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僕だってチートがあれば苦労なんてしていない  作者: 結城慎二
仮免村長、本当の村長になる
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村長の軍略、図に当たる

 何も知らない野盗は男の先導で正面門から入ってくる。

 準備の整った村はしんと静まり返っているので寝静まっているものとたかをくくっているのか、辺りに気を配るような慎重さに欠けている。

 さすが野盗だ。

 いいぞいいぞ、その調子だ。

 十九人のうち二人が出入り口となる門を見張る役のようだ。

 ふむ、さすがにそこまで抜けちゃいないか。

 でも、これは想定内だ。

 いや、むしろこちら側にとって好都合というものだ。

 僕は櫓の中で合図用の小石を手に取り、奥へと進む野盗たちとの距離を測る。

 なにせ相手は荒くれた十九人の男たちだ。

 近すぎると四対十九と圧倒的に不利になる。

 遠すぎると村の主戦力三人を欠いた迎撃隊が不利になりかねない。

 もちろん、ただの村人でも野盗に対抗するための戦術は用意している。

 けど、はらの据わった野盗相手に善良な村人が命懸けの戦いで気合い負けしないとも限らない。

 できれば敵戦力を二分したい。

 五十シャルを少し超えたくらいが狙い目だ。

 それ以上だとちょっと僕の技量が怪しくなる。

 十分に見極めた(つもりの)僕は、手にした小石を隣の櫓に投げつける。

 コツンと板に当たる音がして、小石が地面に落ちていく。

 同時に櫓の上から僕らは身を乗り出して弓をキリキリと引きしぼる。

 チラリと下を見ると呆けた顔で見上げる野盗の二人とそれを今まさに斬り伏せようとする二人の姿。

 僕は結果を確認しないで野盗団の中央あたりに撃ち下ろすように矢を射込む。

 この距離なら僕だって当てることくらいはできる。

 狩猟で鍛えているし、神様の恩恵とやらで人より少し優秀らしいから。

 ただ、この距離では急所にでも当てなければ生き物は簡単に絶命はしない。

 僕は立て続けに射た三矢中二矢が命中し、その間にサビーは四矢すべてを命中させいてた。

 くそがっ!

 全然優秀になってないじゃないじゃないか、神様! 

 足下では断末魔が二つ。

 野盗団はそこで自分たちがはめられたことに気づく。

 頭目だろうか? 大柄な男がこちらを確認して指示を出し、六人がこちらに走ってくる。


「サビー、逃げるやつらにあと一、二射!」


「了解」


 僕は僕でこちらに迫る六人のうち一人を狙い撃ち。

 ……といっても狙うのは確実に当てられる胴体部分だ。

 同じ男を狙って二射。

 どちらも命中はしたけれど、一矢は左の二の腕だ。

 その間にサビーは水平射撃で三矢、最後の一矢を天に向かって射かける。

 当たったかどうかは判らない。

 盗賊団から割かれた男たちをイラードとガーブラが二十シャルほど先で迎撃。

 その間に僕とサビーは櫓を降りる。

 何がすごいって、僕らが地面に降りるまでイラードが二人、ガーブラが三人を抑えてくれていたことだ。

 最後の一人は僕が手負いにしていたので、サビーが先に降りて迎え撃つ。

 負傷した野盗に遅れをとるわけもなく、サビーは野盗を斬り伏せると、ガーブラの助勢に向かう。

 僕はイラードと戦っているうちの一人に殴りかかる。

 上段からの面ってのが本筋なんだろうけど、いろいろ想像しちゃってちょっと躊躇しちゃいまして、決めたのはイラードに斬りかかった右手への小手。

 いやぁ、前世での防具に守られた部位を竹刀しないで打ち付けるあの感覚でいたけど、返ってくる手応えが全然違うのね。

 不意打ちを食らって男は剣を落とす。

 ……っていうか、折れたでしょ、腕。

 うわ、ヤベー。

 心臓ドッキドキだよ。

 面打たなくて正解だわ。

 最初の対人戦でスプラッターはトラウマもんだよ?

