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19.かわいいあたし、綺羅サンゴを探す1

2回目



 あたしたちは村を出て海底を突き進む。

 ヒトデを食ったのでスマッシュパンチで消し飛ばされた左のハサミはもう元通りだ。

 ただ、もう今日の分の復活は使い果たしてしまっている。

 くうっ。

 一日待っていたほうがよかったか?

 でも一日待つ間にヤタロウの容体が悪化しては困る。

 今回の冒険では体のどこも欠損させないように注意しないと。


 サザ衛門から綺羅サンゴの特徴は聞いてある。

 虹色に輝くレインボーなサンゴらしく目に入れば一発で特定可能な代物らしい。

 まあそれもそうだ。

 虹色のサンゴ礁なんていう気色の悪いものが目に入ったら、どこぞのボンボンのウツボですらもそれが綺羅サンゴだと特定できるだろう。

 虹色のサンゴってなんだよマジで。

 引くわ。


 温暖な海流の浅瀬に群生するらしいのだが、他のサンゴとくらべて極めて希少なものであるらしい。見た目は派手なのになかなか見つからないということで薬剤師泣かせな素材であるとか。見た目が派手な意味がまったくねえぜ。


 そもそもなんで虹色なんだ?


 困ったもんだ。

 そんなレアアイテムをあたしは探してこなければならないのだから。


 でも仕方がない。

 大怪我を負ってしまったヤタロウを見過ごせるほどあたしは冷たいヤドカリじゃない。

 助けてあげたいのだ率直に。

 力になってあげたいのだ。

 あたしは温かいというよりは熱いヤドカリを目指している。

 黄金に輝く灼熱のヤドカリ。

 おかんの座ったあとの座布団よりも熱いヤドカリにね。


 だいぶ浅瀬に近づいた。

 もう周囲には桃色がかった白色のサンゴが群生している。

 だが虹色はない。

 マジで見当たらない。

 どこにあるんだよレアアイテム。


 とりあえず手近にある薄桃色のサンゴの枝をぽきっと折って食べてみる。


 コリコリコリ。


「うひゃあ! かっぱえびせんの味がするぜサンゴ!」


 やめられないし止められない。

 次々にサンゴの枝を折ってぱくぱくと口に含んでいく。

 兄弟たちもあたしの真似をしてぱくぱく食べる。


「美味しいきゅぴ!」

「食感が最高きゅぴ!」

「かっぱえびせんきゅぴ!」


 おいチワワ。お前かっぱえびせんのこと知らねえだろ。


 あたしが人間だったら今すぐにでも本物のかっぱえびせんを食わせてやれたのにな。絶対キュピ之介とかよろこんで意味不明なことを言うぞ。マザーの口調を真似して達観したようなことをね。あたしはキュピ之介のあの口調を聞くたびにマザーのことを思い出して涙が出そうになる。涙が出そうになると同時にどうしてだか背筋がぴしゃんと伸びる。


 あのときの説教を思い出す。

 あのときの自然のシビアさを思い出す。

 あのときの背中の格好良さを思い出す。


 マザーはあたしに生きる意志をくれた。

 あたしに目標をくれた。

 あたしの憧れだ。


「てぃきん!」


 当然サンゴを食べたのだから能力が開発されるに決まっている。

 あたしの中の未開の可能性を引っ張り出して検証していく。


 まず容易に把握できたのは【変色・白】と【変色・桃】だ。

 今まさに真っ白なチワワを真っ白なエルシャラが追いかけて遊んでいる。


「きゅぴきゅぴー」

「待てきゅぴー」

「捕まえてみろきゅぴー」

「このー」

「あー、やったなー」

「きゅぴきゅぴー」


 そしてあたしはゆっくりとキュピ之介を見やる。


「きめえ!」

「きゅぴっ?」


 キュピ之介の体にカルシウム的な鎧が形成されていた。


 興奮する。


 強化外骨格!

 漢のロマン!

 サンゴすげー!


 あたしは椀子ソバを食う勢いで片端からサンゴを平らげる。


 てれてれてってー。

 レベルアップ。


 これであたしの中の【骨鎧】がLv2になる。

 さっそく発動。


 ぴきーん!


「うおおお! かっけえええ!」


 あたしは吠える。

 頭部から戦士の兜みたいな骨格が突き出てきた。

 胸部にもカルシウム質の多段殻ができて、脚やハサミなども粗方強化されている。


「姐御SUGEEEE!」

「姐御KAKKEEE!」

「姐御YABEEEE!」


 兄弟たちもハサミを振り回して「うおお!」と雄叫びをあげながら称賛してくれる。


 強化外骨格の生成には少しコツがいる。骨だけにってな。あはっ。

 殴っていーぜ?


 何も意識せずにやるとヤドカリの甲殻が全体的に強化される感じなのだが、生成する位置に意識を向けると好きな場所に好きな形で生成することができる。ただ残念なのはまだLvが低いからか案外脆いということだ。ちょっと叩けば骨にひびが入って砕けてしまう。


 まあ毎日食っていれば使えるLvくらいにはなってるだろう。

 強化外骨格を身につけてしまったらいよいよあたしは無敵になってしまうな。

 笑いが止まらない。

 あびゃあ!


「もう巻貝とかいらねえ! ヤドカリだけど巻貝いらねえ!」


 ただのエビでいいやもう。

 アディオス! ベニヒメ!


 あたしはにゅるんと伸ばした手足で太極拳を舞う。



     ◇




 岩に貼りつくイソギンチャクがプランクトンの数を数える。



「暇だわ……。今ごろマーキュリーは何をしているのかしら……」



 ※ベニヒメに別れを告げて太極拳を舞っています。






【変色・白Lv2】←NEW!

【変色・桃Lv2】←NEW!

【骨鎧Lv2】←NEW!


 サンゴ:

 イソギンチャクの仲間らしいです。

 ベニヒメ「……え」

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