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遠い国での革命  作者: 100万灰色の橋
10/20

11月30日

西部経済連合編入条約調印のためのサミットが終わりを迎えた翌日、メタルリヤ大統領の命令により辺境地方国国内警察は解放広場のデモ隊を強制排除することとなった。


命令を受けた辺境地方国国内警察長官は直ちに命令を遂行するべく、デモ発生時から治安維持のために派遣していた警官隊に加え、さらに各県の警察から急遽召集した増援を解放広場へ派遣した。

そして合計1万人にもなる警官を『混成任務部隊(略称は混成隊)』として再編成し、解放広場のデモ隊の排除にあたらせることとした。


混成隊の再編に伴い、警官たちの装備も通常の装備からデモ鎮圧用の装備に変更となった。

警官は石や火炎ビン等の投擲から身を守るため難燃性の活動服にマフラー、目出し帽を着用し、その上から防弾仕様の全身を覆うケブラー製プロテクターとヘルメットを装備した。

さらに左手にジュラルミン製の四角い大盾を持ち、右手には先端を殺傷能力がない程度に尖らせた木製の長い棒を持ち、予備の武器として右の腰には警棒を装着するといった重武装である。


そして現在、混成隊は解放広場から放射状に伸びる6本の街道の内4本を2千人の人員をもって封鎖している。

6本の内4本の街道から混成隊が前進しながら圧力を掛けていき、最終的には残りの2本の街道からデモ隊をトコロテン式に押し出していくのが本作戦の概要である。


「第1大隊、盾構え!前へ!」


広場からから伸びる6本の街道の中の1本を任されている混成隊第1大隊長は混成隊長から無線で前進の命令を受け、号令を下す。

同時に他の3本の街道からも他の大隊が同じ様に前進する。


「前へ!前へ!」


街道を隙間なく塞いでいる第1大隊の警官隊が大声を張り上げ群衆を威嚇する。

そして命令を受けた第1大隊の警官隊が大盾を構えながら盾の壁を形成し、じりじりと前進し群衆を押していく。


それはまるで怒声をあげるアルミの壁が迫り来るようであり、待ち受けるデモ隊を恐怖させた。


それも当然である。何しろデモ隊の参加者の大半は暴力とは無縁な心優しい一般市民であるのだから。この圧力に耐えられる訳がない。


現状は混成隊はデモ隊を強制排除をしているが、もちろん最初から混成隊は強制的に排除をする姿勢は見せていなかった。

混成隊はまず、拡声器を用いて、デモ隊の解散を促したが、デモ隊は解散する姿勢を見せず、座り込み罵声を浴びせてきた始末である。

そのため混成隊は強制排除を行うことを警告し、解放広場から逃げる時間的猶予を十分にデモ隊に与えた後に実行に移したのである。


これが議会連邦時代の辺境地方国であったら容赦なく兵士により射殺されるか、秘密警察に捕まった後拷問され殺されていただろう。

それに比べたら現在の辺境地方国の警察の対応は温情ある対応と言えるだろう。


「前へ!前へ!」


第1大隊は、足並みを揃え怒声をあげながらゆっくりではあるが着実に街道を前進していく。


迫り来る混成隊に、頑なにその場を動かず反抗する勇敢なデモ参加者がいた。

そういった者は手錠をかけられ、盾の壁の中へ連行された。


混成隊員につかみかかったり、殴りかかるなどより攻撃的なデモ参加者がいた。そういった者は木製の棒か警棒で滅多打ちにされ昏倒し血だらけの状態で盾の壁に引きずり込まれた。


角材や鉄パイプで攻撃する者もいたが、これらも大盾で防がれ意味をなさず、その後やはり抵抗できなくなるまで警官に叩かれ蹴られて、やはり盾の壁に引きずり込まれた。


迫り来る混成隊の盾の壁に加え、この光景を目にしたデモ参加者は完全に抵抗の意志が砕けてしまった。


まさかこんなことになるなんて。このままここにいたら、自分も連行されるのではないだろうか。


「どいてくれ!道を開けてくれ!」


デモ参加者は後退して逃げようとするが、解放広場は込み合っていて通り抜ける隙間すらない。


「前へ!前へ!」


逃げることができない状態で、なおも迫り来る第1大隊。最前列のデモ参加者は恐慌常態に陥り、少しでも後退しようと無茶苦茶に他のデモ参加者を押していく。


「邪魔だ!早くいけ!この!」


そこに第1大隊長に混成隊長から無線が入った。


「第1大隊長。こちら混成任務部隊長。第1大隊の前進スピードが早い。直ちに大隊を停止させよ。前進スピードが早すぎると市民を圧迫し将棋倒しになることがある、市民に被害を出さないように注意せよ。」


メタルリヤ大統領や内務大臣の国民には可能な限り被害を出さないという意思は混成隊の末端にまで確実に浸透していた。


「第1大隊長了解。第1大隊、 止まれ!」


無線を受けた第1大隊長は号令を下す。


「停止!停止!」


第1大隊は前進をやめ停止した。もう第1大隊とデモ参加者の距離は5メートルもない。


第1大隊は攻撃的なデモ隊のグループに角材で突かれるなど抵抗を受けたため、興奮状態となり知らず知らずの内に前進スピードが早くなりすぎていたのである。


「全大隊。こちら混成任務部隊長。現在作戦は順調に進行している。現状を維持したまま任務を完遂せよ。」


第1大隊が突出しかけたが、それ以外は順調に推移していた。しかし油断は大敵である。混成任務部隊長は意思の徹底を図るため無線で注意換気を行う。ここまで来て、失敗は許されない。


~~


そして警官隊が解放広場の半分以上を制圧すると、デモ隊の士気は急激に下がり、デモ隊は瓦解、その後は抵抗らしき抵抗を受けることなく、解放広場からデモ隊を排除することに成功した。警官隊の任務は達成されたのである。


~~



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