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34.[1年夏/第一戦] 朱雀速達戦

 現在時刻、14時15分。

 場所は京都駅の新幹線コンコース。


 『奈良市内にある朱雀門』というあまりにも少なすぎる情報。

 あたし達はそれを人に聞いたりせず、自力で見つけなきゃいけない。

 勿論ガイドブックの類なんて論外。


「平城宮跡は分かってるんだから、とにかく奈良に行ってみましょ? 京都に用は無いわ」

 闇雲に動いても仕方ない、けれどここにいるのは無意味。

 瑠璃の一声でようやく最初の一歩を踏み出す。

「よし、奈良に行くぞ」

「オーケー! で、どうやって行くの?」

「……」

 でも結局全然進展してないあたし達。



 目の前に『中央口』、右の奥には『中央乗換口』。

 すぐ真横の階段を下りれば『八条口』、そして後ろの改札は『東乗換口』。

「出口が4箇所か、コンコースから出ない方が良いぞ」

 村松くんの言うとおり、どの出口から出るべきなのか分からない。

 まずそれから考える必要があった。

「案内板を探すぞ」

 そう言い行動を開始しようとうする村松くん。

 それに同意して瑠璃も前へ足を進める。

 でも2人は何かが引っ掛かっていたかのようにがくっと身体を崩した。


「……お前は迷子の子供か?」

 瑠璃の左手を右手で、村松くんのデイバッグの端っこを左手で握り締めていたあたし。

 自慢じゃないけど、こんな人込みなんて経験した事はない。

「だ、だって! こんなとこに1人で放り出されたら、あたし絶対生きて帰れないもん!」

 だからはぐれないようにするのが精一杯。

「弥生さんって、もしかして美空仙里市から出たこと、ない?」

「……うん」

 溜息をつきながらもあたしの傍から離れようとしない2人は、やっぱり優しい心の持ち主よね。

 だからその優しさが余計に、あたしが足を引っ張ってるのを示してるようで、申し訳なくって。

「高坂さんは私が見てるわ」

 俯いていたあたしにそう声がかかり、あたしの左手――村松くんのデイバッグを握っていた――に樹里先輩の右手が重なった。

 拘束を解いたあたしの左手が樹里先輩の右手に握り締めれられ、それと同時に瑠璃の手があたしから離れた。

「村松くんも瑠璃も、動き回って調べたいでしょう? 村松くんには南川先生が付き添うわ。瑠璃は私達の傍からあまり離れないようにしなさい、いいわね?」

 てきぱきと指示を飛ばしていく樹里先輩と、憮然とした表情の瑠璃。

 けれど樹里先輩の見せる真顔には何も逆らえなかったのか、瑠璃は小さく頷いた。

 村松くんは「南川先生!」と叫んだ後、あたしの傍へデイバッグを捨て置き走り出す。

 そして指示通り瑠璃は近くの、村松くんは南川先生とコンコースの案内板を探し始めた。

 樹里先輩とお手手つないだあたしは中央口の改札前でお留守番。

 あたし、ホント子供じゃん……。



 南川先生と2人でどこかへ行ってしまった村松くんの姿は、ここからは見えない。

 真面目な村松くんのことだから、冷房が効いててもちょっと暑いコンコース内を走り回ってるに違いない。

 瑠璃は右側に見える中央乗換口辺り、ここから見える場所に居るから迷子になったりはしないはず。


 あたしは樹里先輩の手をじっと握り締めながら、中央口の奥に見える『近鉄京都駅』と書いた看板をぼんやりと見ていた。


(あれ? あの看板に書いてあるのって……)


