癒夢
またナースコールが鳴っている。
看護師の足音が廊下で鳴り響いている。
さっき一人が出て行ったから、ナースステーションは誰もいない。
「んー………疲れた。早く定時にならないかな?」誰もいないことを確認して、伸びをして小さくため息をついた。窓からは一番理想的な夕陽が見える。
私はこの時間が好き。もう三十路近くになって、独り身だし、人生のパートナーもいないし、付き合っている男性もいない。だけどこの時間の夕日はどこか、ノスタルジックな気分にしてくれる。
少しだけ心に湧き上がる寂しさを噛み締めて、最後の書類に目を通したときに、人影が書類に影を落とした。
「あの、、、すみません。」白髪の目立った頭をした女性がカウンターの前に立っていた。それにとても疲れている顔をしていた。
「あの… 明日の予約をしたいんですけど…」どこかよそよそしいしく、俯いたまま話しかけてきた。
「はい、分かりました。何科を受診予約なさいますか?」出来るだけ、元気な声と精一杯の笑顔で…と言いたいが、朝から受付と事務処理に追われて、疲れがピークに達しており、小さい声と引きつった
笑顔での対応となった。
初老の女性は気にすることなく、「はい。脳外科をお願いします。」頭に手をあてながら恥ずかしそうに話した。
遠くで何かが鳴っていた。五月蠅いくらいに。
次に身体が揺れ次の瞬間、激痛で目が覚めた。
目の前には、白髪の女性ではなく朝の6時を示した目覚まし時計が、事務姿ではなくスウェット姿の私がベットから落ちていた。