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村の短期防衛計画3 トップ会談-こちら側の話

「やってるなぁ」


 ジョーは村に入るなり開口一番そう言った。

 今年三度目の来訪だ。

 いつもの年なら年に一、二度くる程度だったから頻繁に来ていると言っていい。

 その代わりいつも秋にくるキャラバンが今年は来なかった。

 多分、廃村になったと聞いたんだろう。

 そう、この村は対外的には野盗に襲われ全滅、廃村手続きがなされている。


「こんにちは、今回はいつまで?」


「うん、今年の冬はここに腰を落ち着けるつもりだ」


 なんと。


「拠点作りも大切な仕事だからね」


 確かにね。


「ということでこちらの要望も聞いてもらうつもりだが、キャラバンのメンバー全員村の復興に手を貸そう」


「ありがとうございます」


「早速だが、今はなにをやっているんだ?」


 僕は現状を説明する。

 まず、今現在同時進行で行われている作業の説明。

 家を建てる。

 これにはルンカーを焼く作業も含まれている。

 次に村を囲う塀の建設。

 今は、そのための木材の切り出し作業にガーブラを班長に男手十人が北の森に出払っている。

 村に残っている男は僕と鍛治職に専念しているジャリ、建築の現場監督としてジャスがいるだけだ。

 伐採に同行している女性はザイーダだけ。

 彼女はサビーとともに作業員の安全確保で警備担当だ。

 冬ごもり前のバヤルなんかが出てきたら撃退してもらわなきゃいけないからね。

 残りの女性陣は家づくりにレンガを積んでいる。


「じゃあ、家づくりは俺たちが代わろう。他にやることありそうだ」


「助かります。冬の保存食作りしないといけなかったんで」


 ジョーはてきぱきと指示を出し村の女性たちと仕事を代わる。

 彼女たちには指示を出して保存食作りをはじてめもらう。

 それから僕はジョーを連れて僕の小屋へ移動する。

 今後の話し合いだ。


「えーと……」


 僕はまず短期計画を説明する。

 家は引き続き住民分建設する。

 これは一応最優先事項だ。

 現在村人二十一名。

 建てた家がもうすぐ完成する家を含めて七軒。

 その他に炭焼き小屋とルンカー用窯の横に寝泊まりできる小屋を作った。

 兄弟や親子で住んでたりするから一応後二軒も建てればとりあえず全員ちゃんとした屋根の下で寝られる。


「なるほど。新しい住人は二人、商材管理にうちの者を置いておく。まぁ、春までは俺たちもこの村に厄介になるがな」


「じゃあ、倉庫に住居を併設する感じでいいですか?」


「そうしてくれるとありがたい。ところでお前はずっとここにいるつもりか?」


「さすがに村長がいつまでも村はずれってわけにはいかないんで村に建てますけど、みんなの家ができた後と思ってるんです」


「ほうほぅ、感心感心」


 褒められてるのか、馬鹿にされてるのか……。


 それから僕は村を少し小さくして北側を牧畜に利用する案を説明する。


「いいね。じゃあ春になったら農耕用のホルスや食用のジップやゴルトを用立てよう」


 こういう即断即決が心地いい。

 余談だけど、うちでもジップを二頭飼っていた。


 牧草地は柵で、村は塀で囲って防備とすることも説明した。


「面白いことを考える。それは二百年近く安定していたこの国の発想じゃないぞ。ブチーチン帝国や、帝国の脅威にさらされているジハラジャ王国あたりの発想だ。いや、でも未来を見据えたらいい選択だ」


 なるほど、確かに元の村は柵さえなかったけど、これはど田舎だからというよりこの国の政治情勢に由来していたんだ。


「しかし、塀で囲むってことは襲われる可能性を強く見越しているってことか?」


 「ええ」と僕は頷く。


「根拠は?」


 僕は、野盗に一度襲われていること、キャラバンが頻繁に出入りすればいずれ村が復興したことが知れ渡ること、王国の戦乱がこんな田舎まで波及する可能性を根拠として示した。


「なるほど道理だ。昨日今日学び始めた少年とは思えない智慧だな」


 そりゃあ歴史オタクの前世持ちですから。

 文字とこの国の歴史以外は何十年という学習の蓄積があるのだよ。


「雪が降るまでに終わらせたいんだけど、無理っぽいんですよね」


「確かに無理だな。おそらく一月としないうちに雪は降る」


「僕もそう思います」


 伊達に十五年もこの村で暮らしていない。

 いつ頃雪が降るってのは体験的に判ってる。


「雪が降ったらどうするつもりなんだ?」


「戦闘訓練を……」


「戦闘訓練!?」


「ええ、いくら柵や塀で囲ってもそれだけで村を守れるなんて思ってません」


「村人みんなで戦おうってのか」


「戦いに不向きな人もいるんじゃないかと思ってますよ?」


「適性を見ることも含めての訓練か」


「そうです。戦い方、武器の得手不得手なんかも知っておくべきでしょ」


「そういうもんか?」


「そういうもんです」


 引き金引けば誰でも人が殺せる世界じゃないからね。

 武道をかじっていた人間として武器との相性、戦闘戦術の重要性は知っているつもりだ。

 得手勝手に襲ってくる野盗なら実力次第の戦闘もありだけど、リスクは極力排除するのが指揮官の使命であり勝利することが至上命題だぞ。

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