「ごちゃごちゃしすぎてて、分かんねぇぞ」

 息を切らしながら村松くん達があたしと樹里先輩の元へ戻ってきた。

 あたしは都会慣れしてないから既に手段を見つけていたなら言わないでおこうと思ったけど、見つからなかったならいいよね。

「ねぇ、あの『近鉄』の看板に書いてある『奈良』ってそうじゃない?」

 中央口の奥に見える看板を指差しながら、あたしは村松くんに言った。

 と同時に、いつの間にか戻ってきた瑠璃が、

「村松くん。あの『JRの奈良線』ってのを使えば着くんじゃないかしら?」

 中央乗換口辺りを指差して、別の手段を発見していた。

「まじかよ……」

 村松くんが漏らすように呟く。リーダーの戸惑いは、即ちあたし達の戸惑い。

「どうしよ……」「どうしましょ」

 あたしと瑠璃も村松くん同様に戸惑いながら、またしても同じタイミングで呟いた。

 開始早々、あたし達は重要な選択に迫られるのだった。


 かすかに見える灰色の髪とお嬢様、そしてはっきり見えるメイド服の誰かさん。

 彼らが”中央口”の外を走り、そのまま近鉄の方向へ消えた。

 横を通り過ぎて中央”乗換口”からJR奈良線へ向かう仙里の制服は、見たことない顔だけど他のクラスの誰かなのは確か。

 あたし達が迷っている間にも他のクラスは行動を開始していた。

「っ! 俺たちもJRを使うぞ!」

 横を駆け抜けた仙里の制服を見て焦ったのか、村松くんがそう叫ぶ。

「待ってっ!」

 けれどあたしは村松くんを遮って、選ぶ。

「近鉄よ……近鉄で行く」

「高坂、例の直感か?」

 だって……。

「あたし、私鉄に乗ったことないのよ……だめ?」

「……お、おまえ……」

「行くわよ村松くん! 弥生さんのお願いよ!?」

 こうなった瑠璃は何を言っても無駄、ヒゲもそれを危惧してたくらいだし。

「はいはい……んじゃ行くぞ高坂。沢木先輩も行きましょう」

 諦め気味に言う村松くんだけど、顔は笑ってた。



 新幹線中央口の改札から真っ直ぐ進んだところにある近鉄京都駅。

 勿論ここでもあたしは立ち止まったわよ? 切符を二枚同時に入れるとか、聞いてなかったんだもん。

「高坂と沢木はここで待ってろ。南川先生、お願いします」

「ああ、5人だな」

 そう言い残して村松くんと南川先生は人の波に消えていった。

 しばらくして帰ってきた2人は、ちょっと服がヨレヨレになってて疲れた表情。

「なんだありゃ。購買のパン買う方がよっぽどマシだぞ」

「オレは京都の都会さを舐めていたらしいな」

 とにかく、切符を買うのも大変だったってのは2人の感想から分かった。

「お疲れ様、行きましょ!」

 そんな2人に瑠璃の気遣いは、ないわ。あるはずがない。だって瑠璃の最優先はあたしだもん。

「い、痛いから! 瑠璃引っ張っちゃダメだって!」

 どこにそんな力があるというのか、右手にキャリーバッグを引き、左手であたしを引き摺るように進む瑠璃は、パワフルを越えた怪力の表現が相応しい牽引力。

 そして、

「う……さっきと改札の形が違うじゃないのよ!」

 近鉄の改札がJRと違うってだけで、また一から手順を教えてもらわなきゃなんないあたしを、呆れて眺めてる村松くんと多分沢木姉であろう樹里先輩、そして南川先生。

 瑠璃に丁寧な説明を受けてるあたしはきっと、『はじめてのおつかい』に出てる子供みたいなんだと思うわ。

「……もう都会なんていやぁぁ!」

 あたしの叫びは京都駅の人込みに掻き消されていった。


     * * *


 あたし達はホームに止まっていた”急行・近鉄奈良”と表示された列車に乗り込み、京都駅を後にしていた。

 まぁ、その表示が出てた列車が2本あって、ちょっと揉めたんだけど。

 結局”急行”って書いてある方が速そうっていうあたしの意見が何故か採用されて、この列車に乗ってるわけよ。

 どういう理由で採用したのか村松くんに聞いたら「戦姫の直感を信じる」とか訳の分かんない事言うし、瑠璃は瑠璃で「弥生さんのいう事が全てよ!」だから聞いても無駄ね、恋するメロンだし。


