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Story Zero1 独白 【挿し絵あり】

イラストは雪城 詩音です。

 挿絵(By みてみん)


 ―好奇心、猫をも殺す―

 幼い頃の俺がそんな言葉を知ったのは、独り(ボッチ)になって、それから随分と後になってからだ。


 直ぐに解らない事や不思議な事があると『なんで』『どうして』……と知りたがり、両親や従姉に質問を繰り返す。

 解らない事が解れば嬉しいし、楽しいけれど何時も感じていた事がある。


 幼いながらに考えていた。それは『本当に正しいのか?』『本当に存在するのか?』と――


 実物を視た事が無かったり、実際に行った事が無い場所や国、地図に描かれている国々やTV番組の旅や世界の絶景を紹介し、映し出された世界がまるで異世界の様に感じた。


 こう言ってしまえば偏屈で内向的なインドア派に聞こえるかもしれないが、身体を動かすのも好きだった。

 速く走れれば風を切って走るのが気持ちいいし、側転と言ったような運動も同い年や少し年上の子供達よりも出来ていた。


 その一方でイラストを描くのも好きだった。

 これも先の話と同じで同じ組の子供と絵の構図でもめたことがある。

 その時は《遠近法》何て言う言葉を知らなかったから、絵の構図で遠近感を出さ無かった奴とかなりもめた覚えがある。


 理解され無いなら独りが良い、誰にも邪魔されたく無い。

 そうして集中し過ぎて時間を忘れ、気が付けば周りには誰も見当たらずに独りになる。

 それがが苦ではなかった。


 ただ、それでは人間社会という群れの中では生きられないという事には気付けなかった。


 “出る杭は打たれる”と言うが、打たれるどころか折れて壊れるまで痛めつけられる。出来なければ最初から切り捨てられてしまう。

 どちらも変わらない。壊されてから使い物にならなくなるか、最初から使い物にならないかの違いでしかない。

 出来る事と出来ない事の差あった。


 “独りでも楽しめる世界が在るのなら独りでいい”と、そんな風に決めていた俺が雪城 詩音(ゆきしろ しおん)と出逢ったのは小学三年の時だ。



 五月という中途半端な時期に引っ越した先での挨拶回りで、隣に住んでいる家族に同い年の女の子が居る、と予め母さんから聞かされて知っていた。


 妹の涼風すずかが二つ歳上のお姉さんと仲良く為るためのクッキーを焼く、と言うので一緒に作った。


 雪城家に挨拶に行き、母さんがインターホンを鳴らして暫くすると玄関の扉が開き、中から雪城 ひじりかなで 夫妻が出て来て母さんと挨拶を交わす。


 母さん達の挨拶が終わり、おば…… 奏さん(この時、母さんと奏さんの静かなる微笑みによる圧力が凄まじかった)が――


「詩音、いらっしゃい」


 と奥に呼び掛ける。


「はーい」


 と、いらえがあり、女の子が出てくる。


 出てきたのは、ふわりとしたショートボブの女の子だ。


「どうぞ」


 と、涼風と二人声を揃えて女の子に手渡す。


 母さんが女の子に「クッキーなの」と微笑んだ。


「ありがとう。同じ女の子同士仲良くしてね」


 と、女の子が言ってきた。


 ん? 涼風にいったんだよね? ね? …………まさか!! オレ女の子に見間違えられてる!?


 確かに良く女の子に間違われる……。


 この時の俺は苦虫を噛み潰した様な顔になっていたと思う……。


「………………じゃない」


「え? なに?」


 女の子が聞き返して来る。


「オレは女子じゃないっ! オレは、男だっ!!」


「「「!!」」」


「ええぇぇっ!!」


 女の子に驚き叫ばれた……。しかも、おじさんと、おば…… 奏さんにも見間違われた!?


