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僕だってチートがあれば苦労なんてしていない  作者: 結城慎二
村長(ぼく)が好きなこの村も、村人(みんな)が好きとは限らない。
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知りたくなかった…

 なんじゃと言われても鎧は鎧よね。

 どう答えていいものやらと迷っている間にもう一度問いかけが来る。

 今度は見るからに怪しい人物とともに。


「その鎧はなんじゃと聞いておる! はよう答えい!」


 いや、いかにも魔法使い然としたこすけたローブ姿でフードを深々と被ってるとか、怪しすぎて返答に困るんだってば。

 あ、「こすける」は北海道弁だっけ?

 とはいえ、なにも答えないというのも問題だな。

 まずはコンタクトを取らなきゃ始まらない。


「革の鎧ですが……」


「革の鎧で石の弾丸(ストーンバレット)を防げるわけがなかろう!」


 知らんよ、そんなこと。

 てか、ストーンバレットってなんぞ?

 こっちが聞きたい。


「胸に鉄のプレートがあるからじゃないですか?」


「鉄? 鉄がそんなに硬いわけなかろう! 青銅をも砕くワシの石の弾丸を受け止めたその鎧はなんじゃ!?」


 話が通じない……いや待て、青銅?


「青銅?」


 試しに問うてみた。


「そうじゃ、青銅じゃ。人の加工できる最も硬い金属じゃ。知らんとは言わせんぞ」


 歴史オタクが青銅を知らないわけないんだけどさ……古代人出てきちゃったよ。

 さて、どうコミュニケーションをとったもんやら……。


「きちんと説明するといえば、冷静に話を聞いてくれますか?」


「む!?」


「僕と交渉してくれますか?」


 ローブのおじさん(たぶん)は「むむむ」と唸ってしばらく考え込んだ後、大きな声でこういった。


「よかろう! 人との交渉は五百年ぶりじゃ!」


 …………。


 とにもかくにも、交渉が始まった。

 僕は護衛と世界情勢の補足のためにオギンを残し、捜索隊を返す。

 ギランたちがちょっと反対したけど、一対多数で交渉とか冷静に考えてダメでしょうが。

 僕らはローブのおじさんの住処に案内されることになった。

 道々も大事な交渉の機会だ。

 まずは自己紹介から。

 基本だね。


「ワシはナルフのラバナル。もっとも、戒律を無視したナルフは精霊の加護を失って異端ダークナルフと呼ばれるがな」


 フードをとったラバナルは口調と違ってぱっと見三十代と若々しい。

 ナルフは総じて整った顔立ちをしていて色白で華奢、と文献には書いてあったけど、ラバナルは色浅黒くハンサムと言えるほどじゃない。

 ナルフ最大の特徴であるミスタスポックみたいなとがった耳がなきゃ、人族で通りそうだ。

 やっぱあれかな?

 ()()挨拶なのかな?


「ナルフは精霊の子であると自分たちを呼んでおる。実際、精霊の加護を受けておるのであながちウソともいえん」


「どんな加護があるんですか?」


「魅了の加護じゃ。七難隠すと言われる美白とかじゃの」


 ナンテコッタ。

 ナルフの美の正体を知っちまった!

 案内されたのは樹齢千年とかじゃないかと思われる大樹である。

 うろに扉がつけられていて、中に入ると思ってもみないほど整頓されたリビングルームが広がっていた。

 ラバナルは半ば僕たちを無視するように階段を上がっていく。

 二階は書斎っていうのかな?

 乱雑に本なんかが広げられている。

 三階は寝室か?

 そこからは外に出て屋上?

 いや、ツリーハウスになってるな。

 調理器具的なものがあるからキッチンスペースってことか。

 ここで煮炊きをするんだな。

 ラバナルは無造作に水瓶からひとすくい鍋に水を汲むと、コンロ的なところに指で魔方陣的なものを書いて鍋を乗せる。

 鍋の下に火がつき、お湯が沸く。

 ……便利だなぁ。

 カップにお湯を入れ、なにやら葉っぱを入れると僕らの前に出してくれた。


「毒は入っとらん」


 その言葉、信用するよ?


「あ!」


「なんじゃ?」


 これ、ハーブティーじゃん。

 美味うまっ!


「美味しいです」


「お主、人族のくせに味覚が肥えとるの。前に振る舞ったやつは『葉っぱくさい』などといっておったぞ」


「残念なやつですね」


 ラバナルはガハハと笑って


「気に入ったわい」


 と、肩を叩いてくる。


「さて、その鎧じゃ」


 駆け引きもなにもあったもんじゃないな。


「その前に」


「なんじゃ?」


「こちらが一方的に情報を提供するのは……」


「判っとる、判っとる。等価交換じゃ」


 話は早いが、こっちのペースにならんなぁ……ったく、やりにくいったらありゃしない。


「価値基準は?」


「ワシじゃ。文句あるか?」


 ……まぁ、いいか。

 でも、こっちの条件も多少良くしとかなきゃ割りに合わんよ。

 まずは、五百年ぶりの人族との交渉だって言っていた。

 で、相手の文化水準が青銅器時代止まり……てことは鉄器時代に入ってから五百年くらいしか経っていないってことか?

 地球の考古学的には紀元前千年頃には鉄器時代に入ってるから、中世と呼ばれる時代まで千五百年はあるんだけどなぁ……。

 あれかな?

 日本みたいに他文明からもらってきた?

 ……ダメだダメだ、オタク的好奇心はとりあえず置いといて話し合いを有利に、最悪イーブンの交渉ができるように全力を尽くそう。


「ではまず、互いの現在の状況を確認するところからお願いできますか?」


 前提知識のすり合わせ。

 これなら百%等価交換だろ。


「よかろう」


 よしっ!

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