 夏開催の第一戦だからちょっと気合を入れたくて、あたしは髪を縛ることにした。

 けど、自分で結うとどうもしっくりこなくて、危険性を感じつつも瑠璃に頼んだ。

「瑠璃って、髪結える?」

「自信はないわ……その黒髪に触れられるのは幸せだけど、逆にプレッシャーよ」

 遠慮気味に言う瑠璃だけど、心底残念そうな顔。そしてあたしは多分ホッとしてたと思う。

「無理だぞ」「オレもな」

 瑠璃の隣に立つ村松くんに聞こうとすると、何故か村松くんだけじゃなくて南川先生まで返事を返してきた。

 しかも2人ともあたしが振り返っただけで。仕事が早いと言うべきなんだろうか……先生がめんどくさそうなのだけは確かね。

「だよねー、どしよ……」

 気落ちして声にそれが出ちゃってたあたしに、最後の一人が救いの声を掛けてくれる。

「私が結うわ。瑠璃、いいでしょ?」

 何故か瑠璃に許可を得ながら。

「……お願い、姉さん」

 そして妹が許可を出す。

「やっぱり姉妹だったんだな……」

 分かっていたこととは言え、ようやく明確な解答を見つけられたあたしと村松くんは、視線を交わしながら小さく頷いた。

 けれどそれ以上の話は2人ともしてくれなかった。


 村松くんと2人であーでもないこーでもないと沢木姉妹のことを話している間にも、当の樹里先輩は丁寧にかつ素早く、あたしの髪を纏め全然違和感なく結い上げてくれていた。

 けれど……。

「ね、姉さん。やめてそれ、私が萌え死ぬから」

「あの、途中でつっこもうかどうか迷ったんですけど、このきつめのツーテールは流石にあたしも嫌です……」

「男性陣には好評みたいよ?」

 笑いながら南川先生と村松くんを見る樹里先輩。

「あ、いや、ギャップに驚いたんだ……他意はないぞ」

「高坂は磨けば光るんじゃないのか?」

 目を見開きながらあたしを見る2人の言葉は、ちょっと理解に苦しむ。だからあたしは南川先生に問い直した。

「それ、褒められてるんですよね?」

 そんなあたし達を冷静にたしなめる瑠璃こそが、あたしのツーテルに一番驚いてるわ。

「ね、ね姉さんもややや弥生さんも、車内で遊ぶのはめめめめ迷惑よ?」

 動揺を隠しきれてなかったもの。


「沢木先輩、高坂の髪はいつものでお願いします。その方がこいつも気合入りそうなんで」

「そう! この髪型じゃ気合が入んないわ!」

 あたしよりあたしを知ってる男、村松一太。やるわね……。

 というかあたしが単純なだけ? まぁ、あんま嫌な気はしないのは、零夜と村松くんが似てないようで似てるからかな。

 どっちもあたしを上手くコントロールしてるところなんかまさにそう。

「村松くん、沢木と沢木先輩じゃややこしいわ」

 ただ、似てるようで似てないとも思う。零夜と違う、村松くんの強制しないところはちょっと新鮮でもある。

 だから気付かないうちに誘導されてて、むしろ村松くんは零夜じゃなくて瑠璃と似てるわね。

「私の事は弥生さんと一緒で『瑠璃』って呼んでくれない?」

 瑠璃が気を許すところも村松くんと零夜が違うってのを証明してるのかも。

 少なくともあたしが気を許しても安心できる相手ってのは、瑠璃のそれが教えてくれる。

「……前向きに努力する」

 んでまた、どうでも良いところだけシャイボーイなのよねこの男。



 列車に揺られる事30分。

『次はー大和西大寺やまとさいだいじ、大和西大寺、近鉄百貨店前でございます』

 他の駅と比べ妙に車内放送が長い駅、大和西大寺に到着したあたし達。

 大和西大寺。如何にもな名前よね、残り3駅ってことはそろそろ奈良に入ったんだろうか。

「ねぇ。『大和』西大寺って事は奈良に入ったのかしら? 一度降りてみる?」

 あ、そっか。さすが瑠璃。

 でも今乗ってるのって奈良行きでだから、このまま乗っていれば奈良に行けるはず。

「車内放送じゃ乗り換えの案内が多かったぞ。この駅から色んなところに行けるんじゃないか?」

 なるほど、村松くんの言うことも分かる。

 奈良中を移動するならこの駅で降りた方が良さそうなわけね。

 瑠璃にしても村松くんにしても小さいことによく気付く、それに比べてあたしときたら。

「でも折角だしもう少しだけ乗ってたいなぁ……」

 降りるのが妙に名残惜しいとか思っちゃったりしてるんだけど。

「村松くん! 奈良駅まで行くわよ! 高坂さんがそう希望」

「分かった分かった。沢木も落ち着けって」

 未だに”沢木”と呼ぶ村松くんに瑠璃が一際大きな声を上げる

「瑠璃よ!」


(何このデジャヴ……)