 ボーイッシュな女の子に見間違えたらしい……。


「総司……。千羽 総司……です」


 俺は憮然とし、自己紹介をする。


「千羽 真弓美まゆみです」


「千羽 涼風です」


 続いて母さんと涼風が自己紹介をした。


「雪城 詩音です。宜しくお願いします」


 女の子―― 改め詩音がお辞儀をしてから、涼風に「涼風ちゃん宜しくね」と、手を差し出す。


「はい、詩音さん」


 と、涼風が元気良く、詩音と握手をする。


「宜しくお願いします。真弓美さん」


「宜しくね。詩音ちゃん」


 二人がにこやかに握手をする。


 母さんに「ほら」と苦笑され、背中を押される。


「よろしく……」


「……よろしく」


 詩音の出逢いは、こんな風に微妙だった。


 詩音には幼馴染みが居るらしく、紹介をされたが、オレは詩音達とは違うクラスなのであまり接点も無い。

 詩音が彼等と居る時は声を掛けて挨拶程度で済ませていた。


 氷鏡 翔真(ひかがみ しょうま)が、詩音と話すとスッゴい睨んでくるんだ。


 誰が見てもバレバレだ……。そんな氷鏡 翔真を有馬 紗奈(ありま さな)が見ている事に気が付いてない。


 睨んでくる氷鏡を見て、南條 千尋(なんじょう ちひろ)が手を合わせ、ジェスチャーで謝罪してくる。


 将来、彼女は氷鏡のフォローで気苦労してそうだ……。


 オレは苦笑で応える。


 うぇっ!? 妻夫木つまぶき 一誠いっせいにも睨まれた。


 お前もか……、と思っていると、南條にペシッ、と頭を叩かれていた。


 うん、南條は此のメンバーの苦労人だ。



 それから2年、五年になった俺達は同じクラスになった。


 この頃から詩音が虐めにあう様になっていた。


 理由は、詩音の物語や詩を書く事だった……。

 それを黒板に張り出された。


 それを男子が主にからかい、女子のその理由は表向きで、裏の理由は氷鏡との距離が近い事だった。


 詩音は俺に隠したがっていた。


 俺も虐め側についてしまうのではないか、と心配していたみたいだ。


 幼馴染みの南條が側に居ればクラスでは大丈夫だろうと陰での事を気にする事にした。


 なんか、詩音の物語をバカにするのがムカついてくる。

 それを恥じる詩音が許せなくて、肯定したくて黒板から引ったくる様に回収。

 一読して「凄いな!」と言って持ち帰りイラストを描き詩音に手渡す。


 詩音は驚いていた顔が印象的だった。

 嗤いの種が無くなる事に文句を言う奴も居たが、そんな連中の楽しみなんて知ったことでは無い。


 その後も苛めは無くなる事も無く、何度かは阻止出来たが何度かは手後れだった。


 詩音は氷鏡達に相談する事を諦めて止めていた。


 氷鏡の「皆、本当は良い娘達だよ! ちょっとしたイタズラだったんだよ。詩音も、もっと仲良くなろうとしなきゃね!」


 なんて爽やかに笑っていた。



 六年生になり、二年連続で同じクラス……。


 相変わらず詩音の虐めは続いていて、陰でのフォローがバレた……。


 詩音の隠された鞄の中身を探していた時にバレた……。


 それからは隠す必要もなく動いていたが、探して見付けて詩音に渡す、それが虐めをする連中には面白く無かったんだろう。


 TVのバラエティー番組でタレントがやっている面白い事を本気で注意する……。

 その場が白ける、空気が読めないといった感じだ。


 その頃には詩音は氷鏡達と距離を取っていた。


 俺まで悪口を言われ出したのを気にして「よけいな事をするなっ!!」と詩音は言った。


(これは独りにするとちょっとヤバいな……)


 と、考えていると―― その数日後、何らかの簡単な失敗で詩音が男子達に囲まれ、生け贄羊(スケープ ゴート)にされ、背中を蹴られていた。


 氷鏡は「おいおい、何やってるんだよ。ちょっとした失敗だろ?止めろよ。ほら詩音も反省してる(・・・・・)んだしさ、詩音ももう一回謝ってさ……」



  「詩音の涙に気付けよバカが!! 救い出す気がないなら引っ込んでろっ!!」


 

 放課後……。


 俺は今の状況に一つ盛大に溜め息を吐く。


 話はもう何十分も平行線を辿っている。

 正面には、厚化粧・きつめの香水・ブランド物の衣装の見栄張り三点セットの三人の保護者。


 相手側は、顔を真っ赤にしてヒートアップする一方で、それに対して同じ様に呼び出しを受けたオレの母さんは冷静だ。


 学校側は板挟み。


 むしろ問題にしたくないのか向こう側の立場のようで何時までも謝らない俺が悪いらしい。

 けれど先に謝る気は無い。話の筋を通すなら先にあちら側が謝罪すべきだ。


 そろそろ、ウンザリしてきたので俺は最終手段に出る事にする。


 オレが此処にいる理由の出来事を録画した動画だ。


 そこには教室での事の他に、陰で行われた事が撮されてる。

 俺はそれを止めただけに過ぎない。


 止めてもやめない場合を考え、こうなった時の為に録画していた。


 あぁ、ほら学校側は青褪め、保護者側は羞恥に染まる。

 

