17話 強くてニューゲーム?
森の道を歩く事暫し。漸く本城に辿り着いた総司たちは、その壮麗さに心奪われる。
セフィーリアが手を挙げ跳ね橋を下ろす様に命じる。
橋が下り、セフィーリアを先頭に城門を潜る。
「スゲーな、おいっ!!」
「ああ、俺たちマジで勇者なんだな」
「凄い綺麗」
「素敵ですね」
その壮観さに声を上げる一誠、翔真、紗奈、千尋。
「セフィーリア。あれは?」
「はい。彼方は此の世界エストレーヤを創造した八柱の女神と、そして女神を守護するのが聖獣なのです」
詩音の問い掛けにセフィーリアが答える。
「此の魔導大国アークディーネは女神信仰の中心で、先程、俺たちが出て来た場所が信仰の教会の総本山と言う事か」
「は、はい。ツカサ様の御明察通りです!」
セフィーリアに花壇に咲く花や花言葉を聞きながら、謁見の間に辿り着き、セフィーリアが見張り兵に誘導されその扉にセフィーリアが触れると、扉の溝に光が流れガチャ、と音がし、セフィーリアが扉を開く。
「セフィーリア・アルフィード・アークディーネ、勇者召喚の儀より、勇者様の皆様をお連れ致しました」
「ウム。セフィーリアよ、入るがよい」
セフィーリアの声に謁見の間の奥より応えがある。
「では、皆様、参りましょう」
セフィーリアに続き、勇者として召喚された翔真たちに続き、総司と詩音が入り、最後にクレア、騎士のリディアとザッシュが入ると、扉が閉じられた。
総司はサッと周囲に眼を向け、謁見の間の様子を観察する。
(……。まるで見せ物を始められる様に都合良く中央を空けて席で囲っているな)
総司は詩音に身を寄せる。
「詩音。荒事になる」
「どう言う事?」
「おそらく、勇者としての能力の見せ場になる。退路は断たれた様だからね」
「私たちは勇者の腕試しの人質にされたって事!?」
「正しくは詩音、南條、有馬の三人が、だ。氷鏡たちの素の状態での能力を見極める為だろうね」
「それは、彼等だけでしょ?」
「いや、俺も召喚されてるからな」
詩音は不安気に総司を見上げる。
「勇者一味になるつもりは無いし王宮に居るつもりも無い。けれど、街で暮らすとしてもギルドで仕事を探すにしても外に出ないと言う事は無いだろうから戦わないといけなくなる時が来るだろうね。それを理由にされる」
総司たちが話ている間にも、国王とセフィーリア、そして翔真たちの話が進んでいく。
総司たちが、それなりに話を聞き、それなりに聞き流して得た情報をまとめると――
国王の名は、アマディウス・アルフィード・アークディーネ。
王妃の名は、フォルティーヌ・アルフィード・アークディーネ。
第一王女、アンジェリカ。第二王女は不在。この時、国王、王妃共に固く眼を閉じ、第一王女は、複雑そうな顔をし、セフィーリアは寂しそうに顔を俯かせる。
第一王子、第二王子はそれぞれ、リシュアン、アレクシと、名乗っていた。
「それにしても、勇者を召喚したのが、自分達で仕掛けた戦に大敗した尻拭いで、魔族を率いる魔神を斃してくれと言うのも酷い話だな。喉元過ぎた熱さも忘れて……か」
「人族が滅びかけるのも分かるわね。ね、こういった展開、総司に借りた小説にもあるじゃない? 義理と人情で引き受けてみたら?」
「義理なんて無い。異世界に強制召喚された上、戦をしろと言う。それに、此処にいる奴等が、人情なんて必要にしている顔か?」
「……確かに珍獣扱いと見下しね」
総司と詩音が話していると、国王アマディウスから声が掛けられた。
「して、其方等は何と申すか教えて貰えぬか?」
どうやら翔真 たちは名乗り終えたらしい。
