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とあるケースワーカーのファイルより

作者: 仲南砂上

むらにしゆきこさまへ


いつもあなたは、なんでもしっているようにじまんげにしていますが、

ほんとうはあまりものしりじゃないことを、ぼくはしっています。

ぼくがあまり「どうして?」ときかないのは、くうきをよんでいるからです。

どうしてもしりたいことがあったら、いつもほいくえんのせんせいにきいてます。


どうしてうちにはパパがいないのか、ぼくはしっています。

このまえ、ばあばがおしえてくれました。

でも、ぼくにとってはどっちでもいいことなので、あまりきにしないでください。


しょうじきにいうと、ごはんをもうすこしおいしくつくってほしいです。

ぼくはパサパサのおにくはきらいです。

あと、おやさいをたべないのは、ひがとおってないからです。

つくってくれてとってもうれしいけど、ぼくは、おいしいごはんだともっとうれしいです。


ぼくがどうしてたたかれるのか、こころあたりがあるときも、ないときも、あります。

こわいかおをしたあなたがいやで、にげると、よけいにたたかれるのが、とてもいやです。

あと、『しね』ってことばは、ほんとうはいっちゃいけないことばです。

ぼくには、ちゃんといみがわかっています。

ぼくはしにたくないです。

あなたのそばでいきていても、ぼくは、ぼくのしあわせを、ちゃんとみつけられます。


ぼくがあなたをすきなのは、

ぼくがあなたからうまれたから、ではありません。

ぼくのこともおなじようにかんがえてください。


あなたになまえをもらったときから、

ぼくはぼくです。

あなたの おにもつ でも、宝物 でも、ありません。


できればでいいので、ぼくがおおきくなってはたらけるようになるまで、

たたくのはやめてください。

おこりたくなったら、あなたがどんなきぶんか、ぼくにもちゃんとおしえてください。

むずかしいことばをつかってもいいです。

わからないことばがあっても、あなたのいいたいことはだいたいわかります。


ぼくはうまれてたったの5ねんなので、せけんのことはよくわかりませんが、

だれかがあなたのことを『わるいははおや』だといっても、

ぼくがそうおもっているわけじゃないので、てきとうにあしらってください。


やさしいときのあなたが、ぼくはだいすきです。

なにかうれしいことがあったら、そのときも、ぼくにたくさんはなしてください。

あなたにすきなひとができても、ぼくはおこったりしません。

ぼくよりすきになっても、いいです。

けれど、いつもあなたのそばにぼくがいるのを、わすれないでください。

ぼくが、ちいさいうちだけでいいから。


あなたとずっといっしょにいるので、あなたのだいたいのことはしっています。


だから『大好き』っていうと、「おもい」きがするので、

あんまりいいません。

でもほんとうは、あなたがすきです。



                             むらにし しゅんた


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― 新着の感想 ―
[良い点] 虐待のニュースがあまりにも多くて、胸苦しく思っていました。ああ、幼くとも人としての心の叫びはあるのだ、と この詩を拝読して改めて痛感しました。
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