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大好きだったから‥

作者: ゆずか

十年前にあたし、坂井‥もうすぐ鈴本日奈子は恋をした。恋愛をしたのかな。その違いは二十七歳になった今も、わからない。両方かも。それは、まだ高校生で初めてみたいな恋で。

一歳年上の安史。安史が入学式の日、あたしに一目惚れして、告白してれた事から、あたし達は始まった。付き合う‥ってどんな事なのか、わからないまま気付けば、スタートしていた。

手を繋いだのも、それからだいぶたってからキスもしたのも、嬉しくてはずかしくて、でも彼と一緒にいる時間が大好きで幸せを感じてた。

なのに、あたしは母子家庭だったから、彼の親に猛反対を受けた。

彼もあたしも気にしなかったけど。彼のお母さんはあたしはしつけがなってないんじゃないかとか、片親なんてみっともないって言ってたみたい。

遊園地にも行ったし、あの頃は本当に幸せでずっと一緒に居られるって思ってた。

毎日、通学は一緒で授業の間、離れることすらさみしかった。彼があたしに一目惚れしたことから、始まった。同じ中学だったことは後からわかった。安史は知っていたみたいだけど。あたしが彼と同じ高校に偶然、入学してきっと、必然に出会ったんだって思う。

幸せにラブラブに毎日、あたしは笑ってたけど、彼のお母さんはあたしの母に、執拗な嫌がらせをはじめていた。それでも、母は最初は我慢していて、でも限界がきてから、あたしに言った。

「お願いだから、別れて‥。」

と。

あたしはどうしたらいいかわかんなくて、毎日、決意は変わった。母を苦しめたくないから、悲しいけど別れよう‥。安史に逢えば、そんな決意は紅茶に落とした角砂糖のごとく、もろかった。

高校入学と共にこの恋は始まり、二回目の夏を過ごして、花火が散ってくみたいに終わった。

付き合い始めて、すぐに猛反対にあってたから、あたしは泣いてばっかだった。それでも、あたしは安史を本当に失うまでは今思えば幸せだったのかもしれない。

安史があたしを愛してたから。

安史がすぐそこに居て、触れることが出来たから。

いつからか、一時しのぎにすぎないけど、母に別れたって嘘ついて、安史に逢ってた。

委員会、バイト、部活‥沢山の理由を考えて、少しでも長く居られるように。

バレた時の母はもう、それはおかしくなっていた。あたしに包丁むけ、凄まじい顔をしていたっけ。

あたしは殺されるって思った。

なんで?悪い事なんか何にもしてない!

勉強もそれなりにはしてたし、ピアノはバイトで稼いで月謝払ってたし、むしろその辺の高校生より、よくない?

ただ安史が好きなだけでどうして?

なんで好きになる気持ちまで、誰かにあれこれ言われなきゃいけないの?

