閑話
閑話
2008年、ブカレシュティでのルーシ= 西部経済連合サミットが閉幕した後で、出席していたシーラ大統領は当時の合衆帝国大統領ブルに親しげに話しかけた。
「やあ、ブル。君は辺境地方国というものが何か理解しているかい?辺境地方国とはね、先の大戦によって作られた緩衝地帯なんだよ。そしてこの緩衝地帯は2割の東欧の土地と8割のルーシ連邦の土地で出来ているんだ。この意味が君に理解できるかい?」
「それは、辺境地方国はルーシ連邦の一部だと言いたいのか?」
「もちろん違うとも。辺境地方国はもう1つとしての立派な国家となっている。ルーシ連邦の一部ではない。
そして国家にはそれぞれ 意思決定の自由があり、ルーシ連邦はこの正統的権力を尊重こそすれど、これを否定することは決してない。
だがブル、これだけは理解するべきだ。ルーシ連邦と辺境地方国は兄弟のように親密な関係であり、だからこそ、私は辺境地方国の意思を尊重しているんだ。そしてこの関係が断ち切られることは決してないし、もし断ち切られたとしたら、それは辺境地方国の終わりを意味している。」
「それは非常に、非常に繊細な話だね。とりあえず君の話の内容は理解した。それで、君は私に何をしてもらいたいと思っているんだ?」
「いや、特段、君たちに要求することはない。ただ理解をしてもらいたかっただけだ。この話は決して脅迫ではない。しかしながら警告ではある。もしも、今回の話が理解されず、我々兄弟の仲が君たちによって引き裂かれるようなことがあれば、辺境地方国という国家は消滅し、君たちへあらゆる時と場所で多大な苦しみを味わうこととなる。」
シーラ大統領の表情は終始穏やかなままであったが、その話の内容は深刻極まりないものであった。
「君の話はよくわかった。今回の話を心に留めて今後は行動することにしよう。」
「そうか、ありがとう。」
こうして数分にも満たない大統領同士の会話は終わった。
しかし、悲しいことかな辺境地方国での
騒動が起きる頃には合衆帝国の大統領はブルからブラックに代わってしまっていた。
そして合衆帝国の新大統領は伝統的に前大統領の政策を否定する政策をとるため、今回のシーラ大統領の警告を受けて辺境地方国にはあまり手出しをしないとういブルの方針は180度転換することとなってしまう。
世界の平和を目指すブラック大統領の政策により、合衆帝国は辺境地方国を支援することを決定したのである。
そして、この決定は辺境地方国に戦火をもたらすこととなる。