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僕だってチートがあれば苦労なんてしていない  作者: 結城慎二
戦わなければ生き残れない!
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新しい悩みのタネふたつ……やれやれだぜ

 例年、育つのを待つだけの夏から収穫までというのはそんなに忙しくない。

 ……はずなんだけど、この町はもうずっと忙しい。

 農作物の育成を見守り、新たな開墾を進め、収穫後に来る男爵との対決のための軍事調練とやることが多いからだ。

 人口規模が百人を超え、みんなで作業を手分けできるようになったので、ここを乗り切れば楽になる……なんて楽観視していたのは会議まで。

 僕は、ここだけじゃ忙しさが緩和されることはないんじゃないかと思い始めていた。


「オギン」


 暑さも和らいできた晩夏、僕はオギンに隣村まで行ってもらうことにした。


「なにを見てくればよいのでしょうか?」


「畑の広さ、村の様子、周辺の地形あたりかな?」


「ご自分で視察なさるというのはいかがですか?」


 ……そいつぁ気がつかなかった。

 僕は転生してから一度も村を出たことがない。

 おぉ!

 いいじゃん、いいじゃん!

 それ最高!!


「じゃあ、明日朝一で出発だ」


「明日はラバナルに会いに行く日ですが」


「そうか。じゃあ明後日だ。イラードに連絡しといて」


「イラードを連れて行くんですか?」


「いや、町をイラードに任せんの」


「供は?」


「え? オギンだろ?」


「…………」


「なにか、問題でも?」


「……いえ、お館様の仰せのままに」


「道程三日って言ったっけ?」


「歩いて行けばそれくらいですね」


「じゃあホルスに乗って行こう。今時期なら畑仕事には使っていないし」


 ということになって、翌日ラバナルを訪ねて隣村に行く件を話す。


「──で、今後そういうことも増えると思うんで、十日に一度に変更してもらえませんか?」


「む? ふむ……お主が村にこもっておっては見聞も広がらん。よかろう」


「ありがとうございます」


「いやいや、ワシもお主との話で新しい魔法の思案に時間を使いたくなっておった頃合いじゃ。等価交換じゃよ」


 使い方間違ってますよ。


「ところで、領主との戦はどうなっておる」


「収穫が終わるまでは誰も来ませんよ」


「そうか……残念じゃのぅ。はよう実戦で試したいものがいくつかあるのじゃが……」


 物騒だな、おい。


「近くなったらこちらからお願いに上がりますから。新しい魔法の完成、楽しみにしていますよ」


「うむ、そうじゃ! 今日は一つ見てもらいたい魔法がある」


 ほぅ、それは面白そうだ。


「どんな魔法ですか?」


「『鉄の(スチール)弾丸バレット』じゃ。お主がくれた鉄の玉で試行錯誤していての」


 と、早速玉を乗せた左手に「印」を結ぶ。


「それ!」


 と飛ばすと、玉はこちらも町から提供した鉄の板の的に命中する。

 距離は百カルほどだろうか。


「これ、この通りめり込むだけなんじゃよ。もっとこう……威力を上げられんものかの?」


 なるほど。


「どれくらいの距離なら貫通できますか?」


「五十シャルというところかの。これでは『石の弾丸』と変わらん」


「オギン」


「はい」


「この威力はどうなんだ?」


「はい、概ね想定通りの威力です」


「なに? この程度なのか?」


「はい、現代の戦において『鉄の弾丸』は主将の警護にあって最接近を許した際の一撃必殺手段ですから」


「つまらんの」


 僕もそう思う。

 というより、魔法使いが接近戦なんてしちゃダメだろうよ。

 だからちょっと地球知識を持ち出すことにした。


「射出速度を上げることはできますか?」


「速度?」


 前世知識は地球の単位を前提にしているのでこっちの世界に丸々持ってくるのは難しい。

 特に速度計算に必須な時間の単位が変換不能だ。

 こっちで使われているのは一年=十三ヶ月、一ヶ月=二十五日、一日=二十時間までだ。

 時間に関していえば正確な時を刻む装置がないんでおおよそだ。

 この世界は地球でいう春分が新年で、新年の正中から翌日の正中までを二十で区切っているだけ。

 人の手指が十本あることから、昼を十時間、夜を十時間で数えているわけだ。

 さて、以上のことから数字で語るのは難しい。

 そこで僕は落ちている大きめの小石を二つ拾い上げ、一つを軽く投げてみるとコツンと壁にぶつかる。

 そしてもう一つを野球選手よろしくビュンと投げる。

 カツンと鋭い音がした。


「ふむふむ、気づかなんだ。矢ほどの速さがあれば十分と思っておったが、確かに矢も弓の引き手によって威力が違うことがあったやもしれん。そうか……ぐふふ。速さの……どれほど速めればよいと思う?」


 魔法の弾丸は、サイズにもよるけど、なんとか視認できる速さだった。

 単純に前世の弓同等の速さだとして初速が三十から四十メートル毎秒。

 戦国時代の火縄銃は初速四八〇メートル毎秒って、どっかで見たぞ。


 …………。


 いや、こいつにそんなスピード教えたら手が付けられない。


「倍くらいあれば……」


「よし、三倍速で研究してみよう」


 …………。


 教えてしまった以上、いずれ銃レベルになるな。

 こいつの対策も必要だ。

 やれやれだぜ。


 そして翌日、僕らは隣村に出発した。

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