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僕だってチートがあれば苦労なんてしていない  作者: 結城慎二
村長(ぼく)が好きなこの村も、村人(みんな)が好きとは限らない。
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三つの時代と森の主

 盛夏、キャラバンがまたひと組の父子家庭の家族を連れて村に戻ってきた。


「そこで一緒になってな」


 とジョーは言っていたが、多分表向きの話だ。

 だってどうみても「できるっ!」って家族なんだもん。

 親父はいかにも歴戦の戦士だし、三人の息子も畑仕事の体つきじゃない。

 唯一の娘だって平凡に暮らしてきたらできっこない鋭い目つきで周囲をうかがっている。

 そもそもみんな似ていない。


「いやいや、その設定はさすがに無理があるだろ」


 と言うツッコミにニタニタと笑うだけなのが腹がたつ。


「年の順にカイジョー、シメイ、オオダイ、ペギー、アーシカだ」


 へー……頭文字がカシオペアかぁ(棒)


「聞いたぞ。ついに男爵に目をつけられたんだって」


「そうなんだ、参ったよ。オルバック様のお世継ぎ様、とか言うのがやってきたと思ったら『村が復興したなら税を払え。納税額は特別に前回並みにしといてやる。ありがたく思え』だってさ」


「あー……そりゃまた残念な奴が当たったな」


「まぁ、残念な奴のおかげで村の中に踏み込まれなかったから『物怪もっけの幸い』だったんだけど」


「年寄り臭い言い回しだな、前世はいくつまで生きてたんだよ」


「四十の半ばだよ。ばあちゃん子だったんで言葉や趣味が多少、年寄り臭いのかもしれないけどさ。そっちは?」


「天寿まっとう、七十二歳の大往生だ。明治大正昭和と生きてきたし、前世に思い残すことはない」


 え? 明治大正!?


「え? ジョーって僕のばあちゃん世代なの?」


「なに!? そんなに世代が違うのか?」


「僕は団塊ジュニア世代。ルダーは戦中派だって」


「団塊ジュニア……それが四十半ばってことは未来人だな。まぁいいや前世の話はルダーも呼んで今度じっくり思い出話をするとして、男爵と事を構えるんなら必要だと思ってな。本物の戦士を連れてきてやったわけだ」


 前世でなにをしてきた人かは知らないけれど、このあたりの用意周到さは壮年期に太平洋戦争を経験した凄みとでも言うんかね?

 そりゃあ情報と物資の重要性をよう知ってるはずだわ。

 頭でっかちな僕とは根っこが違う。


「それにしたって賑わってるなぁ。もうちょっとした町だな」


 うん、今日の五人を入れて人口九十人に届くよ。

 野盗討伐戦後、村の町化計画を策定した際に人口規模百二十人と提示した。

 目標まであと三十人だ。

 当初計画では二ケ年かけて到達する計画だったのに秋までには達成しそうな勢いである。

 急速な発展はいくつかの問題を発生していて、とても頭を悩ませている。

 シ○シティ並みに次から次へとよく問題が発生するよ。

 まず、住宅問題。

 当初、簡易宿泊所で家ができるまで生活してもらうという予定だった。

 貨幣経済が割とすんなり受け入れられたのをみて、一軒家以外に長屋も作る計画に変更した。

 賃貸住宅を作ることで建設費と施工日数を減らすことに成功してはいるんだけど、なにせ人口流入が想定以上なので建設が追いつかず、バラック生活・キャンプ生活の人も出ている始末。

 バラックに居ついてスラム化されると問題なんで早急に解決したいんだけど、リソース全部ぶっこむわけにもいかずにいる。

 同じく人口増加に起因する食料問題。

 現在は配給制だけど、本来男爵との戦のために備蓄に回すべき分を吐き出して対応しなくちゃいけない状況だ。

 北に拡げている耕作地は、種蒔きできたのが従来の畑の五分の一程度。

 百五十人規模にでもなったら配給を絞らなきゃならない事態になりかねない。

 せっかく貨幣経済が回り始めたのに村内主力産業である外食産業がポシャっちゃう。


 新参者が増えるとよく起こる習慣や物の考え方の違いによる軋轢あつれきもなかなか無視できない。

 こう言っちゃなんだけど、「村人」は「村人」なのよね。

 前世の都会人みたいに適度に隣人を無視するってのがなかなかできない。

 ついついお節介を焼いたり、気に入らないことに口出しするとかでいらないいざこざが起きる。

 そのたんびに僕が仲裁するんだけど、必ずしも双方納得ずくって裁可が下せるわけもなく、不満がたまって矛先が僕のところへ向くことが避けられない。

 着の身着のままで逃げ込んでくる人たちもいるんで、物資不足も心配だ。

 これから男爵相手に一丁事を構えるって言う準備に結構資源をいてたりするんで、なおさらだ。

 村の自給自足の根幹である畑仕事もしなきゃいけないし、外貨獲得のための特産品生産もやめるわけにいかない。

 本格的な戦闘で男爵軍と渡り合うための訓練も生き残り戦略には欠かせない。


 そして、最大の問題が「主」の存在だった。

 新しくきた人たちには、雑木林の奥の森が「主」のテリトリーであるってことをいの一番に話して聞かせている。

 僕自身で。

 元々の村の唯一の生き残りである僕が、実体験も交えて口を酸っぱくして注意しているのに、不用意にテリトリーに入ろうとする奴が後をたたない。

 主に十代の思慮の足りない奴らが度胸試しかなんかのつもりで「主」のテリトリーを侵そうとする。

 サビーたちに雑木林の巡回警備をしてもらっているから事故は起きてないけど、困るんだよ。

 本当に。

 やばいんだよ。

 とにかく。

 見つけるたびに緊急集会を開いて「主」とテリトリーについて話してるのにさ。

 いい加減頭にきたんで


 「次にテリトリーを侵そうとする奴は無視してくれ」


 とサビーに頼んだのが、キャラバンが来てカシオペア戦隊の五人が加わった翌日。

 事件はその十日後に起きた。

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