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夢師  作者: 魚の骨
1/3

解夢

最近、夜眠るのが怖いと思うことが多い。

早く朝になって欲しいと願ってしまう。


遠くで、チャイムの音が鳴っている……

あぁ、まただ…またこの夢だ。夢だと分かって、夢を見る夢。けどただ観ることしかできない夢。

そうこのまま僕は屋上に連れて行かれて、クラスメイトの男子に何度も殴られる夢。


遠くで目覚ましが鳴っている。夢の終わりを告げる音。僕はいつものように目覚まし時計を止め、いつもの様に制服に着替えて、昨夜近くのスーパーで買ったパンを食べて一人、学校に向かった。

両親は昨年の秋に旅行の途中に高速バスの事故で亡くなった。その日は、高校受験の受験の日だったから不幸中の幸いで僕だけ生き残った。親戚中が哀れみの目で見てたことを覚えている。

幸いな事に保険やら何やらで、今後一人で生きていくには十分なお金があったから、親戚に頼らず一人で生きていく事にした。元々両親が共働きで家ですら会うことが少なかったから、あまり普段と変わらなかった。時々近くに住む、親戚が様子を見に来てくれるから寂しいとは感じる事は少なかった。


重い足取で教室まで着く、一応礼儀として「おはよう。」と小さく呟く様に言ったが、何人かは振り向くが返事はない。もう慣れた事だが、僕の中で“人としての最低のマナーだ”と言い聞かせて自分の席に着こうとしたら、机の上に大きく“ストーカー!死ね!”と鉛筆で太い線で書かれていた。また雑巾と消しゴムとで始まる毎日の繰り返しは始まっていた。


僕がいじめられるようになったのは、入学して間もなくだった。クラスで……いや“学年1可愛い女子生徒”の坂野美子〔さかのみこ〕が密かにストーカーひ被害に遭っていたらしい。もちろん高嶺の花の女子に声をかける勇気もなく、ひっそりと授業中に盗み見するしかなかった。

そんなある夜の夢に、彼女があらわれた。

勿論僕は正直嬉しかったし、じっくり観ていた。

どうやら下校途中のようで歓楽街の外れで、忙しなく携帯電話を使ってメールをしていた。それから少しして、年配のサラリーマン風の男性と会って何かを渡されてホテルに入って行く風を夢を通して見た。その日の寝起きは不愉快極まりないモノだった。


その日の学校での彼女の姿は酷く汚らわしいモノに見えたが信じたい気持ちもあった。ただの夢だと…

だけどその日の夜も同じ夢を見た。またあの男とホテルに入って行く風景。

僕は不安で夕方にその夢で見ていた場所に行って、正夢じゃないと願ながら時間がくるのをまった。しかし現実は甘くなく、夢と同じ恰好の彼女と夢と同じ恰好の男がホテルに入る姿を見てしまった。


その日の夜は夢を見るまでなく、目が覚めて学校に行った。僕は勇気を出して彼女がひとりになったところで声をかけた。

「あのっ!坂野さん。」初めての会話。クラスでも影は濃くないから僕の事を知らないかもしれないと思っていたが、「何?渡君。」感激だった。彼女は僕の名前を知っていたのだ。

廊下から彼女の友達の声がしたので慌てて要件だけを言ってしまった。「昨日の夕方の男の人誰?」その一言を言った瞬間、さっきまで微笑んでくれていた彼女の顔ら微笑みがなくなって、僕を睨みつけて「何の事?何か証拠でもあるの?」と言われた。

威圧感に負けそうになりながら「いや昨日、見てたら、男の人とホテルに………」と言い掛けたときに、彼女の友達が入ってきた。それと同時に「ストーカー!!」と彼女から平手打ちを食らわされていた。数日後には学年中に噂が広がり、見事に“ストーカー”に仕立て上げられてしまった。

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