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if  作者: むらかみ
4/5

青年

今日も体調は最悪。

痛め止めを呑まなければ立っていられない。

ふと、あの青年の事を思い出す。

あの絵貰わないで帰ってしまったな。

まだあるかな?

少し回復したら行ってみよう。




、、、えっと、、確かこの辺だったと、


あっいた。


麗美(こんにちは、昼でも描いているのね。

横座ってもいい?)


青年(あっ、この前の綺麗なお姉さんですね。 どうぞ!僕の道路ではないので ご自由に

どうぞ。)


私は青年の横で先急ぐ人達を見ていた。

みんな何処へいくのだろう。

そんなに急いで、、、

険しい顔のサラリーマン、携帯でおしゃべりしながら歩くOL、馬鹿騒ぎしている学生。

みんな明日が来る事を信じて疑わない。

でも私には明日が来ない日がもうすぐ来る。


それは悲しい事?

それとも誰もがいつか旅立つ自然な事?

私ははどんな死に方するんだろう。

苦しみながら死ぬなら薬を呑もう。

睡眠薬を飲んで安らかに行きたい。



青年(出来ました!)


青年は知らぬ間に私の顔を描いていた。


凄くステキ。


絵の中の私は満面の笑顔で描かれていた。


麗美(凄くステキね。でも笑っていない私をどいやって描いたの? 想像?)


青年(絵は心で描きます。 この人はこんなステキな人だろうなって。自分の心で描かきながら描きます。

お姉さんは何か悩みを抱えていますよね?

そんな悩みは吹き飛ばしてしまいましょう。そんな願いを込めて描きました。)


、、、吹き飛ばしてか、、、。


麗美(そうね。悲しい顔は人に伝染するからね。笑顔でいなきゃね!、、、

、、、ねえ、私もうすぐ死ぬの。

病気なの。)


青年(、、、奇遇だね。僕ももうすぐ死んでしまうんだ。脳の病気なんだって。)


麗美(えっ、、、病院は?どうして手術しないの?)


青年(僕は孤児だし。手術するお金なんてありません。だからその日が来るまでここで描き続けます。

ただここで倒れたら社会のめいわくになっちゃうから、それをどうしたものか悩んでいます。)


青年は苦笑いした。


麗美(死ぬのが怖くないの?)


青年(、、、受け止めました。

お父さんやお母さんがいない事も。

学校へ行けない事や友達がいない事も。



その代わり神様は絵を描く素晴らしさを僕に教えてくれました。

それだけで十分です。)


私は自分が恥ずかしくなった。

なんの不自由もなく生まれ、親の愛情も受け、恋もたくさんした、そんな幸せを味わうだけ味わっておいて、この世に未練はない。

なんて、、、


私は父親に頼んで青年を病院に入院させようと決めた。


麗美(ねぇ、明日迎えに来るからまた、ここで待っていて。貴方は生きるべきよ!

私が助けてあげる)


青年(、、、本当ですか?

ありがとうございます。 じゃあ明日

ここで待っています。)



私は急いで父親の元へ行き、最期のお願いと頼み最高の病院と医師を予約してもらった。


翌朝、急いで青年を迎えに行く。



そこには青年の姿は無く、一枚の絵が置いてあった。

私の顔。

昨日も急いで帰ってしまったので貰い忘れてしまった絵、、、


絵にはこう描かれていた。


(親切なお姉さんありがとう。僕は人から初めて優しくされました。こんな気持ちになったのは初めてです。

嬉しくて、嬉しくて涙が止まりませんでした。

でも、それだけで十分です。

僕には、お金がありません。

世の中お金が必要な事はわかっています。


でも本当に嬉しかったです。


ありがとう。)


麗美(、、、どうして?、、、)


誰かが後ろに立っている。

自称神だ。


自称神(青年は生きる事よりも死ぬ選択をしたんだ。人の暖かさに触れてしまったから

、、、その暖かさは一度触れたら離れられなくなる魔物だと感じたんだ。

、、、麗美お前の責任ではない。

青年は幸せに旅立つよ。)



パンッ!


私はその男の頬を叩いた。


麗美(あなたに何が分かるの?いい加減にして。)


自称神(麗美、、、あと一週間だ。)


私はその場に泣き崩れた。

青年の選択と自分の無力さに。

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