表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕だってチートがあれば苦労なんてしていない  作者: 結城慎二
仮免村長、本当の村長になる
49/442

秋だけど春なんです

 階下から漂ってくるおいしそうな香りに起こされた。

 体は少し重い。


あいの後はこんな感じになるとこが多かったな)


 などと妙に懐かしく思いながら下に降りる。


「よう、やっと起きてきたな」


 と出迎えてくれたのはルダーだった。

 むーん……微妙に嬉しくないな。


(やっぱり女性に起こされたい)


 などと思いつつも、なんでまたルダーがぼくの《ん》にいるのか疑問に思っていると。


「ヘレンにな」


 と、まるで僕の心が読めるかのように説明してくれる。


「ヘレンがな、ずっと気を張ってたやつは肩の荷が下りると体調を崩すことが多いから、あったかくてうまいもんを食べさせてやれって持たせてくれたんだ」


 なるほど。

 おじいさん商隊長さんが亡くなったのもそんな感じだった。


「滋養にもいいぞ。デーコンポモイトスープだ。肉はラバトの塩漬けを使ってる」


「それはうまそうだ。じゃあ、遠慮なくごちそうになるよ」


「おぅよ」


 もう随分前から自炊になっていて、最近は食べる機会もめっきり減ったけど、ヘレンの料理はうまいんだ。

 食事をしながら僕は村の様子を訊ねる。


「今日はみんなゆっくり起きて今は村人総出で宴の準備をしてるぞ」


 農作物の収穫作業も一段落ついてるし、雑木林の収穫はピサーメ以外まだ少し早いと聞いてるからちょうどよかったのかもしれない。


「誕生会と収穫祭と戦勝記念の宴だね」


「おお、景気がいいな」


「捕虜の容体は?」


 そう訊ねると、ルダーの声のトーンが少し落ちる。


「二人はお館様が去って間もなく死んだ。もう一人は『苦しい、殺してくれ』って言うんでイラードが楽にした」


 そうか。


「生き残りは例の男の家で見張られている」


 手引き役の男は戦闘で死んでいるから、今は空き家ってことになるんだし有効利用ってやつだな。


「様子は?」


「縛られてるからってのもあるんだろうけど、おとなしくしているぞ」


「尋問は?」


「まだだな。お館様待ちだ」


 なるほど。


「じゃあ早速行こうか」


 と、僕はヘレンの作ってくれたスープを持って立ち上がる。


「おいおい、それ、持ってくのか?」


「うん。どうせなにも食わせてなかったりするんだろ?」


「よくお判りで」


 野盗に対する村人の感情なんて推して知るべしってもんさ。

 この場合、『好都合』なんだけどね。

 男の囚われている家までの道々でルダーと世間話をしよう。


「ヘレンは順調かい?」


「ああ、おかげさまで安定期だよ。そうでもなきゃスープなんて作ってもらえてないだろ」


 確かにちょっと前までつわりがひどくてルダーが食事の支度をしてたな。


「どっちかな?」


「さあな。前世世界じゃあるまいし、生まれてくるまで判らんよ」


「違いない」


「アニーは妹ができると信じてるみたいだけどな」


「そうか。村が復興して初めての子供だね」


「そうだな。どうでもいいが、ジャリの視線が痛いわ」


 憧れのあねさんだったみたいだからねぇ。


「そういや、チャールズとガブリエル。正式に結婚することにしたそうだ」


「そりゃめでたい」


 なんてとりとめもなく話していると案外すぐに着くもんだ。

 見張りにはジャスが立っていた。


「ケガは大丈夫かい?」


「ザイーダが言うにはこれくらいの傷なら痕も残らないんじゃないかって」


「そりゃあよかった」


「うまそうですね。ヘレンさんのスープでしょ」


 よく判るねぇ……。

 ああ、もともと同郷ってか、ヘレンを慕ってついてきたんだっけか。


「一緒に食う?」


「いいんすか?」


「いいよ」


「ルダー、ごめん。ちょっとの間代わりに見張りお願い」


「はいはい」


 ルダーは二つ返事で引き受けてくれた。

 中に入ると殺風景な家だった。

 腰を据える気なんかサラサラないって言うのが家財道具から見て取れる。

 奥の部屋のドアを開けると、ベッドの上に後ろ手に縛られた男が、心配そうにこちらを見てくる。

 僕は辺りを見回して武器になりそうなものを確認する。

 椅子とか鍋釜程度だな。

 包丁さえないってのはどうやって調理してたんだ?

 ジャスに指示して縄を解く。


「腹が減ったろ? 一緒に食おう」


 その提案はよっぽど彼の想定外だったんだろうか?

 惚けた顔して返事一つ返ってこない。

 スープを温めなおすようにジャスに頼んで、その間にもう少しコンタクトを取ってみることにする。

 さて、硬軟どっちでアプローチとるのが正解なんだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