なんでよ‥。

なんで‥。

あたしは何度も過呼吸になった。

安史も同じ想いで、二人で安史の立派な、おうちに言って訴えたし、あたしのボロアパートにも来て、母に泣きながら訴えた。

そんな毎日を過ごしてた。

元旦には朝四時に待ち合わせて、寒くて暗い中、小さな近所の神社で手を合わせて、祈った。


二人が認めてもらえますように‥‥


もうこの頃には、あたしと母はまともに会話も出来なかった。

そして、あたし達は二回目の夏を迎えた。

あたしはおこづかいすらもらえなかったから、夏休みは稼いでおかなきゃいけなくて、バイトばかりで、夏休みのが、あたし達は逢えなくて、早く学校に行きたかった。

安史はあたしよりバイトは少なかったから、たまにあたしが終わる時間に外で待っていてくれた。それで五分だけ話てから、帰った。

安史とあたしの家のおよそ、真ん中でいつも別れて帰ってた。

その日に限って、母がちょっと遅いあたしを疑って、あたしは気付かなかったけど目撃されていたらしい。

母は完璧、正気を失い、

「何度言っても、いまだに別れないんだね。死ぬから。」

いつの間にか痩せた、母は手に包丁握っていた。

「わかった!ごめん、お母さん‥。」

わからないけど、あたしは死なれては困るから、明日別れてくることを約束した。

母もあたしも泣いてた。

いっそ、あたしは死んでもいいなって思ってた。

もう完全に自分も未来も失いながら、最後に安史と約束して、公園で待ち合わせた。

付き合って、三ヶ月たった頃に初めて、キスをした公園だ。

梅雨で雨降りそうな日で、ずっと何かを言おうとして、言えない安史にイライラしてたら、ふいにキスをされたんだっけ。

キスをしたいって言えなかった、安史がかわいかったっけ。照れて、それから一週間キスしなかったなぁなんて事を思い出して、少し笑えた。

安史がやって来た。

あたしのが、珍しく早く着いてた。

安史に何度も別れようなんて、決意して伝えてたから、言い慣れてた。安史にこんなに好きなのに、なんで別れる必要があるの?って毎回言われて、そうだよなぁって、納得してまた仲良く‥その繰り返しだったな。

安史は別れを絶対考えなかった。安史だって、家であんなに反対されてるのに。

でも今回は、あたしはもう決意していた。

一人で母はあたしを育ててくれたのに、死なれては困る。

「安史、ごめん。大好きだけど、もうダメだよ。」

何度か言ったような、台詞を口にしたら、涙がぽろぽろ溢れた。

安史はまたか‥って顔して、いつもみたいにあたしを説得してきた。でも、あたしは今回は泣いて抱きついて、元通り‥のいつもをするわけにはいかなくて、『ごめん』の言葉だけ繰り返しながら、さっき歩いて来た道をまた引き返した。

「なんでだよっ‥。」

泣き叫ぶような、安史の言葉が背中にしみて、踵を返したい気持ちを振りきり、あたしは走った。

めちゃめちゃ泣いてて、地元だし誰か見てるかも‥一瞬よぎったけど、それよりも苦しくて苦しくて、胸が痛くて、頭ん中がぐっちゃぐちゃでとにかく、一人になれる、港に走った。

小さな港は、いつものように誰もいなくて、波の音だけが聞こえて、その単調な波を見ていると、たった今、世界一愛している人を失った現実が押し寄せた。泣いて泣いて泣いてた。

外で過呼吸になると、面倒だから、泣きたくなかったけど、コントロールの仕方がわからなかった。

水分が全部出たかも‥それくらい泣いて、その顔で近くの小さなバーに初めて入った。

まだ夕方でオープンしたばかりのようだった。どう見ても高二のあたしなのに、大丈夫そうだった。

赤ワインのグラスを注文した。

初めてのアルコールだった。綺麗なルビー色は美味しい葡萄の味かと思ってたのに、ただ渋いだけだった。

お財布には千円札が一枚と小銭しかないはずだから、それだけしかオーダー出来なかった。

初めて少し酔ったかもしれなかった。

家に着くと、母にあたしは言った。

「別れたよ。一生忘れないから。」

自分でも酷く低い声に聞こえた。

小さいアパートだから、まる聞えだけど、あたしは構わずまた泣いた。泣いた。泣いた。ご飯も食べないで、夜中になっても、朝になっても泣いてた。

残りの夏休み、一度も笑わなかったように思う。

バイトしか外出しなかったし、家にいるときはぼーっとしてるか、泣いてた。

それしか記憶にない。


二学期になった。

思えば、入学してから安史と通学していたから、今日から一人だ‥って思いながら家を出た。最寄り駅は大きいし、朝は通勤通学ラッシュだから、車両が違えば会うことはない。今までと同じ電車の今までからずっと離れた車両に乗り込んだ。

