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とある者の手記
生きたい理由があった。それは大したことではない。他人からすれば凄くくだらない理由だ。
だが、当時のわたしにはなくてはならない理由だった。
そう、それの終焉を見ずに、自身を終わらせることがわたしには出来なかった。それからのわたしはそれを生きる理由にした。蒐集と言っても過言ではなく、執着となった。そして終焉を見ずに終わるのは心残りとなる。そう生きる言い訳にした。
ただ、終わらせる勇気、根性が無かっただけの生き汚いだけだった。
しかし、どんな物語にも終焉は訪れる。一つ、また一つと心残りは消滅していき、生きる理由も無くなっていった。
心の渇きに抗う様に求めたものも、求める気持ちも希薄になった。
だから、もう構わないだろう。さぁ、準備を始めようか、わたしの終わりの始まりを。