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遠い国での革命  作者: 100万灰色の橋
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概要

帝紀1991年の東の大国「議会連邦」崩壊に伴い議会連邦から独立を果たした「辺境地方国」。

いざ独立したものの、独立直後は辺境地方国を含む計画経済を主導していた議会連邦崩壊のショックにより辺境地方国の経済は混乱、麻痺し低迷していたが、それでも同じく議会連邦から独立し、また議会連邦の大部分を継承した隣国「ルーシ連邦」と密接な関係を保ちルーシ連邦との計画経済を行うことにより、辺境地方国の混乱は終息し、経済破綻という最悪の状況は免れた。


それから数年の歳月が経ち、混乱していた経済も回復したことから、ルーシ連邦に依存した計画経済からの脱却と緩やかな市場経済へ移行することにより、辺境地方国はようやく独立した国家として歩み出すことができた。


辺境地方国が議会連邦から独立してから14年後の帝紀2005年、西の超大国「合衆帝国」が第3代辺境地方国の大統領を決める大統領選挙に秘密裏に介入した。


当時、大統領選挙最終戦として、親ルーシ連邦勢力である首相のメタルリヤと親合衆帝国勢力である元財務大臣のバンクが争っており、国民の支持率も拮抗していた。

そして当初はメタルリヤが僅差で勝利することになるのである。


そうして、辺境地方国の大統領にメタルリヤがなるはずであったが何とかして、辺境地方国に都合の良い政権を樹立したい合衆帝国は辺境地方国に工作員を送り込み、メタルリヤの悪評を広るという情報工作を行った。


メタルリヤは票の水増しをしていた。

メタルリヤは選挙管理委員を買収している。

メタルリヤはルーシ連邦と手を組みバンクの暗殺をほのめかし脅迫していた、と。


この悪評はSNSを通じて、瞬く間に辺境地方国中に広がり、これを真に受けた国民は大統領選のやり直しを求め、非暴力のデモ行進といった大規模な抗議活動を行った。

メタルリヤは選挙の不正を否定したが、国民には聞き入れられず辺境地方国議会でメタルリヤ新大統領の職務停止と大統領選のやり直しが決定された。


こうして大統領選がやり直された結果、メタルリヤとバンクのどちらに投票するか迷っていた中間層がバンクに傾きわずかにバンクの得票率が増え、今度は僅差でバンクが勝利したのである。

この選挙のやり直しからバンク大統領の誕生までが『アップル革命』と後に呼ばれることとなる。なぜアップル革命なのかというと、大統領選のやり直しを求める辺境地方国民が赤い旗を掲げ、さらには旧訳聖書における禁断の果実であるリンゴを手にしていたからである。


さて、このアップル革命の背景にはルーシ連邦と合衆帝国の関係悪化があったといわれている。

議会連邦崩壊の直後、合衆帝国は議会連邦から独立したルーシ連邦や辺境地方国と良好な関係を築き、経済支援、民主的選挙の支援、その他様々な支援をしていた。


これらの支援は合衆帝国にとってはノブレス・オブリージュ、貴族の義務でしかなかった。弱国には強国がほどこしをしなければならない。このほどこしをするという行為は、合衆帝国のルーシ連邦に対する優越感を大いに満たした。


当初、議会連邦を引き継いでいたとは言え、議会連邦の取り巻きである衛星国を全て失ったルーシ連邦は弱体化しており、ルーシ連邦としても合衆帝国の支援が必要だったために大人しく合衆帝国の操り人形を演じていたが、ルーシ連邦の大統領がちょうどシーラに変わる頃状況が変わった。


石油価格が高騰したのである。

ルーシ連邦内には石油や天然ガスといったエネルギー資源が大量に眠っており、これらのエネルギー資源を売ることによりルーシ連邦は莫大な利益をあげることとなった。


同時にシーラ大統領は『強いルーシ連邦』というスローガンを掲げ、軍の改革にも着手した。それまでのルーシ連邦は徴兵制を敷いており、兵力は陸海空合わせて常備軍1000万人、予備役5000万人という大規模なものであり、これを維持するために莫大な予算を費やしてきた。

シーラ大統領はこれを常備軍100万人の志願兵からなるコンパクトで最新鋭の装備を持つ軍隊に改革したのだ。

現代の戦争に大規模な軍隊は必要ないのである。もちろん軍の高級将校や将官からの抵抗はあったがシーラ大統領は元情報将校としての能力を遺憾無く発揮し、逆らう者は容赦なく汚職を摘発し除隊処分とした。


エネルギー価格の高騰と軍の改革により莫大な資金を手に入れたルーシ連邦は『強いルーシ連邦』としてのプライドを持ち始め、合衆帝国に反発し始めるようになる。


合衆帝国としても経済が回復し、反発し始めるルーシ連邦にノブレス・オブリージュとして経済支援をする義理がなくなり、帝紀2000年合衆帝国はルーシ連邦への経済支援を打ち切ることとなり、合衆帝国はルーシ連邦を色眼鏡で見ることをやめるのであった。


色眼鏡を外して見るルーシ連邦の行いは合衆帝国には酷く醜く見えた。

長期にわたり続いているチェーン紛争ではルーシ連邦はテロリストを老若男女容赦なくなで切りにしていた。

シェルビアでの内乱に乗じて武器を売り付け、内乱を過激化させていた。

辺境地方国には天然ガスを高く売り付けそれを払えないとなると、辺境地方国内には残る議会連邦時代の兵器を代わりに買い取り、辺境地方国の抵抗力を奪い取ろうとしていた。

これらの行いは世界の警察官である合衆帝国にとって我慢ならないことであった。


こうして合衆帝国のルーシ連邦への見方が変わるなかさらなる事件が起きた。


『合衆帝国同時多発テロ』である。このテロでは合衆帝国の石油ビルや国防省などが標的となり、アーフラバーン率いる中東の聖戦組織『神学の党』の工作員が旅客機を乗っ取り衝突させたのである。