安史とはあっと言う間に着いてしまう、いくつか先の駅が、遠いことを初めて知った。電車を降りて、改札出た時、

「日奈子!」

いつもの声があたしを呼び止めた。

振り返る前に涙がまた溢れて困った。

「日奈子、おはよう。」

安史は今までみたいな、くしゃってなるあたしが好きになった笑顔だった。

あたしはただ安史を見つめて、涙をぬぐって走るしかなかった。

気付けば学校とは反対の場所で、過呼吸になってた。

慣れてる。だから自分でおさまるのを待った。



私は、今、フランス料理店で勤めている。家にはお金なかったから、進学しないで、この店で働きはじめた。さすがに勤続10年近くなる私は黒服に身を包んでいる。

サブマネージャーをしている。

もうすぐ結婚することになっている。

一生、こんなに優しくて温かい人には出会えないと思ったから、結婚を決めた。

幸せだ。来月から、婚約者の崇と暮らすから、荷物を少しずつ運び出している。

片付けが苦手で、忘れてた本や写真、CDが出てくる度に中断になって、いつまでも片付かない。

誰に似たんだろ‥。お母さんだよなぁ‥。

ちょっと他責にしたりする。

「あ‥」

角の折れた、それを拾ってみたら、それは懐かしい私が、安史に肩を抱かれて笑っていた。

涙がとまらなくなる。写真に溢れる。拭う。また溢れて、私は十年前のその日にタイムスリップした。

思い出さなかった。

あの日から、何人か付き合ったりもしたけど、安史との約一年半は空白みたいに思い出さなかった。思い出さないようにしていた。噂で聞いたことがある。安史はあの高校で教師をしているって。

何でも頼み込んだって噂を五年くらい前に聞いた。

流して聞いたことだし、わからないけど、もうあたしは運転席でエンジンをかけていた。


懐かしい、高校に着いた。いるかどうかもわからないのに、なにやってんだろ、あたし‥。

そもそも何と言って、学校に入ればいいの?

高校は変わってなくて、なるべく高校生に見つからないようにと侵入?した。

ジロジロ見られたけど、もうあと戻り出来ない。


いた‥。

変わってしまってるけど、安史に違いない。ゆっくり、生徒か先生か誰かに見せてる、あの笑顔に近づく。

こっちを一瞬見た。

気付かなかいよね、さすがに。

また話してる誰かの方に笑顔を向けた。

と思った時、

「なんで‥。なんで?」

安史は話をやめて、こっちに向かって、歩き出した。

あたしは精一杯の努力で笑って見せて、

「たまたま近く通って、懐かしくて。入っちゃった!」

そう言った時に、安史の左手の指輪に気付いた。

「そうか。久しぶりだな。俺は今、二人の姫のお父ちゃんなんだ。日向子は?」

先に安史から事実を聞かされた。

三十近いし、おかしくはないのに、やっぱりショックで、早く帰らなきゃと思った。

「あたしは仕事ばっかでさ!もうすぐやっと結婚するの。ごめん、仕事中なのにね!」

チャイムが鳴ったから、あたしはそう言って懐かしい学校の階段を駆け降りた。

昔はチャイムが鳴ったら、時にはこっそりチュウして教室に戻ったっけ‥。

涙があふれて、あまりスピード出さないでアクセル踏んだ。


時は人の気持ちをかえるんだ。

あたしだって、他にも恋したし、崇を今誰よりも愛してる。

過去に縛られて、人は生きていけない。


愛情は変化する‥。

知ってたのに、あたしもそうなのに、切なくなった。

あの時の痛みがまた、うっ‥てこみあげる。これで清算なんだ。

逢う約束もないまま別れた。きっと、これが最後なんだろうな‥。そう思った。

ありがとう。

ごめんね。

安史、安史、安史。

口に出してみる。

でももうその名前を呼ぶことはないだろうな。

今日だけは切なくいさせて。泣かせて。

部屋で写真を手に泣いてた。涙と一緒に、清算出来た気がした。

大好きだった。

大好きだった。

本当に大好きだった。


今は別々に幸せを見つけられて良かった。


大好きだった。

読んで頂き、ありがとうございます!

こちらはほんの少し、私のホントのお話です。懐かしいあの人を思い出したりしませんか?!過去の中では生きれないから、現実をちゃんと見つめなくちゃ‥、自分にも言い聞かせます。このあとのストーリー、続編予定してます!

ありがとうございました☆

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