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僕だってチートがあれば苦労なんてしていない  作者: 結城慎二
戦わなければ生き残れない!
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軍略

 結論から言うと、手ぐすね引いて待ち構えている槍兵の突きをしゃ突っ込んでくる剣兵があしらえるわけもなく、何人もの敵兵が槍の餌食になった。

 ちなみにくすは補強のため弓弦などに塗るものだ(大辞林)。

 この日の戦闘は、早々に敵軍が退却したので終了だ。

 うーん……やっぱり一日じゃ終わらなかった。

 カイジョーが弓兵三人と剣兵十二人を見張りに残して戻ってくる。


「見張りが十五人でいいのか?」


「大丈夫だ。たぶん今日の夜襲はない。あくまで念のために残しているだけ」


「根拠は?」


「まず、お貴族様が夜襲なんて発想をしない。次に陣営を立て直す必要がある。最後に……どうせ今晩一晩会議だよ」


 へぇ。


 さて、今日のこちら側の被害はほぼほぼ皆無と言っていい。

 で、あちらさんの被害はイラードの報告によると


 死者 騎兵一、剣兵七。

 捕虜 正規剣兵六。


 ほぅ、捕虜はみんな正規兵か。

 さすがは傭兵ってことなんかね?


「軍議は?」


 カイジョーが訊ねてくる。


「んーん……なにか新しい戦法で来ると思う?」


 訊ね返すと、ニヤリと笑ってこう答える。


「いや、きっと明日もおんなじだ」


「じゃあ、こっちもおんなじだ」


「了解だ」


 豪快に笑って去っていく。

 そんなこんなで一夜明け、二日目も似たような戦闘で午前と午後を繰り返して終わる。


 本日の被害もほとんどなし。

 相手は騎兵に死者二名、剣兵に十五人。

 捕虜は正規剣兵五名、傭兵二名。

 戦死した騎兵に関しては回収していくのだけれど、その回収に剣兵が使われ、死者が増える。

 怪我は魔法である程度癒せるけれど、死者はさすがに蘇らせることはできないそうだ。

 今日は晩飯を囲んで軍議が開かれた。

 軍議に参加しているのは、僕と各部隊長(カイジョー、イラード、ギラン、ザイーダ、ガブリエル、ルダー)にオギン、サビーとラバナル。


「味方の損害はほとんどありません。いやぁ、あの柵は実に有効ですな」


 と、カイジョーが笑う。

 それをなぜか苦虫を噛むように見ているギランが小物っぽい。

 梶原景時かよ。


「敵軍の勢力は四分の一が失われています」


「四分の一! そりゃあ大戦果だ」


「とはいえ、いまだあちらの方が多いことに変わりありません」


「弓兵は丸々残っているし、騎兵も怖い」


「だな」


 一通り、現状の報告と感想が出揃ったあたりで、おもむろに口を開く。


「で、明日の作戦だ」


 と言うか、僕は明日の前を考えている。


「今日と同じでよかろう」


 カイジョーの案にギランが賛成する。

 今日と同じねぇ……。


「いや、さすがに敵もなにかしら考えてくるだろう」


 サビーの意見にはザイーダが同調した。


「お貴族様が?」


「ああ、お貴族様だからこそ、尻に火がついているだろ?」


「そうとも言えるか……」


 あっさりカイジョーが意見をひるがえしたのでギランが泡を食う。

 心の内は大体読めるぞ。

 今の所カイジョー隊とギラン隊は大活躍だ。

 このまま勲功を誇って反お館派の勢力拡大を図ろうってんだろ?

 でも、騎士三人を討ち取ったラバナルや、騎士回収の敵兵を散々打ち据えている弓兵だって大したもんだけどね。


「じゃあサビー、どんな手段を使ってくると思う?」


「え? そうですねぇ……」


 なんだよ、考えてないのか?

 よし、発言の機会を与えてやろう。


「ギランならどうする?」


「オレなら邪魔な柵を壊す」


「なるほど」


 いやいやルダー、そこ感心しない。

 当然じゃないか。


「具体的には、どうやって? 今日は試しだったかもしれないが、傭兵の何人かが体当たりを試みていたと聞いているぞ」


「む……」


 あー、黙っちゃった。


「イラードならどうする」


「ワタシなら……火を使いますかね」


「柵を焼くのか。それは確かに有効だ。季節がら乾燥しているし、一度火がつけば一気に燃えるんじゃないか?」


 いちいち感心しているけどルダーのこれ、十中八九わざとだな。

 きっとその先まで答えが出ているはずだ。

 前世持ちだからな。


「なら、水を用意しておこう。昼間なら水もそうそう凍ることはない」


 と、提案したのはカイジョーだった。

 それに水をさしたのはラバナルだ。


「敵にも魔法使いがいるのだろう? なら魔法で燃やしてくるのではないか?」


「なるほど、火の(ファイヤー)弾丸バレットですか。そうすると、弓兵の数をたのんで火矢を放ってくる可能性もありますね」


 火矢はたぶんこの世界でも古くからある戦術だと思う。

 だらこそ戦素人のイラードでも容易に答えにたどり着けたに違いない。


「とすれば、いよいよ不利になると言うことか?」


 ギランが呟く。

 もともと戦力差で倍ほども違っていた。

 そもそも圧倒的に不利な状況を戦略でもって五分、いやむしろ有利に戦況を進めていたわけだ。

 それが覆る。

 これは由々しき事態といえた。


「そこで提案だ」


 僕は満を持して発言する。


「こちらから夜襲をかけよう」


「夜襲をかけるったって、そりゃあ戦果は上がるでしょうけど、損害も無視できないですよ」


 サビーはキャラバン護衛時代の経験から損害を見積もっているんだろう。

 チッチッチ。


「そこまで大きくはならないよ、戦闘は仕掛けないからね」


「なにを狙っての夜襲なんだい?」


 ザイーダが訊いてきた。

 うん、相変わらず蓮っ葉だね。


「狙うのは兵じゃない。兵糧だよ」

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