 苛めを止めさせるのに俺がした事は相手を驚かす為に机を蹴り飛ばし、その後に止めようとした俺に掴み掛かって来た奴の腕を捻り上げ、それを見た仲間が逆ギレして殴り掛かって来たのを巧く避けただけで、勢い余って同士討ちとなって倒れて怪我をしたのは相手の自業自得だ。


 学校側は慌てふためく。何せ事を大きくしようと騒ぎたてたのは相手側であり、事を大きくした結果がコレだ。


 この動画が出されて問題になるのは虐めた側とそれを放置していたクラス担任と学校側だ。

 虐めに加担したクラス全体だ。


 学校側は掌を返して此方の御機嫌伺い。相手側をたしなめに掛かる。


『事勿れ主義』


 慌てた教師たちが何かを言ってきていたが、俺と母さんは醒めて校長室を出る。




 夕闇迫る学校の帰り道――

 

「どうしてあんな方法を執ったの?」と母さんに聞かれ「反論を封じる為に」と応えてから説明する。


 ニュースで耳にする“虐めを知っていた”と言う後になってから出てくる証言。

 疑問に思うことは何故動画を撮り、学校側に言わないのか? 虐めは既に恐喝や、恫喝、傷害罪、警察沙汰の領域だ。

 だが、“それでは手遅れ”になる。

 

 人間社会とは集団社会で、組織の不利益にる情報提出は倫理的に正しくても、集団ルールでは間違いだと言う事。


 だから、アノ方法を執ったのだと説明した俺に母さんは、案の定難しい顔をした。



 言葉を尽くし過ぎても、関わり過ぎても、踏み込み過ぎだと、ウザいと、余計なお世話と言われて偽善者と言われる。

 相手の真意を先読みし、図星を射し、それが例え正論だとしても的を射すぎて疎まれ、群れから弾き出されてしまう。

  

 明瞭、明確、明白なんてものは何処へ行ったのやら……。

 本物に拘る癖に“清く正しく正直に”と言うルールに従っても、罰せられてしまう。


 それに、それを教え口にし、手本となるべき大人がそのルールを無視して平気な顔で嘘をつきルールを侵す。

 そしてルールを破った者が我が物顔で組織の上に立つ。


 秩序は無秩序となり、常識は非常識になって、それらが手を結び、やがて負の螺旋となり、そこから抜け出せなくなる。

 そして、それが暗黙のルールと成って恒常化する。


 常識と秩序は変わる。当然中には変わらなければならない常識や秩序はある。

 だけど、道徳心は―― 変わったり、失ってしまってはいけない。それらが上手く結び付くのは本当に難しい。

 それとは反対に非常識と無秩序は簡単に結び付き、不条理が条理となる。それを容認する事が集団社会の正しいルールで、”大人になる”と言うことだろうか…………?



 そんな俺の考え方で母さんに仕事を早退させ、迷惑掛けた事を謝る。


「確かにそれは集団社会では生き難い生き方だけれど、総司、母さんは貴方が見て見ぬ振りをする方を叱っていたわ」


 そう言って母さんはニカッと笑い、小学六年にもなった俺の頭を「いいこ、いいこ」なんて言いながら少し乱暴に撫でた。



 夏休みに入った。

 せっかくの夏休みに、どんより気分は勿体無い。


 だから俺は詩音を連れ回した。

 はしゃぎ、騒げるサバゲーに……。


 その中でも狙撃に興味を持ったようでした。 

 そして、なんちゃって【対物狙撃ライフル ウルティマラティオ へカートⅡ】を製作した。

 名前が格好いいから、らしい……。



    それが俺、千羽 総司の5年前の記憶だ。


 ――そして現在いまの俺はと言うと……。


 召喚された異世界で、眼下に広がる戦場の推移と猛り声を意識しつつ、過去を思い出していたりする。


 異世界に一緒に召喚された幼馴染みで狙撃体勢を取る少女を見る


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