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僕だってチートがあれば苦労なんてしていない  作者: 結城慎二
村長(ぼく)が好きなこの村も、村人(みんな)が好きとは限らない。
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坊やだからさ

 発展したとはいえ戸数は五十に満たない。

 お隣さんとは二、三十シャルは離れている。

 僕は慎重を期して、お隣さんの一軒に隠れるようにギランの家の様子を見張ることにする。


(じゃあ、頼むよ)


(任せて!)


 リリムがギランの家に飛んでいく。

 見える範囲にいればリリムが聴いた音を聞けるって言ってたけど、暗闇でリリムが見えない状況だとどうなるんだろう?

 多少の心配をしながら暗闇の中、リリムを凝視する。

 ただでさえ小さいんだからよっぽど集中しなきゃ見失う……かと思いきや、あ〜らびっくり、光って見えるじゃあーりませんか。

 これが関係性つながりってやつかと感心していると、リリムが家にだどりついたようで、中の様子が聞こえきた。

 どうやら扇動演説し(アジっ)てるようだ。


「……領地を追われたり、才能を買われてこの村に移民させられた」


 誰々がいるんだろう?


「そのことは別に構わない。それ自体は自分たちで決断したことなのだから。だが、この村でも一握りの人間が横暴にも権力を振るっている!」


 それって、僕のこと?


「今年になってから来たものは日も浅いので判らないだろうが、この村だってよその村と変わりない。我々の要求など踏みにじられて顧みられることもない」


 それは言い過ぎだろう。


「それが証拠にここにいるドブルの弟ガルムたち三人が、主の森とやらに迷い込んだと言うのに奴らは捜索さえしようとしない。見殺しだ。何故だ!」


 それは君たちが短慮《坊や》だからさ。


 …………。


 いけね、ついな。

 ダメだね、ファースト世代は(前世だけど)。


「本来なら奴らは誠実にこの局面を打開しなければいけないと言うのに『主』怖さに村人を見捨てるなどと言う言語道断の決断をした。我々はこの悲しみを怒りに変え、村を悪逆非道な村長一味から奪わなければいけない!」


 ──っと、声が聞き取りにくくなってきたぞ。


(リリム)


(なに?)


(聞き取りにくくなってきた。僕は見つからないうちに帰るから集まっている人間を数えて、なにを話し合っているかあとで報告してくれ)


(はいはい)


 リリムの二つ返事も聞き取りにくくなったので、ここらが潮時だろう。

 僕は闇夜に紛れて自分の館へコソコソと戻る。


「おかえりなさいませ、お館様」


 お、おぅ……なんかむずがゆい出迎えの挨拶だな。

 僕はオギンに飲み物を頼んで囲炉裏のある部屋に上がりこむ。


「なにかございましたか?」


 手渡されたカップが冷えている。

 やるな、オギン。


「ギランたちがどうもクーデターを計画しているみたいなんだ」


「それは大変ですね」


 大変なことだと思ってないだろ、その口調。

 まぁ、僕も反乱は織り込み済みだけどね。

 でも、秋には男爵と事を構える気満々で、主の怒りを買ったこのタイミングでさらに反乱が起きるのは正直困るなんてもんじゃない。

 こう言っちゃうのは傲慢と取られるだろうけど、所詮小規模な農民の反乱だ。

 反乱自体はおそらく苦もなく鎮圧できると思う。

 問題は、そのあと村をまとめて秋を迎えられるかと言うことだ。

 一致団結できなきゃとてもじゃないけど男爵の正規軍とは戦えない。

 参ったな……キャラバンが残っていれば頼もしいんだけど、ギラン派もそこまでアンポンタンじゃないだろう。

 まず間違いなく、いないときを見計らってことを起こすはずだ。

 僕ならそうする。

 それにしたって、ジョーはギランをどう言う意図で持って村にスカウトしたんだろう?


「どうするつもりですか?」


「ん?」


「反乱です。速やかに粛清しますか?」


 ……怖いこと言うね。


「粛清はよくないな。恐怖政治は町人が萎縮するし、進んで協力してくれなくなる。なにより不満が募って反乱が連鎖しかねない」


 とはいえ、反乱するに任せるなんて無策も統治能力を疑われるし、今後の僕の計画に町人を巻き込む際の障害になる。


「……さて、どうしたものかなぁ……」


「いっそのことその主とやらを倒してしまうと言うのはどうですか?」


 …………はっ!?


「いやいや、相手は主だよ?」


「しかし、帰ってきたものがいないわけでもないのですよね?」


「五体満足で帰ってきた人はいないんだよ?」


「でも、村人ですよね?」


 …………確かに。


「仮に倒せなかったとしても、主の正体が判れば今後の対応も適切にできるのではありませんか?」


 一理ある。


「でも、町の主戦力に死なれちゃ今後の計画が……いや、反乱が起きてもダメージはでかいわけで……。んーん…………」


「新しく町に来た五人は請負で怪物退治などもしていたそうじゃありませんか」


 そういえば、そんなこと言ってた言ってた。

 ある種の傭兵ってところだな。

 オルグの襲撃から村を守った話を数日前にカイジョーに聞いたわ。

 そんな実力者たちなら、いくらでも金儲けできそうだけどね。

 今のご時世なら。

 でもそうだな、ただ怖がっているだけじゃなにも解決しないか……よし、こっちも肚をくくろうじゃないか。

 問題は人選だな。

 カシオペアの五人には来てもらうとして、他はどうしようか?

 反お館派には全員出張ってもらおう!

 ヌフフ……なんか楽しくなってきた。

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