 当たり前だけどここは車内、大勢の乗客があたし達に注目するのは言うまでもないこと。

「分かったから落ち着け……瑠璃」

 と言いつつ『瑠璃』が躊躇いがちだったシャイボーイは顔が真っ赤だった。

 そして、何故か南川先生に慰められていた。



 あたし達の乗った奈良行きの急行が、大和西大寺駅2番ホームに停車したのは京都駅を出て30分ほど過ぎた頃。

「うわっ、駅の大きさは美空仙里くらいなのに、電車多すぎっ!」

「お前は何見ても驚いてるな」

 向かい側の1番ホームには如何にも奈良な”橿原神宮前”行き急行が止まっていた。読み方は分かんない。

 線路を挟んであたし達の列車の反対隣、3番とか4番ホームの方は難波だの京都だのに行くらしい列車の案内放送がひっきりなしに流れている。

 村松くんの言ったとおり、ここは色んな場所へ向かえる総合駅らしい。

 あたし達3人と樹里先輩そして南川先生は、空き始めた車内を眺め溜息をつきながらロングシートに5人並んで腰掛けた。

 30分とは言えずっと立ちっぱなしだったから、席に座れてホッとしたのよ。

「でも……みんな降りてったね」

 この大和西大寺に到着したと同時に、車内の乗客が一気に入れ替わった気がする。

 家族連れやスーツの人が多かった車内だったのに、この駅に到着してジャージや学生服の中高生やお年寄りの人たちが大半を占める状態に様変わりしていた。

「少し不安ね」

 駅に到着してからも出発する気配のない列車が「降りるならまだ間に合うよ」とでも言ってそうなくらい、あたし達を不安にさせる。

 この駅で降りた方が良いのか、このままならまで行くべきか、それを迫っているようで。

「俺たちも降りるか? でも奈良まで行くって決めたんだ、じたばたせずに行こうぜ」

 そんな迷いを断ち切ったのは村松くん。

「そうね。手探りなんだもの、勢いに任せちゃいましょ。折角座れたんだし」

 そして決定付けたのは瑠璃。


 ほどなくして発車のベルが鳴り、奈良行きの急行が西大寺駅を出発した。

 後ろへと流れていくホームに、彼女たちがいた。

「弥生さん、あれって……お嬢様じゃないかしら」

 西大寺駅のホームに一際目立つメイド服の女性とお嬢様、そしてその横に同じ制服を着た女子。

 とくれば当然あの灰色も、いた。

「5組は近鉄を使って、ここで降りたってことか」

 あたし達の気付かないうちに、運命が少しずつ決まりはじめていたのかもしれない。

 けれど泣き喚いてもじたばたしても、どうせ列車は出てしまったのだから降りることは出来ない。

「次はー……新大宮しんおおみや、新大宮」

「新大宮と奈良で二駅しかないし、戻ってくるのも楽だよ。だからあれは見なかったことにしよ」

 あたしは2人に言いながら外の景色に目を向けなおした。

 流れる景色にお嬢様と灰色を溶かして消し去るように。

 っていうかそれ以前の話で、関係者だと思われたくないからメイド服の今宮さんを自分の記憶から完全に抹消したかっただけなんだけど。


 と、突然景色が緑の芝一色に変わった。

「あれ? 一気に開けたよ?」

「だだっ広さは東美空に通じる物があるぞ……」

