何も知らなかった頃は
ヒソヒソと陰口が聞こえてくる。
「言いたい奴には好きに言わせてあげれば良いんだよ。それで何かが変わるわけでも、結果が変わるわけでもないんだからさ」
とは、総司は言うけれど悔しいじゃない。
「まぁ、実際何もしてないしね。それに、頭が良いのと勉強が出来るっていうのはイコールじゃいと思うんだよね。勉強が出来るっていうのは教科書、参考書に載っていることを、テストとかの問題に合わせて答えを出しているだけ。答えがあるんだから楽だよ。それ以外何も考えなくても良いし、何ものにも配慮も考慮も気遣いも空気も読まなくて良いからさ」
うん。
「だけど、頭が良いっていうのは自分自身にとって何が良くて悪いことかを判断できて、誰かにとって自分の言動が人種差別や見下したり、貶めたり、辱めたりといった傷付けるようなことにならないか、想像出来るかどうか、じゃないかな」
勉強が出来て、ある分野での知識があり、時代の流れを読める時代の寵児でも、それが無ければ頭の悪い結果に墜ちるという。
そういう人は自分の好きに出来る狭い世界では強いけれど、大海に出ると途端に馬鹿になると続けた。
「オタクだろうが、昼行灯だろうが別にいいさ。誰かが真っ暗闇に立たされてしまった時に照らすことが出来ればそれで良いよ」
うん。
――私は優しい光に照らされて救われたわよ。
「でも、まぁ、傷付けるつもりも、そんな意図もないのに、それを矢鱈と問題にして炎上させようとする連中ってのは結構な数で存在するし、またそれが厄介な連中だから尚更に質が悪いんだけどね」
歴史問題や汎用人型決戦兵器のアニメとかね。
「あれはねぇ。厄介だ。俺はどちらかというと戦闘飛行機が変形するアニメ派だから、そっちの戦士系兵器はニワカだよ。機体がカッコイイとかキャラが良いとかで作ったり、視たりだから」
そう言えば総司って漫画やラノベは多いけどゲームは割と少ないけど、他は造形物がやたらと多い。モデルガンやフィギュア、戦艦、戦闘機、車、レースして遊べる四駆プラモデル、人型兵器、変形戦闘機プラモデルとか、ミニカーに競技用のヨーヨーとかも――
ねえ、総司って玩具とか作ったりデザインする人になりたい、とか?
「あ~……うん」
総司が気恥かしそうに照れた。
だけど、不意に遠く空を見上げて、懐かしそうに目を細めた。
その表情は何故か私には寂しそうにも、諦めてしまったかのように見えた。