3話
やっと俺の番になった。だいぶ時間は掛かったが気にしない。
それほどの価値がそこにはあった。
「あの~?どういったご用件でしょうか?」
優しく微笑むお姉さん。
お姉さんの耳元に口を近づけて、
フゥーはしない!
「ギルドマスターをお願いします。」
これ言っただけ。
「え?」
あ、そうです大事な用事があってここに来たのでした。
「あのー・・・。」
いえ、マジ話です。チラッと紋章が彫られた物を取り出した
お姉さんはビックリして、奥の方へと文字通り飛んで行った。
獣人の身体能力ぱないっす。
しばらくすると、冒険者ギルドの奥へと通された
『コンコン』
「ギルドマスター、お客様をお連れしました」
部屋に通されると中で座っている男が立ち上がった。
「俺がギルドマスターのアルガスだ!」
無精ひげにボサボサの髪だがワイルドを地でいく様な顔
そして何よりもアレが!!
あの犬耳がいい!!
ピョコピョコ動く耳、いいですね~
話を聞けば狼人だった
なんと犬耳ではなく狼耳でした失礼いたしました。
「で?なんの用だ?辺境伯の手紙を持ってきたようだが
印章は本物のようだが中は真っ白だ。ガキの使いにしては凝っているな。」
いえいえ今日はちゃんとした交渉にやってきましたよ。
「先代である父マルクス=フォン=シュトゥルムが
交渉していた件で本日は参りました。」
「そうかお前さんが・・・
で?冒険者ギルドの誘致の話だっけ?」
「はい、是非とも我が領地に冒険者ギルドを作っていただきたいのです。」
「・・・。」
中々の難物でした
しかし、上手い事いけた様な気がします
樹海でのまだ知られていないメリットと
デメリットも告げていく。
まだ発見されていない植物や魔物などがおり
植物はまだ治療法が見つかっていない病気の特効薬となるかもしれない。
植物がもしかしたら発見されるかもしれないし
魔物にしても良素材が取れるかもしれない
まぁ、かもしれないなんだけど。
俺は懐から1つの植物を取り出した
「これは?」
ギルドマスターが問いかけてくる
「我が父マルクスが第3層と呼ばれている地点で発見した植物です。
一応分かる範囲で調べさせましたが、まだ発見されていない植物で
鑑定の結果、石化病の特効薬となります。現在薬師により研究中ですが
いかんせんこの材料が足りません。しかし、多くのこの植物が採取可能となれば
多くの石化病の患者を救うことが出来るのです・・・。
どうかご検討ください。」
俺は隠し球を出し、頭を下げる。
んーっと深い溜息を付きながらギルドマスターが唸っていた。
石化病とは間接の骨が固まりだし、段々と腕や足が動かなくなってしまい
最終的には肺の骨が固まり肺や心臓を圧迫し死にいたる病気。
原因は究明されておらず現在も治療薬は無いに等しい。
最終手段としては固まった骨を無理やり折り
最上級神聖魔法をかければ一時的に回復するが
原因が分から無いために高確率で再発する。
全身の骨を折る痛みと、最上級の神聖魔法で多額の費用を負担する為現実的ではない。
「分かった、ギルド支部を作ろう
しかし、冒険者が集まるかは分からんぞ?」
よーし、第一ミッションクリア。
「はい、それではよろしくお願いします。」
ギルドマスターと受付のお姉さんに別れを告げ
第二ミッションを遂行する。
待たせてあった馬車に戻るとウィルが泣いていた
「坊ちゃま!お見事でした!!」
泣くような事しちゃいないんだがなぁ・・・
ちょっと冒険者ギルドを探検してくると言っておいただけなんだけど・・・。
次の目的地は商人の所へ。まずは大手の商館へ。
今回も馬車にウィル達を待たせて1人探検です
扉を開けると、おおー凄い何でも揃ってるかのような沢山の商品。
客が入ったのを聞きつけて奥から1人恰幅の良い男が姿を現したが
相手が子供と知り奥へと消えていった。
一通り見回してから銀貨1枚の綺麗なハンカチを3枚
メイドさん達のお土産に買う。
さぁ次へいってみよう
次は新進気鋭の若手商人のお店へ
小さいながらも良質の物を扱うと有名だとか
カランコロン
喫茶店でよくあるカウベルが付いたドアを開ける。
「いらっしゃいボク、お使いですか?」
中から若い男が笑顔で応対する
特に買う予定も無かったがとりあえず色々とひやかして見る。
「あっちは?こっちは?向こうのは?」
「えーっとこれは、カウイ村の工芸品だよ。こっちのは・・・」
1時間ほど色々な商品の説明に付き合わせた
こやつ、なかなか出来るな
「それじゃぁ、また来ます」
何も買わずに出口へと向かったが
「ありがとうございました~。また着てね~。」
と言われたので全面敗北を宣言する。あいつは大物だよ。
5分もしないうちにウィルを連れて戻ってきた
「いらっしゃいませ~あれ?どうしたの?」
若い男はウィルと俺の顔を交互に見て頭にハテナマークが浮かんでいる
「坊ちゃま、このお店でよろしいのですか?」
よろしいのです、さぁ早速交渉を始めましょうか。
「こちらはシュトゥルム辺境伯で在らせられます。」
若い商人はトルテと言う名前、トルテさんは状況が掴めないのかポカーンとしてる
正気に戻るんだ!!イスから足をプラーンプラーンとさせながら祈る。
それでは交渉のお時間です。
ウィルに言いつけ美術品を出させる。
この美術品は祖父が集めていたガラクタで
いや、美術品の価値はあるが腹の足しにならないと言う意味でのガラクタ
この数点の美術品を売り払い、我が家の当面の資金とするのが目的である。
それともう1つ
「え?シュトゥルム領への販路を開くのですか?」
そうなんです!現在我が領地には商人が来ないんです(泣
辺境過ぎる場所が一番の問題な理由ですが
領民が少なすぎると言う事も問題です
遠いのに商品を買う人が少ない=コストかさむ=儲からない
負の無限ルーーーープ!!
そこで今回この美術品でなんとかご機嫌伺いをして
赤字の分を美術品の売り上げで回して貰うって寸法さ。
それにこれから結構大きな販路になると思いますよ。
冒険者が集まったら、魔物の素材も集まり
ほぼ独占の形でお任せしたいとも思ってますしね。
「まぁ先行投資だと思ってください
最初のうちは少し赤字ですが、将来すぐに取り戻せますよ。」
「しかし、なぜ私のお店へ?大手の商館は色々とありますが・・・。」
「目を信じてますから」
「え?私の目ですか?」
「いえ、僕の目です。結構人の見る目あるんですよ
信頼できる人かどうか、大成する人かどうかをね。」
トルテさんはさっきまでは悩んでいたが
俺の言葉を聞いて表情が変わった
「分かりました、協力させて下さい。」
握手を交わし、お店を後にする
後日また細かい打ち合わせは必要になるだろうな。