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僕だってチートがあれば苦労なんてしていない  作者: 結城慎二
戦わなければ生き残れない!
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売ったのか? 買ったのか?

 忙しい夏が終わって実りの秋が訪れた。

 人数と地域を割り振って収穫に当たる。

 町の前面に広がる畑はドブルを責任者に村の男手を三割割く。

 背面の新規開拓地は、ルダーを責任者に男手を四割。

 雑木林の収穫物はまだ時期の早いものもあるので勝手の判っているヘレンを責任者とする女性陣総出の収穫班と、班の安全を確保しつつ狩りをするオギン、ザイーダ、ペギー、クレタの護衛班。

 残りの男手は北の森に狩猟に出かけている。

 僕?

 僕は狩猟班だよ。

 もっとも、猟に出かけて三日目にはキャラバンが帰ってきたんで、急遽カイジョーと僕は村で頭脳労働に変更だ。

 代わりにキャラバンの連中がヤッチシを残して狩猟班に送り出された。

 さて、戦略会議だ。

 メンバーは僕とジョー、カイジョー、ヤッチシの四人。

 まずは町の外の様子についての報告があった。

 それによると大きな武力衝突は起きていないそうだ。

 やはり動き出すとすれば収穫後ってことなんだろう。

 男爵領に関していえばずっと平穏で、領境を接している他勢力との関係もむしろ良好だという。

 なんだよ、そんな情勢で増税してんの?

 便乗?


「どさくさに紛れて私腹肥やしてるわけ?」


「みたいだな」


「腐れてんな」


 カイジョーの吐き捨てるような言葉に僕は大いに共感する。


「てことは、ズラカルト男爵は特に軍備の増強とかしてないの?」


「ああ、まったくしてない」


「家臣団は?」


「家臣団?」


「そう、男爵が軍備に金かけてなくても家臣がそれぞれに有事対策してたら、結果として男爵軍の強化につながるじゃない」


「それもそうか。ヤッチシ、どうなんだ?」


「へい、軍務に就いている役人で個人的に金をかけているものはございやせん。いわんや部下に金をかけているものなどいようはすが……あ、お一方。オルバック家の家人で」


「ルビレル」


「へい。お館様、よくご存知で」


「ジュニアの付き添いでこの街にきたんで覚えてるんだ。そうか、やっぱり優秀な軍人だったか」


「オルバックの人間なのか?」


 ジョーが訊ねてくる。


「心配かい?」


「ああ、優秀な奴が一人でもいるとやっぱり脅威だからな」


 だよねー、だよねー、言うっきゃないよねー、こんな時ならさ。


「確かに厄介だな」


 カイジョーも腕を組んで渋い顔をする。


 ズラカルト男爵にとってみれば陪臣だから、事が男爵対僕になれば、些事で片付く。

 でも、規模が町対オルバック家となれば、ルビレルの発言権は侮れなくなる。


「オルバック家での立場はどんな感じか判ってる?」


「へい、現当主の右腕とも言われるお方ですが、若様とはあまり良い関係ではないようです」


 それは朗報。


「ご当主が出てくる前に攻略したいな」


「攻略ですか?」


 おっと、ゲーム用語か?


「最善は味方に引き入れる事。次善がオルバック家からの切り離し、最悪でもこの町に出陣させない方策を考えなきゃ」


「ほぅ、なかなか面白いことを考える。戦の準備とはこちらの武力を相手より強くすることだと考えていたが、相手を弱くする、か」


 ええ!?

 こんなの地球じゃ紀元前からの戦略だよ。

 なにぬるいこと言ってんの?

 ……ああ、カイジョーは今まで傭兵として戦術を考えてればよかったのかもな。

 となれば、大局的戦略を考えられる人材を集めるのも大事な生存戦略になってくるぞ。


「ところで、妙案はあるのかい?」


 そうそう、今はルビレル対策だ。


「現当主の信頼は篤いようだけど、ジュニアには疎まれてるんだろう? それを利用しない手はないよ」


「面白そうですな。あっしにやらせてもらえませんか?」


 面白そうときたか。

 いわゆる忍び働きって奴だけど、名前通りに適性があるんだろうね、きっと。


「じゃあ、頼むよ。ヤッチシ」


「へい」


 とまぁ、急ピッチで秋の収穫とその後にやってくる徴税の使者対策を行い、町は嵐の前の静けさをたたえ……られるわけもなく、僕のところに陳情がくる。


「なぜ、表の畑にフレイラを蒔かないんだ!?」


 と。

 そりゃあね、僕も蒔きたいよ。

 秋蒔きフレイラ。

 だけどさ、男爵の使者くるっしょ。

 使者の後には、軍がくるっしょや。

 せっかくタネを蒔いた畑踏み荒らされたらやるせないべや。

 てなことを懇切丁寧に説明責任を果たして説得したわけよ。

 だいたいの人は判ってくれたんだけど、例によって一部反お館派勢力が納得いかないってゴネるんだから困っちゃう。

 どうにかなんないもんかねぇ……。


「だから粛清してしまえばいいのですよ。町の人口もキャラバンを数えなくとも百二十人になったのですから」


 と、しれっとオギンが言う。

 そうしちゃう?

 いやいや、ダメだって。

 なんて悶々としていたある日、お待ちかねの徴税使節団がやってきた。

 待ってたわけじゃないけどね。

 使者が門の前に立つ。

 相手はここをいまだに村だと思っているはずだ。

 村のくせに高い塀で囲い、門を閉じている。

 生意気な。

 とか、絶対思っているに違いない。

 使節団の代表は思った通りオルバックJr(ジュニア)

 物見櫓から確認した限り、人夫を含めて総勢五十人ほど。

 その中にルビレルはいないようだ。

 ヤッチシ、グッジョブ!


「徴税に来た。門を開けよ!」


 雑か!

 もっとなんか言い方ねぇのかよ!

 こいつ、道々ずっとこんな調子で徴税してきたのか?

 そう言う態度ならこっちも売られた喧嘩として買ってやろうじゃないの。


「お帰り願おう。男爵殿に納めるものなど、()()()にはなにもない!」


「なっ!?」

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