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僕だってチートがあれば苦労なんてしていない  作者: 結城慎二
戦わなければ生き残れない!
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問題は一つ解決すると二つ増える

 結局一晩布団の上でウンウン唸って考えましたよ。

 翌日、午前の仕事が一段落する昼に集会を開く。

 話したのは、主がダークナルフの魔法使いだったと言うこと。

 残念ながら三人は亡くなっていたこと。

 謝罪のかわりに(と嘘をついて)村の防衛に協力してくれること。

 引き続き森は主の領域なので立ち入り禁止であること。

 だ。

 もちろん、町人それぞれ思うところがあるだろう。

 当然、遺族は納得いってない。

 しかし、そもそも森は過去五百年もの長きにわたり主の領域であり、村の生き残りとして何度も何度も、それこそ最近は毎日のように「侵すべからず」と通達し、口を酸っぱくしていってきたのに守らなかったことは棚にあげるべきじゃない。

 人数が多くなれば、ルールを守らない……いや、積極的に破るやつも出てくるのは覚悟していた。

 けれど、大目に見られることと絶対に許されないことは明確に存在してるんだ。

 それをわきまえてくれと言うことをこの際強く強く、はっきりと言わせてもらった。

 亡くなった三人が、僕に対して快く思っていない男たちだったのは知っている。

 だからと言って殺されてザマァみろだなんて思っているわけないだろ。

 小さな町で頻繁に顔を合わせていた仲間だぞ。

 あたら若い命が、ほんの出来心で命を散らすなんてもったいないじゃないか。


「なかなか熱の入った演説でしたね」


 モヤモヤしてたので、気分転換に放牧地で家畜の世話をしていたら、声をかけられた。

 えーと……誰だっけ?


「ありがとう」


「オレ、この町に来た時いきなりギランって人に目ぇつけられてたんですけどね」


 右も左も分からない転入者に対するキャッチやってんのか、反お館派(あいつら)は。


「演説聞いてたらお館様ってそんなに悪い人じゃないと思えるようになってきました」


 ……ありがとうっ!

 ──てか、やっぱ所詮学のない田舎もんじゃ程度が知れているってことだな。

 村内の政治なら単純な腕力を背景にした発言力とかでどうとでもなったかも知れないけど、町の規模になったらそれ相応の政治が必要だってことだ。

 ふむ、これは反お館派対策のヒントになりそうだ。

 僕は、その男に愛想よくお礼をする。


「どうですか? ホルスに乗ってみません?」


「え?」


「ここのホルスは農耕に使われてますけど、元々は荷車引いたり人を乗せてたっぽいんですよ」


 あー……うん。

 知ってたけど……。


「よく判ったねぇ」


「オレ、元々はあるお貴族様の馬丁だったんですよ」


「そうなの?」


「戦でお貴族様が負けまして、相手のお貴族様ってのがえらく暴力的なお方だったんですよ。で、一族郎党皆殺しになるところを馬丁頭のスーモ爺に逃がしてもらって……」


 と、だんだんしんみりグスグス言い出す。


「大変だったんだなぁ」


「もう、大丈夫です。いい町に住まわしてもらってますから」


 そういってもらえると嬉しいよ。


「で、どうです? 乗ってみませんか? ホルス」


「うん、乗ってみよう。ところで君の名前は?」


「チローです。チロー・トーキ」


 …………。

 ちょっと、警戒しとかないとって思っちゃう名前だな。

 歴史オタとして……。


 ひと汗かいたあと、日が暮れる前に館に戻った僕は、風呂を焚いて湯船につかる。


「お館様お戻りですか?」


 と声をかけてきたのはクレタだった。


「今風呂」


 と、声をかけると、風呂場に回ってくる。

 いや、おまっ……ちょっと!?


「あ、お館様」


 僕は口まで湯船に沈めてアソコを隠す。

 お前、今年十三歳だろ!

 女の子だろ!

 僕、今素っ裸で風呂入ってるよね?

 ちょっとはそこら辺考えろよ。


「相談なんですけどぉ」


「……それ、今じゃなきゃダメ? 風呂上がってからじゃダメ?」


「あー、じゃあ、待ってます」


 ほっ。


 …………。


「なにか?」


「『なにか?』じゃないよ。ここで待ってたってダメでしょ」


 頭の上に「?」並べんじゃないよ。


「……上がるまで囲炉裏の間で待ってなさい」


「はーい……」


 なんでそこ、しぶしぶなん?

 クレタが風呂場から遠ざかったのを確認して、僕はあたふたと湯から上がって体を拭き、なんちゃって浴衣をはおって囲炉裏の間へ向かった。


「で? 相談ってなに?」


「回覧板の件なんですけど……」


 去年あたりから僕は重要事項など通達を回覧板で行なっていた。

 識字率の向上は、ただ覚えるんじゃダメで、必要だと思ってもらうためと、向こう三軒両隣、交流を図る目的で始めた。

 始めたんだけど、反お館派がちっとも字を覚えてくれないのと、流入人口の増加で識字率は低止まり。

 読めない人のためにクレタとカルホに一軒ずつ回ってもらっているため、ちっともご近所さんの交流促進に役立っていない。

 その回覧板制度が、うまくいっていないってことだった。

 うん、今、クレタには主に子供相手の読み書きの先生をお願いしているんだけど、回覧板回しているとそっちが全然できない状態なのね。

 あ・ちなみに紙はまだ生産できていなくて皮紙も貴重品ということで、現在回覧板は本当に木の板に直接必要事項を書いている。

 回覧板作るのも結構大変なんだけどなぁ。


「判った。回覧板より読み書きの方が重要だから、いい方法を考えてみるよ」


 とりあえず約束すると、クレタはにこやかにお礼を言って、帰っていった。


「よろしくお願いしまー」


 ──って。

 ……語尾を伸ばしちゃいけません。

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