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異世界転生~in神界~

 真っ白な空間。

 今、私がいるところを一言で言い表すならば、この言葉がふさわしい。


 なぜ、空間と思うのか、それは、どこを見渡しても終わりが見えないからである。


 そして、全てが白い。上も下も右も左も前も後ろも何もかも。

 この空間で何かを探そうものなら、開始前からお手上げだろう。



 私、花厳愛菜かざりらなは、ごく普通の高校に通うごく普通の女子高生だ。


 学力や容姿、運動神経など、何においても平均的であり、得意なことや苦手なこともなく、好きなものも嫌いなものもない。


 そんな私に普通ではない事態が発生している。


 なぜこのような場所に私はいるのだろうか。

 心当たりはまったくといっていいほど無い。

 私は暖房の無い寒い部屋のなかで唯一、温もりを与えてくれる布団のなかで泥のように眠っていたはずだ。


 そして、目が覚めるとどういうわけか、この見覚えの無い空間にいたわけだ。


「目が覚めたようですね」


「っ!!」


 ふと背後から声が聞こえる。

 先程まで私の近くには誰もいなかったはずだ。


 とりあえず私は声の主を確かめるために振り返る。

 そして、再び息を飲む。


 そこにいたのは、人とかわりない姿をした何かである。

 なぜ、何かという曖昧な表現なのか、それは彼女が人としてはあまりに完成された美をもち、神々しいとすら感じるからだ。


 なので、彼女が人であるのかと問われれば私は違うと答えると思う。


 自分が女であることを忘れて見惚れてしまったほどだ。


「あなたは?というか、ここはどこなんですか?私は何でこんなところにいるんですか?」


「そう一度にたくさん質問しなくても、ちゃんとお答えしますので安心してください」


 彼女は口元に手を当ててふふ、と微笑む。その姿がとてもよく似合う。


「まず、一つ目の質問から、端的に申しますと私は女神と呼ばれる者です」


「女神様?ですか」


「はい。貴女からしたら異世界である世界で女神として祀られています。名を、ミンティアと申します」


 なんだか、息がきれいになりそうな名前だな。

 リフレッシュ!!


「何か失礼なことを考えていませんか」


「いえ、気のせいではないですか」


「・・・。まぁ、いいです。二つ目の質問についてですが、ここは神界と呼ばれる空間ですね。基本的には私しかいません」


 やって来ましたin神界。


 でも、ますます分からない。

 なぜ、特別凄いわけでもない平凡の塊のような私がここにいるのか?


「三つ目ですが、これについては本当に申し訳ありません。こちらの不手際で貴女を死なせてしまいました」


 えーと?どういうこと?死なせてしまった?私、死んだの?布団のなかで眠ってる間に?


「それって、どういう」


「はい。私の祀られている世界のとある国で勇者召喚の儀式が行われまして、その際に生じる余波による被害をなくすため、私はその余波を異空間へと逃がしたのですが、何故かその異空間が貴女の部屋と繋がってしまい、その余波に当てられた貴女は耐えきれず絶命してしまいました」


 なんというか、実感がわかない。

 死んだといっても、別に痛みも感じなかったし、気づいたらここにいたのだから。


「そっかぁ、死んじゃったのか私」


 でも、私はとくに悔いとか未練とかある訳じゃないし、むしろこれからどうなるのかが気になる。


 天国とか地獄とかってあるのだろうか?

 悪いことした覚えはないから、地獄行きはないはず。


「はい。申し訳ありません。ですが、私のせいで貴女を死なせてしまった訳ですから、貴女に転生の機会を与えようかと」


 転生?ってあれかな?よくファンタジー物の小説なんかで出てくる、記憶を持ったまま生まれ直すっていうやつだろうか?


「それは、女神様の世界に生まれ直して、新しい人生をはじめるっていうことですか?」


「はい。そうしていただけると幸いです。本来死ぬはずの無い命を輪廻の輪に還すのは、申し訳がたちません。私の不手際なら尚更」


 転生かぁ。う~ん、悪くないかも知れない。

 十数年しか生きてないのに死んでしまった訳だし、


「それじゃあ、転生をお願いしてもいいでしょうか」


「はい。ありがとうございます。本当に助かります。それと、本当に申し訳ありませんでした」


 そういって女神様は深く頭を下げてくる。


「女神様!頭を上げてください。ただの女子高生なんかに女神様が頭を下げるなんて」


「いえ、お気になさらず。これは大切なことですから(それに私は元々は人間ですし御大層な存在じゃありません)」


「女神様の誠意は分かりましたから、頭を上げてください。こっちが気にします(ただの人間の私なんか女神様にとったら道端の小石程度の存在だしね)」


 そもそも、誰かに頭を下げられたことなんて初めてだ。

 どちらかというと、私はいつも下げてる側の人間だし・・・


「感謝します」


「いえ」


 ようやく女神様が頭を上げてくれた。

 なんだか、どっと疲れたきがする。


 ごく平凡なことに定評がある私が1世界の女神様に頭を下げられるなんて、思いもしなかった。

 そもそも、私は神とか心霊とか目に見えないものは信じないたちの人だったから、考えることもなかったけれど。


「転生についてですが、貴女には転生のための設定があるので、それを行ってもらいます」


「設定ですか」


「はい。ですが、自由に決められる訳ではありません。本当に申し訳ないのですが、今までの転生者も同じようになさってますので」


「他にも転生者って、いるんですね」


「はい。転生には様々な理由が存在します。例として、霊魂が強く、死してなお自我を保ち続け現世をさまよっている方には転生をすすめたりしていますね」


 それって、幽霊?本当にいたのか・・・


「そうなんですか、ところで、その設定というのはどうやってするんですか?」


「設定といっても、ルーレットを回すだけです。それによって出たものに生まれ変わります。

 例として『人間種』、『獣人種』、『竜人種』、『森人種』、『精霊種』、『魔族種』その他など、種族の設定、所持品の設定、魔法やスキルの存在する世界ですので、ユニークスキルや、固有スキルの設定などです」


「つまり、生まれ変わる先と初期の所持品、とかをルーレットで決めるってことですよね?」


「そういうことです。なお、変更は出来ませんので、一発勝負の運次第になります」


「分かりました」


「では早速始めましょう。こちらのルーレットを回してください。そのあと、このダーツの矢を投げていただき、刺さった箇所に記入された内容に、設定され、すぐに転生を開始するようになっていますので」


「つまり、何に転生したかは、転生後のお楽しみ、と?」


「はい。そうなります」


  早速始めよう。


 ルーレットはどこからともなく現れて宙に浮かんでいる。


 私はルーレットを回転させて、そこから五メートルほど離れ、正面に立つ。


 深呼吸を繰り返し、落ち着いて矢を投げる。


 投げるといっても、ダーツなんてやったことは無いのでフォームなんて適当けど・・・


 ちなみに矢が当たらないことは無いそうだ。

 どんな適当に投げても軌道修正されてしっかり的に当たるらしい。


 これなら素人の私も安心というわけだ。


 矢が刺さり、ルーレットが停止する。


 何に転生するのか分からないけど、できれば『人間種』がいいなと思う。


 私の体は淡い光に包まれ、やがて意識を手放した。

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