11月29日
12月29日正午、サミットはついに西部経済連合編入準備条約に調印されることなく閉幕し、テレビやネットなどのメディアによってこの事は拡散された。
サミット閉幕を知ったデモ参加者の半数は、今回の調印は不可能であったのだと諦めて解散した。しかしながら残りの半数は、あらゆる手段を用いての編入準備条約への即時調印及びメタルリヤ大統領の解任を求めデモを続行した。
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大統領官邸にて
解放広場のデモ隊への対策会議室内
「報告いたします。カツレツ市の解放広場のデモ隊は1万人に減少しました。しかしながらいまだに1万人はデモを続行しており解散する様子は見られません。」
大統領秘書が解放広場の現状を説明する。
内務大臣「ここは、デモ隊を刺激しないように静観しましょう。 デモが我々には効果がないことを見せつけて、デモ資金出資者の心を砕きデモ隊を内部から崩壊させるのです。」
カツレツ市長「それでは辺境地方国の信用を失ってしまいます。警官隊をもって速やかに排除をすべきであると私は考えます。アップル革命のときもデモによって大統領選のやり直しが決まり、結局バンクが大統領となりました。デモ隊をこれ以上野放しにすることは危険です。」
メタルリヤ側近「しかし、デモ隊を治安維持のためとはいえ強制的に排除すると大統領は国内外から批難されます。これは次期大統領選には致命的です。」
会議に集まったものたちの意見は、デモ隊を排除すべきという意見と静観すべきといった意見に別れ議論がしばらく続く。
議論が煮詰まり、一端休憩に入ろうとしたところで再度秘書がもたらした情報により、会議は大きく動くこととなる。
秘書「報告します。大統領が派遣した大統領付秘密警察隊がデモ隊がカツレツ市庁舎の占拠を企図しているという情報を入手しました。」
内務大臣「いつの間に。デモ隊の情報は我々が既に調査中です。一言、調べろ、と命じていただけたのならお望みの情報を集めましたのに。」
メタルリヤ側近「申し訳ありません。私が調査は多角的な方が良いと大統領に進言したのです。決して内務省を信用していないわけではありません。」
内務大臣「いえ、いいのです。辺境地方国のためを思うなら当然の行動です。状況はアップル革命に酷似していて、このままだと…。
それより、情報の真偽はともかくとしてデモ隊の対処を考えることが優先です。」
カツレツ市長「事は一刻を争います。警官隊により速やかデモ隊を排除し、カツレツ市庁舎付近への関係者以外の接近を禁止すべきです。」
メタルリヤ側近「私はデモ隊と対話の場所をもうけて、平和的に問題を解決すべきだと思います。」
内務大臣「私も、平和的に解決すべきだと思います。しかし、偏った思考のデモ隊と建設的な話し合いができるとは思いません。まずはカツレツ市庁舎から一般職員を避難させ、どこかに仮の市庁舎を設けて行政機能を移転しましょう。その後、警官隊によるカツレツ市庁舎の警備をよりいっそう厳重にしましょう。」
ここで沈黙を保っていたメタルリヤ大統領が口を開く。
メタルリヤ大統領「私はデモ隊と平和的に解決すべきだと考えているが、デモ隊は私の言うことに耳を傾けることはないだろう。なにより市庁舎を占拠しようとすることを許すことはできない。
もはや、対話による解決の道はないと判断した。私はデモ隊を警官隊によって強制的に排除することを決定する。
皆色々言いたいことはあるだろうがこれは決定だ。この事態には早急に対処しなくてはならない。
私は次期大統領選に勝つことより、辺境地方国に安定をもたらしたい。私が落選したら、皆にも迷惑をかけるだろう。本当にすまない。
…内務大臣。排除の方法は任せる。相手はデモ隊であっても辺境地方国国民だということを念頭に置きつつ排除計画を急ぎ作成してくれ。そして明日中には解放広場を解放するように。」
内務大臣「おまかせ下さい。大統領の命令とあらば、解放広場をデモ隊と警官隊双方に犠牲を出させることなく解放して見せましょう。」
メタルリヤ大統領「頼んだぞ、以上だ。」
メタルリヤ側近「…では、以上で、対策会議を終了します。
…メタルリヤ大統領、我らは大小の差はあれど、メタルリヤ大統領に恩義を感じています。どこまでも、いつまでも、供を致します。」
メタルリヤ大統領「…すまない。」
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会議が終わるとすぐに内務大臣は辺境地方国警察長官に解放広場のデモ隊の排除の準備を行わせた。
そして同時にメタルリヤ大統領の政治生命を賭けた命令であり失敗は許されないことも警察長官に念押ししておく。
警察長官は内務大臣の命令に反発したが、デモ隊が市庁舎の占拠を計画していると聞くと態度を変えて、内務大臣の命令に従った。
警察長官も国を思う一人であり、市庁舎が占拠された際の影響を分かっているのだ。
デモ隊排除の決行は明日である。