 奥のほうは住居や商店なども見えなくはないけれど、手前側は不自然な位唐突に、そう、だだっ広い芝の空き地だけが広がっていた。

「これが平城宮跡じゃないかしら。思ったよりも何もないところなのね」

 なるほどねぇ……でも「これが1300周年記念の平城京跡地」と言われても、やっぱりただの原っぱなんだけど。

 そんな原っぱでボール遊びをしている子供たちや、犬を散歩させている中年の男性。

 とても歴史的な場所だとは思えなくて呆れ半分に景色を眺めていたあたしを、突然現実が引き戻す。


「6組はあたし達や5組より一足お先に、ここまで来てたってわけね」

 夏の日差しを一杯に浴びて、より黄金色に輝く橘セレスティアの髪が車窓から見える平城宮跡にたなびいていた。

 車窓からでも一際目を引く亜麻色のそよ風。

 彼女がその後ろに3人の女子生徒と引率の先生だろうジャージの大人を引き連れ、平城宮跡を奈良方面へと小走りに駆けていた。

「あたし達……降りるべきだった?」

「仕方ないわ。けど近鉄って選択肢は間違ってなかったみたいだもの、気にしない方がいいわ」

 ちょっと落ち込みそうだったあたしに、瑠璃が優しく慰めながら声を掛けてくれた。

「いや、むしろ近鉄を選んだ戦姫の直感に俺は感謝したい位だぞ。夏になっても鈍ってなかったらしいな」

 そして後ろの窓を一際真剣な表情で、口元に薄っすらと笑いを浮かべながら村松くんはあたしに言った。


「高坂、沢木、後ろだ。早く後ろの景色を見ろ」

 村松くんはそう言い、じっと背後の景色を睨み続けている。

 得も言えぬ迫力がその眼に溢れてて、あたし達も慌てて後ろの窓へと振り返る。


 後ろもやっぱりだだっ広い原っぱ、平城宮跡だった。

 ただ、少し違ったのは……。


 見覚えのある赤い大きな建造物がポツンと、けれど存在感を大いに溢れ返させながら、広場の真ん中に建っていたのだ。


 そしてそれは、馬鹿なあたしにでも分かる、紛れもないそれだった。

 突然の後半戦が始まる。


「え、ちょちょちょっと! 朱雀門じゃん!」

 あたしの驚きに反応したように、瑠璃が手元のポーチから朱雀門の写真を取り出し、そして見比べたあと小さく頷く。

 間違いない、あれが朱雀門。

「だろ? さすが戦姫の直感、今回もビンゴだぞ!」

 立ち上がっていた村松くんは既にデイバッグを背負っていて、あたしの3ウェイバッグを網棚から降ろしてくれている。

 それを受け取り背負うあたしに、今度は瑠璃が言う。

「村松くん、弥生さん! 次で降りるわよ!」

 あたし達のドタバタに無言で反応する樹里先輩と南川先生も、既に荷物を持って立ち上がっている。

 っていうかこの2人、荷物が異常に少ないんだけど……。



 1分もしないうちに車内放送が到着を告げた。


『新大宮、新大宮です。出口は左側でございます』


 放送が流れたと同時に、あたし達は左側の扉へと駆け寄る。


 瑠璃が引くキャリーバッグの音が、何故か酷く耳に残った。


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