 いや、前世の記憶があるってだけで、こっちで生まれてこっちで育っているし、二年前には野盗に村を全滅させられているんで悲惨な現場には多少耐性もあるけどさ。

 自分がその加害者になること考えたらやっぱりちょっと……ねぇ?

 ま・もっともそんなチャンスを見逃すわけもなく、イラードがそいつを斬り殺すわけなんだけど。

 そして気づいたら、全員が倒されていた。

 三人ともすごいよ、いやホント。


「念のためサビーを残して、奴らの後を追いましょう」


 と、イラードが提案してくる。

 一対一の戦闘力ならガーブラの方が強い。

 これは、訓練を見ていての僕の見立てだ。

 でも、乱戦での視野の広さと器用さではサビーに軍配があがる。


「そうしよう」


 セオリーなら万が一のためにも二人残すべきだ。

 でも、村人と野盗の戦力を考えると不安が大きいのもまた事実。

 こっちに回されたのはどうせ頭数の方だったんだろう。

 数で押せばあるいは……と踏んだ時間稼ぎと見るべきだ。

 というか、自分でもたぶんそうする。

 村人側に死者が出ていないことを祈りつつ先を急ぐ。

 何人かに矢が当たっているので地面に血の跡が続いていて、月明かりを頼りに後を追うのは難しくなかった。

 たどり着いた先では四シャッケンの槍を構えた村人が、野盗の一団を囲んで膠着状態にあった。

 個人の戦闘力での彼我の差を武器のリーチで補い、槍衾を作ることで閉じ込めることには成功していた。

 何人かの野盗に深手を負わせてもいる。

 けど、決定打が足りないようだ。

 でも、それでいい。

 無理をして村人に死なれても困る。

 そこら辺の手綱捌きはザイーダがしてくれていたようだ。

 野盗の攻撃にはオギンがフォローに入って味方の損害を最小限になるように頼んでいた。

 二人ともよくやってくれている。

 男尊女卑の傾向がある文化水準で二人の指示に従ってくれている村人たちも偉いぞ。


「五人組に編成!」


 駆けつけて最初に発した命令だ。

 今回戦闘に参加したのは十五人。

 五人一組で三組ができる。

 それにイラードとガーブラ、僕とオギン、ザイーダの二組を合わせて五組が出来上がる。


「各個撃破っ!」


 命令一下五組が動き出す。

 一般村人組はオギン、ザイーダの指示する相手に攻撃する。

 二人が一連の攻防で野盗の序列みたいなものを把握して出した指示だ、僕がどうこう口を挟む必要がない。

 そして、イラードとガーブラは野盗の頭目とみられる男に向かう。

 こっちは僕でも誰が頭目か判るぞ。

 あのダミ声で指示を出している大柄な男だ。

 頭目を討たれるわけにいかないと二人がイラードたちの前に立ちはだかる。

 僕らのところに三人がやっすい威嚇をしながらやってくる。

 あー、これはそんなに強くないパターンだ。

 手入れ不足の剣を振ってくる男を鉄剣で迎え撃つ。

 テレフォンパンチって言葉がある(もちろん前世の記憶だ)。

 予備動作が大きくて判りやすい攻撃のことで本来はボクシングなんかで使う用語だ。

 ふふふ、そんな攻撃剣道有段者(前世)の僕に通用すると思っているのかね?

 こんな攻撃をする奴が攻撃の途中で軌道を変えられるような高度な技術を持っているとは思えない。

 振り始めるのを確認して左斜め前に踏み込んで胴をいでやる。

 確かな手応えと同時に男がくの字に崩れて倒れる。

 どんなもんだい! Qテレビ。


 ……いくらなんでも古いだろ、ネタ的に。


 僕の鉄剣は木刀を模しているから刃はないけど、打撃力は十分だと思うんだ。

 鉄パイプ並みかそれ以上にさ。

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