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必勝の聖眼の神殺しと戦女神  作者: 暁 白花
ショートストーリー
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理由

 死にたいと思うのは、今が苦しいからだと思う――そう言った私対して総司は同意しつつも、それだけじゃない――と意見を出した。


 どういうことですか?――と千尋が問う。


 死にたいという気持ち――精神状態はマイナスな状態だ。


 そんなの当たり前じゃない――と私と千尋、そして同じ班で同じテーマを意見を出し合って纏めて発表するメンバーの有馬紗奈が呆れたような顔をする。氷鏡翔真、妻夫木一誠がくだらない意見しか言えないなら黙ってろという。


 総司はそれをまるっと無視して続ける。


 幾ら理解を示して寄り添って貰えて、共感して貰えたとしても、聞き手が共感しても、寄り添い理解をしたところでそれは一時的にしか効果が無いんだ。


 独りになった時、再び死にたいという気持ちになってくるんだ。たとえ、聞き手が両親でも友達でも恋人、夫婦、親子であってもだ。医者なら尚更、診察以外では繋がりが薄い―― と、総司は言う。


 何故ですか? 力に、支えになれないのですか?――と千尋。


 マイナス要素を取り除こうとして、そのマイナス要素を取り除けば解決する、と思っているんだろうね――と総司が答える。


 そんな事はない。誠心誠意寄り添えば解ってくれるはずだ――と氷鏡翔真が総司に噛み付く。


 お前みたいに薄情な奴の言葉なんかじゃ当然だろう。相手を思いやることが出来るずっ友の熱いこころが救うんだぜ!!――と妻夫木一誠。


 単純で良いなお前たちは――と総司がフッと鼻で笑い薄い笑みを浮かべる。


 あんたには人の痛みが分かんないの!!――と有馬紗奈。


 人が他人を真に理解しきると言うことはない。言葉というのは取り零しが大きいし、本音を隠す、隠されてはそもそも伝わらない。それが嘘ならば尚更に。もし、他人を完全に理解出来るという人がいれば傲慢に過ぎる――と総司は冷たく有馬紗奈ヘ言葉を返す。


 じゃあ、何が人に死を選ばせ、または止めさせるの?――と私が問えば――


 未来を想い描けるか否か。好きなもの、楽しいもの、趣味でも美味しいものでも何でも良いけれど、それが無いと今の絶望が続くだけだと、余計に苦しくて悲しくて死にたくなる。逆に好きなものがあれば踏み止まれる。


 ただ、それも延命治療かもしれないけれど、それさえも失った時の虚無感は想像に難くない――と総司は視線を私たちから外す。


 仕事のあとの楽しみ、とか頑張った自分へのご褒美みたいなものかな、と私と千尋は小声で話す。

 だけど、ふとした瞬間に、それが失われたらストレスや喪失感、虚しさで生きる気力が失われて――


 自然なんだよ。違和感なんて無い。おかしな行動なんてしない。だから、誰も気付けない。

 おかしな言動をしたり、キツくなっている時は現状をどうにかしたいと抗ってたり、不満だったり、やけくそ気味だったりする時だったり、破滅衝動、殺意を抱いたり、破壊衝動だったり、複雑なんだよ――と、たいてい、その状態に周りが付き合い切れなくなって離れていく。


 だから気付けない。後からあの時は少しおかしかったと、思い出す。相談してくれれば、乗っていれば、気付いてあげられていれば、救えたかもしれない、と。


 引き籠もりは先ず周囲が疲れる。引き籠もりの理論について行けなくなる。孤独になるけれど、まぁ楽しいことがあれば、それがあれば孤独なんて寂しくない。だけど、そんなのは十代、二十代が限界だ。同い年の子が結婚して子供が出来て、その子供が小学高学年になった時、歳を取って光陰矢の如し、若くなくなって無聊を慰めていた趣味も色褪せて、部屋に積み重なったそれらが自分の死骸のように感じて虚しくなる、と、総司は盛大に溜息を吐く。


 何でそんな具体的な例え話が出来るのよ――と訝しむ。


 まぁ、色々ね。街を歩いてれば視えるものがあるんだよ――とよく分からいことをいう。


 時間が来て纏めたものを当たり障りなく発表した。


 このテーマで唯一収獲があったとすれば、総司が私を遊びや食べ歩きに連れ出したりした理由が判明したということだった。


 


 


 

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