国王が話している時に話を聞き流すなど不敬罪にあたるだろう。その証拠に周りの貴族や老臣、宰相が非難顔をしている。
「チバ……、此方風に言うなら、ツカサ・チバ」
「ウタネ・セツジョウ」
「ウム、ツカサにウタネと申すか。其方達の潜在能力を教えてほしい」
「ポテンシア?」
翔真の質問にセフィーリアが身振り手振りで示す。
「潜在能力の確認は、心の中で【潜在能力】と唱え、このように人差し指と中指を揃えて立てて横に振るのです」
セフィーリアの言う通りに、総司と詩音、翔真たちが指を振る。
「どうですか?」
セフィーリアに逸早くこたえたのは、翔真と一誠だった。
「あっ! ありましたっ!! 俺は【光輝の勇者】ってあります」
謁見の間がざわつく。
「ほ、本当ですか!? 翔真さま」
「あ、ああ。セフィーリア様。珍しいのですか?」
「はい。光属性の魔法を扱える者は居ないのです」
「セフィーリア様。俺には【業火の闘士】とあれるぜ」
「と、闘士の称号に業火……ですか!! 全てを焼き尽くす御力です」
「やるな、さすが一誠! 紗奈と千尋はどうだ!」
「あたしは【至高の魔法士】ってある」
最早謁見の間に言葉がない。
「さ、紗奈様は四属性全ての魔法を統べる者。誰にも至れない天の領域……」
そして弥が上にも期待が高まり、千尋に注がれる。
「私は【護聖の賢者】です」
「ち、千尋様の能力は治癒、支援魔法を天の領域に迄至らしめる聖女の御力……」
謁見の間が歓喜に爆発する。
「お……、おぉぉおおっ!! まさに! まさにっ異世界よりの御使い!!」
そんな中、アマディウスが総司たちに幾分冷静に問い掛けた。
「して、其方等はどうか」
「無い……。いや、表示が潰れてる」
「……ええ。私も同じよ」
潰れて解らない。解らないなら無いのも同然。無い袖は振れない。
セフィーリアと国王は絶句し、セフィーリアは沈痛な顔をする。
「セ、セフィーリアよ、どうなっておるのだ?」
「は、はい。恐らくは、……その…………」
言い難そうに顔を伏せ、意を決した様に顔を上げるが、声が出せない。
何せ、潜在能力が示されないのは、生まれ落ちたばかりの赤子同然だからだ。
「お、お父様。一応、魔力反応水晶で魔力測定をしてみては如何がでしょうか?」
「そ、そうだな。セフィーリア」
「では、クレア」
「は、只今お持ち致します」
アマディウスもセフィーリアの沈黙の意味に思い至ったのだろう。そして、クレアは一礼をし、謁見の間を退出する。
その間、国王と王妃の質問に翔真達が答えていた。
やはり、仕切っていたのは翔真と一誠の二人であり、彼等は完全に浮かれている。
紗奈と千尋は謙虚に答えている。
自国はどの様な国か? どの様な生活をしていたのか等々、そして翔真たちの答えに驚く。
「魔法も無く、魔物もいないとは……。その上、何十年も戦も無い平和な治世とは……」
「科学とは、なんなのですか?」と興味津々だ。
第一王子は治世に興味を持ち、第二王子はスポーツに興味を持っていた。セフィーリアは、千尋と紗奈との話に花を咲かせていた。
そんな中、第一王女だけが静かに総司と詩音を興味深く見ていた。
(平和……か。そうであれば、犯罪等起きないし、いじめなんて無い。治世が優れているならば、孤独死もホームレスも存在しないんだがね。世界に目を向ければ、争いは絶えない。それに、魔物は人の心に住み着き、転べば鬼と成る。科学も時として、使い方によっては、魔物より恐ろしいモノに成る)
総司はそんな事を考え、チラリと詩音を伺えばやはり、学校生活の話で顔を俯かせ、髪で顔を隠す詩音の顔が曇るのを総司は見た。




