」


 ヌッと現れる様がいよいよかげろうのお銀然としてきたな。


「念のため見張っていてくれ」


「かしこまりました」


 武器を取り上げているとは言え、ちょっと無用心かな?

 でもまぁジュニアと違って大人しくしていてくれると僕は信じているよ。


 館を出て中央広場に移動する。

 そろそろ空が茜色に染まり始めている。

 冬の日はつるべ落とし……いや、これは秋の季語か。

 とにかくだ、昼の短い季節だし、火が落ちると一気に寒くなるし、とっととこっちも済ませなきゃな。

 この町には現在、住宅が不足している。

 冬になって流入人口が減少したことで、住宅不足は解消しつつあったわけだけど、捕虜が一気に四十人近くも増えたとあっては住宅建築も追いつかない。

 特に今日だけで二十五人も増えたのが痛いんだ。


「どうだった?」


 敵野営陣に向かわせていたカシオペアメンバーが戻っていたので訊ねると


「なんとか使えそうだ」


 との返答だったので、今日は見張りを立てて、騎士以外の捕虜は野営地に送ることにした。

 見張りはこちらのカイジョー以下、元傭兵の八人とサビー、ガーブラの総勢十人。

 武器を取り上げて拘束した捕虜ならこの人数で大丈夫だろう。

 町の守備が手薄になるけど、もう襲われるような事態にはならないだろうしね。

 捕虜の護送と入れ違いに町の戦死者の埋葬を終えたグループが墓地から戻ってきたので、丁重にねぎらう。

 一番きつい仕事を割り振っちまったからさ。

 これにはルダーが率先して関わってくれた。

 前世が戦中派の彼は、戦争を知らない団塊ジュニアの前世持ちである僕とは肚の括り方が違う。

 それにしても……九人は多い。

 働き盛りの労働者でもある彼らを失うのは経済的損失だし、避けられない犠牲でありある程度の覚悟はあったとしても、遺族の胸中は複雑だろう。

 僕に対してわだかまりを持つものが出てきても詮ないことだ。

 なにより僕自身が見知った人の死に大きな精神的ダメージを自覚している。

 この先まだまだきっと犠牲者は増える。

 今はそんな時代のただ中にいるという、そういう現実が僕の心に刻まれた。

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