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僕だってチートがあれば苦労なんてしていない  作者: 結城慎二
仮免村長、本当の村長になる
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お館様はネゴシエーター

 まずは飴の方で行ってみることにしよう。


「申し遅れたかな? 僕はこの村の村長をしている」


 まだカッコ仮……だけどね。


「村……長?」


 惚けた顔で男は繰り返す。


「意外だろうね」


 あ、こいつあっさり頷きやがった。


「噂で聞いているだろうけど、この村は二年前に野盗に襲われて一度壊滅しているんだ。僕は唯一の生き残りとして暫定的に村長をやっている」


 そこ! 「なるほど」なんて納得するんじゃない!

 僕が顔を引きつらせたのをどう解釈したのか、男が蒼ざめた顔で見上げてくる。

 いけね、話の振り方間違えたか?


「あー……でも、そんなことはどうでもいいんだ。今はこの町でひっそりと暮らしていられれば」


 たぶん無理だけど。

 リリムが吹き出す。

 チッ、また独白(モノローグ)を読みやがった。


「そこでだ、君にこの村でひっそり生きるための情報提供をしてもらいたい」


「ジョウホウテイキョウ?」


 これはどういう意味でのおうむ返しなんだ?


「君の知っていることを教えてくれればそれでいい」


「見返りはあるのか?」


 いや、君は本来そういう立場じゃないって自覚ないの?


「情報次第だ」


「…………」


 …………。


「……なにが知りたい?」


 ホッ。

 第一段階の交渉はクリアした。

 僕は彼の縄をほどき、リビングへ案内する。

 おっと、ひと鞭くれてやるのを忘れちゃダメだな。


「逃げ出すつもりなら死ぬ覚悟をしてくれよ。危害を加えるような人間に情けをかける気はないからね」


 はい、ぶるっちゃいましたね。

 ま・実際、彼以外はみんな死んでるし、説得力あるべ。

 イスに腰掛けると、ジャスが温めたスープをよそってそれぞれの前に置く。


「まずは食事といこう」


 と、僕がいうと


「うまいぞ」


 と、ジャスがいう。

 いいフォローだ。

 男は一口すすると、あとは長いことお預けくらっていた犬のように無心にスープを飲む。

 ……汚ったないなぁ。


「──さて、こちらの質問に答えてもらおうか」


「なにが知りたい?」


 おっと? 随分元気になったなぁ。


「まずは……」


 話をまとめると、昨日襲ってきた野盗グループは他のグループとの交流があるわけでもなく、外にメンバーが残っていることもないそうだ。

 よしよし、この辺りには他の野盗グループもいないようだし、これなら今日の宴だけじゃなくしばらくビクつかなくても過ごせそうだ。

 あとは適当に世間話で少しの間談笑する。

 彼らの縄張り近辺の状況や、いくつかの野盗団の情報、野盗ならではの領主や領内の情報などが手に入った。

 野盗団の情報はありがたやありがたやってもんだ。


「──さて」


 と、僕はクロージンクトークに入る。


「貴重な話が聞けたよ、ありがとう」


 すっかり打ち解けた気になっていた男は「なんのなんの」と横柄に手をふる。


「君の処遇は改めて明日決定するつもりだけれど、今日のところはこのまま部屋に戻ってもらうことにしよう」


 なんというか、ジャスは阿吽の呼吸でも心得ているかのようになにも言わないうちに男に縄をかけ出す。


「ちょっ、ちょっとこれは?」


「君が囚われの身であることに変わりはないんだよ?」


 そう金魚みたいに言葉もなく口をパクパクされても対応は変わらないよ?

 ま、対応は最初から決まっているんだけど今日はこれから村をあげての大宴会だからね、不測の事態は困るんだ。

 ジャスが部屋に男を押し込むのを確認して僕は家を出る。


「終わったのかい?」


 外では律儀に見張りについていたルダーが声をかけてきた。


「終わった終わった。今後の村の計画になかなか有意義な情報があったよ」


「そりゃあよかった」


 遅れて鍋を抱えたジャスが出てくる。


「見張りの当番はいつまでなんだい?」


「日暮れまで」


 とルダーに鍋を返しつつ答える。


「じゃあ、宴で待ってるよ」


 僕はそう言い残してルダーとその場を離れた。

 向かったのは正面門。

 二棟の櫓にはサビーとオギンがいる。


「お館様」


 僕らを見つけたオギンがスクワラーのようにするすると降りてくる。


「見張りは通常体制に戻すよ」


「襲撃の危険はない……と?」


「そ。あいつの情報だ。信憑性は僕が保証する。二人とも宴まで休んでいいよ、ご苦労様」


 そう告げて、今度はルダーの家へ。

 家の前ではアニーがカルホと遊んでいた。

 年の近い友達がいるのはいいことだよ。

 多すぎるとそれはそれでややこしいことになるんだけどね。

 あ、これは前世の経験だわ。

 二人に軽く挨拶をして家に入ると、ヘレンは宴の準備で大鍋に食材を放り込んでいた。

 僕は彼女にスープのお礼ともうしばらくルダーを借りるむねを報告する。

 彼女は穏やかに笑って許してくれた。

 よくできた奥さんだ。

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