一つの価値観
今の君は、
いくつもの君の亡骸の上に立っているということをわかっているかい?
例えば、気になる女の子に告白したとか、たまたま授業をさぼったとか
そんな君にとってちょっとした出来事でも、なんでもそうさ。
告白した瞬間、告白しなかった君はこの世から消失するし、
授業をさぼった瞬間、その日その時間に授業に出た君というのはいないんだよ。
選択ってそういうことじゃないかな。
何かを選ぶかわりに、何かを失う。
全てがそうだとは言わないけれど、そういったものって気づいてないだけで、
君や僕が生きてきた時間のうちにいったいどれくらいあったのかな。
大げさな表現だってことは重々承知さ。
だって、夕飯に白米を選択したから、○月×日にラーメンを食べなかった僕は、僕の人生では存在しないなんて大げさすぎるじゃないか。
でもね、やっぱり覚えていてほしいんだ。
僕たちは重ね合わせの状態では恐らく生きていくことができないんだって。
人生って、今までもそうだったけど選択の連続で成り立っているから。
間違ったからやっぱなしなんて、ゲームじゃないんだから無理だよ。
一つ一つの選択の上で今の君や僕が形成されているんだ。
選択されなかった君や僕っていうのは選択されなかった時点で途絶えてしまっているんだ。
その先の経験なんて知る由もないだろう?
「死」って経験できるもと思うかい?
君がどう思っているか知らないけれど、僕は無理だと思うね。
亡骸って表現したのはそういうことなんだよ。
何を願って、何にあこがれて、どこに行くかなんて人の勝手だけどさ。
君や僕は無数の君や僕を殺した上で、この瞬間ここにいる。
僕は祟りにあわないうちに納得の行く道を進むよ。
君はどうしたい?