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遠い国での革命  作者: 100万灰色の橋
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11月22日

解放広場にて


メタルリヤ大統領の西部経済連合編入準備条約調印延期が発表された翌日の夕暮れ時に、解放広場という議会連邦からの解放を記念して名付けられたカツレツ市中央に位置するオレンジ色の石畳と古い石造りの建物に囲まれた美しい広場に約2千人の辺境地方国国民が集まった。


この広場は辺境地方国の観光用のパンフレットにも載る程有名な広場であり、普段ならば観光客でごったがえすのであるが、今はその姿は見受けらず、明らかに観光客がではない物々しい雰囲気の2千人の人々がたむろするばかりである。


広場に面した家々の住人も、いつもとは違う雰囲気に窓をわずかに開き、顔を覗かせ気配を探っている。


解放広場に集結した彼らの正体は今回のメタルリヤ大統領の調印延期に不満を抱いている辺境地方国民者たちである。


彼らは、過去にカツレツ市でアップル革命を経験したベテラン活動家たちと、活動家たちがSNSを使って集めた、同じ志を持つ若者たちであった。


そんなベテラン活動家の代表である、ユーリ・ノーウィーは辺境地方国の行く先を憂いて集まった者たちに語りかけた。


「親愛なる革命の同士諸君!よくぞ集まってくれた!

最初に自己紹介をしておこう。私はユーリ。アップル革命のころからこの国のためを思い活動している革命家だ。

今回は辺境地方国の危機を感じて、私たちの国を守るため再び立ち上がった!


そして君たちは辺境地方国のために立ち上がった志高き者であり、私は君たちと共に戦えることを光栄に思う。共に辺境地方国民を導き、辺境地方国の輝かしい未来を作っていこうではないか!


我々は現在危機に直面している。ルーシ連邦による辺境地方国への内政干渉である。


辺境地方国は独立直後からルーシ連邦に搾取され続け、辺境地方国民は貧しい生活を余儀なくされてきた。我々は辺境地方国を豊かにするためアップル革命を起こしメタルリヤの不正を暴き、バンク政権を樹立させた。


バンク政権は辺境地方国を豊かにするため多くの改革を行ったが、これらの改革はルーシ連邦の妨害により、失敗に終わってしまった。


そして今、辺境地方国はルーシ連邦の手先のメタルリヤによって、取り返しのつかない選択をさせられようとしている。

これは断じて許される行為ではない!

今こそルーシ連邦の手先のメタルリヤに正義の鉄槌を再び下し、メタルリヤの配下は全て刈り取らねばならない!


しかしながら、今我々には足りないものがある。それは志を同じくする多くの同士である。私達はSNSを通じて君たちを集めた。君たちにも同じことをしてほしい。

SNSで抗議活動に参加するものには日当一万円を支払うと。カツレツ市行きの公共交通機関29日まで全て無料になると。この事をSNSを通じてできるだけ多くの辺境地方国民に拡散してほしい。


また、できることなら、君たちの大学の、会社の、近所の、志を同じくする者たちをメタルリヤに対する抗議活動に勧誘してほしい。


安心してくれ。私たちは約束する。抗議活動は安全の面で万全を期すと。抗議活動は断じて平和的なものであると。


それでも君たちの中には不安を持つものもいると思う。そこで今からデモ行進を行うので最終的には、自ら体験して判断してほしい。


加えてこのデモ行進はテレビ報道されるので、皆、それぞれが、辺境地方国を代表しているものとして誇り高い行動をすることを私たちは期待している。


我々は決して強制することはない、我々は皆平等な同士であるのだから!


辺境地方国万歳!辺境地方国に栄光あれ!」


ユーリが叫ぶと、二千人の歓喜の叫びが、解放広場に響いた。



~~



同日夜

解放広場にて


~『反政府派の民間放送局による報道』~


辺境地方国はアップル革命以来「自由」を掲げており、この自由には報道の自由も含まれていた。しかしながら辺境地方国という国はそれほど豊かとは言えず、テレビ放送も国営放送とリテミアやメタルリヤといった限られた政治家や財閥が持つテレビ局が存在するのみで、自由ではあるがそれを謳歌することはできない状況にあった。


この様な中、反政府活動を支援するリテミアとその財閥が首都カツレツにおいて、反政府デモの様子を

保有するテレビ局『1+1=1』で放送した。


『私の声が聞こえていますか。』


アナウンサーが大勢のデモ隊に混ざって行進している映像が写し出される。


『すごい賑わいです。私はカツレツ市の解放広場で行われている、デモの現場にきています。

多くの人々が西部経済連合編入準備条約への調印延期の取り消しを求めてデモ行進を行っています。

アップル革命の時とは違って、デモ隊はリンゴのグッズを持ってはいなあようです。』




『見てください、デモ隊の中には北部条約機構と軍事条約を結ぶべきと書いてあるプラカードを持った人もいます。』



デモは非常に平和的に行われています。近くには露店が並んでおり、不慮の事故に備えて救護所が開設されています。

デモに参加している女性に話をきいてみます。 どうしてデモに参加しているのですか。


デモに参加している女性

私達はメタルリヤ大統領に西部経済連合編入準備条約調印延期を取り消してほしいと思ってデモを行っています。西部経済連合への加入は辺境地方国独立直後から全国民の夢なのですから。

大統領にはもっと国民の声を聞いてほしいのです。辺境地方国はメタルリヤ大統領個人のものではなく、辺境地方国民のものなのです。


記者

最終的な目標はあるのですか。


デモに参加している女性

西部経済連合編入準備条約へメタルリヤ大統領が調印することです。サミットは29日に閉幕してしまいます。ですから今私達が行動を起こして、国民の意思を大統領にアピールしているのです。

もし大統領が調印しなかったら、メタルリヤ大統領は私達の大統領でははありません。

辺境地方国は独立直後から民主主義国家であり、国民の声を聞かない大統領は、民主主義国家の大統領と言えないからです。


記者

ありがとうございました。


デモに参加している女性

ああ、待ってください。私たちは辺境地方国のために共に活動してくれる人を求めています。日当も出ます。交通費も出ます。興味がある人はぜひ解放広場に来て下さい。




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