表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/432

今必要なのは武器より情報かな

 こちらから提供する商品は「黒炭」「デヤールの革」「デヤールの毛皮」「ラバトの毛皮」「ファルクスの毛皮」「干しピサーメ」「干しダリプ」「デヤールのハム」「デヤールのベーコン」「デヤールの燻製」「ラバトの燻製」それに「デヤールの角」


「干しピサーメは食うだけならいいけど、売り物にはならないな」


 あ、やっぱり。


「さて、欲しいものはなんだ? それなりのものが買えるぞ」


 まずは野菜の種。

 二週間から一ヶ月で収穫できる葉物野菜や根菜をいくつか見繕う。

 それから大工道具、着替えを作るための生地と裁縫セット、それと調味料。


「──それと、護身用に武器が欲しいんですけど……」


「さすがに人数分は無理だな。武具防具は考えている以上に高価なもんだからな」


 うん、知ってる。


「それに扱えるのか?」


 他のみんなは知らないけれど、僕はこう見えて前世で剣道の有段者だった。

 今の体では子供の遊びでチャンバラごっこをやっていた程度で、一度もちゃんとした稽古をしていないからすぐすぐ戦えるようになるとは思えないけど、それなりに格好はつくようになると思う。

 もっとも道場剣術が実戦でどれだけ使い物になるかは判らない。

 そして、今すぐ必要なものでもない。

 けど、いずれ戦う場面はやってくる。

 その日のために準備しとかなきゃと思っているだけだ。


「何本買える?」


「そうだな、剣なら二本ってとこだな。おまけしてだぞ」


 まじか。


 …………。


 待てよ?


「他の武器ならもっと揃えられるの?」


「戦闘用じゃない手斧なら三本、短剣で五本てとこだな」


 む・いいんだか悪いんだか。

 考えどこだけど得物ってのは手に馴染むまで振り込むのが基本で、体の一部にまで溶け込むと今度は別の武器になった時に感覚が狂うもんだ。

 適性ってのはとっても大事だからな……。


「ザビーたちは……」


「彼らはそれぞれに自分の得物を持っている」


 あ・やっぱり。


「キャラバンってのはそう言うところだからな」


「……次はいつ頃くる?」


「どうした急に」


「うん、武器は要検討かなって」


「……お前、本当に村人1か?」


 ?


「……いや、とても十五歳まで田舎の集落で過ごしてきた男とは思えなくてな」


 確かに。


「そんなことより次はいつくる?」


「ああ、じゃあ三ヶ月後に来てやるよ」


「判った。それまでに色々考えておく」


「じゃあ他に買うものはないんだな?」


 僕はちょっと腕組みをして考える。

 僕の使命はこの世界で生き抜くことだ。

 生き抜くのに絶対必要なのは衣食住、これは今回の取引で目処がついた。

 次に必要なのは……情報か。

 戦国時代(もちろん前世世界)の武将は、どれだけ早く正確な情報を手に入れられるかが生き残りに直結していた。

 さて、今の僕にはどんな情報が必要だ?


「正確な地図が欲しい」


「ほう」


「それから周辺の情勢?」


 ジョーは豪快に笑いだす。

 な、なんだなんだ?


「ものの考え方が昨日今日『大人』になった男のものじゃないぞ」


「そ、そうかな?」


 まさか「前世が……」なんて気楽にカミングアウトできる性質のものじゃないから適当にお茶を濁す。


「地図は次までに用意しよう。近隣の詳細な勢力図を書き込んでな」


 それはありがたい。


「手習いセットも用意してやる」


「え?」


「読み書きは出来るに越したことがないだろ?」


 確かに。

 この国の文字が読み書きが出来れば文献に当たって情報を得られる。


「ありがとう!」


「なんもなんも」


 ???


「どうした?」


「あ・いや、今……」


「取引残額で手習い帳といくつかの書物を用意しよう」


 昼になり、村人がポツリポツリと戻ってくる。

 最初に戻ってきたのはヘレンたち。

 今日はラバトを二羽仕留めてきたみたいだ。

 野草もカゴいっぱいに摘んでいる。

 次に戻ってきたのはジャリたち。

 火力が安定した段階で引き継いできたらしい。


「ルダーはまだ戻っていないのか?」


 ジャスがみんなを見回して言う。


「じゃあ、私が呼んできてあげる」


 いうより早く駆け出して行ったのはカルホ。

 いやはや、ちっちゃい子は体力が余ってんのね。


 …………。


 僕も十五歳だからまだまだ体力はあるよ、うん。

 昼飯の準備が出来上がる頃、カルホに手を引かれて二人も戻ってくる。

 みんなの前に一皿のスープが行き渡ったところでジョーと視線を交わすと、彼は小さく頷いた。


「じゃあ、食べながら戦略会議を始めよう!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