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夢師  作者: 魚の骨
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幸夢

僕にお母さんはいない。何年か前にお父さんと喧嘩をして出て行っちゃった。

僕のお父さんは、最近優しい。特に毎晩見る夢の話をして、優しく頭を撫でてくれるお父さんが好き。


最近は学校に行くよりも、家でゲームをしてお菓子を食べていることが多くて、楽しい。ある日、学校なんか行きたくないって言ったら、お父さんは「無理に行く必要はない。父さんも若い頃は、学校が嫌いでよくさぼっていたからな。」とガハハと笑いながら、「お前は毎日眠って、楽しい夢の話をしてくれればいいんだよ。」って言ってくれた。

僕はずる賢いのかもしれないと、小学校3年生になった今でも時々思う。だってあのお父さんに言えば学校に行かなくて済むって薄々感付いていたから。

お父さんは学校の先生より強い。両隣に住んでいるおじさんたちも、お父さんが恐いのかお父さんが通ると家に入ってしまう。


また今朝、お父さんが夢にでた話をした。

それは音が五月蠅くて、数字が付いた魚とかが画面上に動くゲーム機みたいなもので、お父さんが笑って周りが箱で埋もれて行く夢だった。

お父さんが、その話を聞くとまた優しい顔で頭をなでてくれた。


お父さんが出掛けて一人でいたけど、ジュースが空になっている事に気付いて、近くの自動販売機に買いに行った。普段は家に閉じこもっているからか、外出は気分が乗らない。だけどジュース位ならすぐ終わるし、別に誰かに会うこともないから偶には…と考えて僕は外出した。


いつも通りに家を出て角をまかれば、自動販売機があるはずだった。先週までは確かにあったはずの自動販売機が無くなっていた。小学生ながら絶望に浸ってしまっていた。いつも徒歩二分の道程でたどり着くお手軽な機械が、遠くに行ってしまった。

兎に角、僕は第2候補の自動販売機に歩みを進めた。その途中に鳴き声が聞こえた。


公園の入口から少し入った小さい木の下から聞こえた。


僕がそっとのぞき込むと、小さな猫が段ボールに入れられていた。そう言えばペットが前から欲しってお父さんに言ったら「あんな高いもん。いるか!タダなら貰ってやる。」って言っていたのを思い出した。

僕は意を決して、子猫を抱えて家まで走った。きっと盗みをしたと勘違いされても仕方がない格好だったかもしれない。でも今の僕は欲しかったものを手に入れた幸せで満ち足りていた。


その日の夕方に上機嫌なお父さんが帰ってきた。早速の猫の事を話すと直ぐにオーケーしてくれた。


それから直ぐに子猫に名前をつけた。名前はジジに決めた。別に黒猫でも話を聞いて返事をしてくれるわけでもないけど、タマよりはマシだと思ったから、その名前にした。

ジジは可愛かった。時々トイレを辺り構わずしてしまうけど、大人しいし何でも食べた。それに僕の足にしがみついて、のどを鳴らしてくる。


ジジを飼い始めてから、夢にしジジが現れるようになった。ベランダで日向ぼっこしているジジ、庭で虫を観察しているジジ、僕のお腹の上で一緒に昼寝するジジ…色んな場面を夢で見た。

その反対に、お父さんが夢に出てこなくなった。それが原因かもしれないけど、お父さんの機嫌が悪くなっていった。

そしてある日、夢にお父さんが出なかったと伝えると、顔を真っ赤にして初めて頬を殴られた。何度も何度も殴られた。

やっとお父さん夢を見て伝えると、喜んでくれて前みたいに頭を撫でてくれた。


それから数日後、ジジが姿を消した。いくら待ってもジジは帰って来なかった。

そして

お父さんに毎日多分睡眠薬だと思うけど、薬を無理矢理飲まされていた。

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