だらしない制服と勿体ぶる早朝
小説の方が良さそうな感じだったので書き始めてみました。
「見てろよ麻子は面白いんだ」
その子は首をこっちに向けて 薄っすらと眉をひそめた。
峰麗麻子を茶化したこの発言は尾見諭史が友達を作るさいの第一声であった。
朝早くに学校へ行きドアを開けて中に入ろうとしたが、すでにクラスメートの1人が来ており少しの間躊躇した。
髪は長くサラサラで後ろ姿を見ると美人を想像するが
顔面には地味なメガネを地味につけこなしてる。だが肌はきめ細かく柔らかそうで、顔の下の方に位置する唇は控えめな印象だ。
諭史は彼女の名前を知らなかった 。
いや、彼女はクラスメートで間違いはない。席は窓際だ。確かに間違いはない。
ただ諭史がクラスメートの大半の名前を覚えていないだけなのだ。
異性とのマンツーマンは高二の諭史にとって居心地がいいものではなかった(単に諭史個人がそうなだけかもしれないが)し、クラスメートといえども知らない人物だとなおさらだ。
諭史は吃りぎみに言葉を吐いた。
「し、知らないかい?隣のクラスに峰麗麻子って陸上部の女子がいるだろ?あ、ほらあそこショートカットの…あ、今こっちをちらっと、あれ…朝から頑張るね、ホント」
名前を知らない女子が小さな口を開けた。
「ええ、知ってるわよ。もちろん。麻子ちゃん。可愛いし、上級生からも人気あるし、ファンクラブもあるみたいだし 嫉妬しちゃうわ」
本気で言っているのかそうじゃないのか、テンプレ麻子文句を淡々と述べた。
「僕は小学生の時から麻子を知っててね幼馴染?なんだよ。麻子は昔から走るのが好きでさ、よく外を走ってたな。結局、人がすることって延長線上にあるのか?な、三つ子の魂百まで…だっけ?産まれてから いや生まれる前も似たようなことをしてたはずだ。
ははは、じゃあ僕は今も河原で石拾いをしているのかもね はははははは!」
驚くほど急に舌がまわり始めた。
内気以上コミュ障未満のヒートアップはどうもタチが悪い。一方的に喋りだす。
「?…何なの雑談はあなたの頭の中でやってくれないかしら、私は本を読んでるのよ?特別に私をAIとして搭載してもいいから」
表情が変わらない上に淡々と喋るので、聴こえた声を 冗談を反芻していた。
どちらにしろ訳がわからない。
「ご、ごめん。話したら止まらなくなっちゃって…でね、麻子を見てろよ面白いんだホント」
「そうかしら…?面白いというか…楽しいというのなら理解できるけど…」
「見せてあげるよ『麻子』を君が見れるならだけど」
僕はニタリと表情筋を歪めた、今から話す内容はまたしてもただのテンプレートである。
「好きかい?麻子のこと、もちろん恋愛的な意味で!」