合衆帝国としては本土を攻撃されるのは先の大戦以来であり、合衆帝国民は震え上がった。

当時の合衆帝国大統領は非常事態宣言を発令すると同時に神学の党がいる国家「ガンダーラ」に一方的に宣戦布告し合衆帝国と帝国に同調する国家とガンダーラによる『ガンダーラ戦争』に突入することとなった。


合衆同時多発テロが発生した直後、同時ルーシ連邦大統領であったシーラ大統領は合衆帝国への全面協力を約束し、両国は一時的に緊密な関係に戻ることができた。

しかし、それもガンダーラ戦争が終わるまでのほんの一時的なことであった。


合衆帝国は圧倒的な軍事力でガンダーラを1か月以内に制圧することに成功したが、肝心のアーフラバーンと神学の党の幹部とらえることができなかった。

アーフラバーンと神学の党の幹部はガンダーラの隣国であるか「アッタバード」に移動していたのである。


合衆帝国はすぐさま情報機関をガンダーラの周辺国に派遣し、アーフラバーン達がアッタバードに潜伏していることを掴むとアッタバードにアーフラバーンを差し出すように要求した。


合衆帝国はアッタバードがテロリストであるアーフラバーンを差し出すと考えていた。しかしここでアッタバードは同じ教徒であるアーフラバーンを差し出すことを拒んだため、合衆帝国は今度はアッタバードに宣戦布告し、侵攻することとなった。


これに対して、ルーシ連邦は合衆帝国のアッタバードへの侵攻を批判、さらには国連において合衆帝国のアッタバード侵攻の中止の決議を開いたのである。

決議自体は合衆帝国が拒否したため、侵攻中止となることはなかったが、合衆帝国にとってはこれはルーシ連邦の裏切りにほかならなかった。


さらに合衆帝国がアッタバードに侵攻すると、ガンダーラ国民が合衆帝国軍にゲリラ攻撃を加えだしたのである。


こうして、合衆帝国はアッタバード侵攻と同時にガンダーラへ大勢の治安維持要員を送り込む羽目になり、泥沼に陥ってしまった。

合衆帝国は軍自費がかさみ、死者が増え続け、経済は赤字となり、厭戦気分国民の中に広がっていった。


このような背景から、合衆帝国が苦戦を強いられている最中に、順調に国力を伸ばしているルーシ連邦に合衆帝国は危機感を抱き、ルーシ連邦の国力をけずるためにルーシ連邦に味方する国を減らし、合衆帝国と同じ自由の国を増やすことで、合衆帝国内のガス抜きの目的でアップル革命を起こしたといわれている。


話はアップル革命の後に戻る。

アップル革命により政権を樹立したバンクはルーシ連邦との密接な関係を止め合衆帝国との接近を図った。

しかしながら合衆帝国は辺境地方国に僅かばかりの経済援助しか行わなかった。なぜならば合衆帝国の狙いはルーシ連邦と辺境地方国の離間とそれに伴うルーシ連邦の国力の削減にあったからである。


合衆帝国からの援助がなく、ルーシ連邦との関係を悪化させてしまった辺境地方国の経済状況はたちまち悪化し、国民の親ルーシ連邦派ではないバンク政権の支持率は低下していった。


帝紀2012年、このような背景のなか辺境地方国での次期大統領選挙で当時のバンク大統領を圧倒的格差をもって下し、再びルーシ連邦との密接な関係を復活させることを綱領として掲げた親ルーシ派であるメタルリヤが当選した。

メタルリヤ新政権のもと辺境地方国はルーシ連邦にへ接近し、見返りとして様々な譲歩をルーシ連邦から引き出し、辺境地方国の経済状況は改善し政権は安定していった。


しかしメタルリヤ政権誕生直後から、合衆帝国は再び辺境地方国に秘密裏に介入していた。

合衆帝国は辺境地方国の過激派民族主義勢力を援助したのである。過激派民族主義勢力は辺境地方国民の愛国心をくすぐり支持を集め、そして武力をもって親ルーシ連邦派を掲げるメタルリヤ政権をを倒すべきだと公然と主張するようになった。また過激派民族主義勢力に親合衆帝国派であるバンクと後ろ楯であるリテミア勢力がこれに合流し、その勢力は勢いを増した。


合衆帝国の介入を察知したルーシ連邦は、メタルリヤ政権を支持するため、経済援助を行い辺境地方国の経済の活性化と国民の不満の解消を図った。


またルーシ連邦との国境付近に位置しルーシ連邦への依存度が高い辺境地方国東部工業地帯の国民は自らの利益のためにルーシ連邦との関係を重視するメタルリヤ現政権を支持した。


こうして辺境地方国はルーシ連邦との関係を重視すべきと主張するメタルリヤ大統領を筆頭とする親ルーシ勢力と、打倒メタルリヤを主張する過激派民族主義勢力によって二分されて静かな対立が続くこととなる。


帝紀2673年、静かな対立が続く中、決定的な出来事が発生した。メタルリヤ大統領が西部経済連合への編入準備の条約への調印を延期したのである。

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