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3


面白い方‥‥

今まで一度も言われたことはなかった。というか、言われてはいけなかった。

清く正しいお嬢様像を歪めてしまったかもしれない、そう気づいたら背中が冷たくなった。

お父様に怒られてしまうわ‥‥


「申し訳ありません、体調が悪いのでしたよね。」


また心配そうな顔をする天野さんを見て、もしかして顔を歪めてしまったのかもしれないと思った。


「ええ‥‥校内に車を待たせていますので、失礼しますわ。」


これ以上ボロが出ないようにと思い、私は退散することにした。


「藤宮さま」


「差し出がましいお願いですが、宜しければまた私とお話してください」


微笑む彼女を見て、ぎこちないながらも頷いた。



***


車に戻り、あんな風に自然に笑いかけてもらったのは久しぶりだな、と思った。


徹底的なお嬢様教育の末、小学校に入るころには既にこの能面顔が出来上がっていた。

藤宮家とあわよくば近づこうと思う子達もいたが、この能面フェイスを不気味がり、最終的には近づかなくなった。

中学校、高校でも同じだった。


私は基本はいかいいえしか言わなかった。勿論必要なときにはそれ以上話したが。


こんな面白味のない子に彼、氣堂蓮は婚約が決まった日から一年間、飽きもせずに毎週必ず来てくれた。

結局は毎週が毎月になり、毎月が毎年になったが。

私は一度も彼の家に行ったことはない。

それでもまだ彼は家に遊びにきてくれていた。必ず誕生日の日に。


あの頃の笑顔は私が独り占めしてたのかな、

そんな馬鹿なことを考えて目頭があつくなった。

どうも思い出してから涙もろくなってしまったらしい。




車から降りると、少し焦った様子の使用人が出迎えてくれた。


自分が離れている間に何かあったのだろうか。


「お帰りなさいませ、お嬢様。」


「ええ‥‥。」


「応接室で氣堂蓮様がお待ちです。」


まだ心の準備が、そんなありきたりな言葉を思い出したが通用する相手でもないので重々しくうなずいた。





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