事情の知らない人だかりと根源とのお見合い
名前って重要だなと思います。
涙で顔がぐしゃぐしゃになっていった。
嗚咽を漏らし、震えている。
こっちまで頭がジンジンとしそうだった。
周りでは野次馬が既に群がっていた。
野次馬は適当なもので憶測にの方が先に出回っていることが往々にしてある。
「麻子ちゃんが」「え!?好きなの?」 「あいつが?」「でもさ」ザワザワザワ…
野次馬にムカつくまえに、頭が事態の収束を考え始めた。
泣いている女の子をなだめる手段なんか知らない。知るはずもない。僕はそういった面倒なヒーローがやるような、かっこいいことは一切したことがない。というか僕が泣かせたんだから…
いや、でも …違う…謝るんだ!今すぐに!まずは!重い口を開き、声を出す。
「あ、あのっ…」
だがタイミングが悪いことにあの女がドアから出てきた。
「どうしたの?」と空気を読まずに、平然と、この空気に踏み込んだ。
その瞬間世界が凍るのを感じた。
空気の問題じゃない。
『あれ』がくるのだ。
慣れているのだろう。すぐさま校門の方角に涙を拭きつつ麻子は駆け出した。我を失った女の子の大群が、麻子を追いかけ始めた。
ん?
不思議なことに走り去る間際、僕は麻子の首からかけているお守りが光っているのが見えた。
小さい小瓶のお守りが、だ。ライトの類なのか蛍光塗料でも塗ってあるのかと考えた。
いや 、それよりも。
「お前はなんであいつを追っかけないんだ?」
名前を知らない女の子に向けて、僕は疑問を言葉にした。
需要のある名前が特に