第6話
同日、同時刻。結月は島内のレストラン街と呼ばれるエリアにあるカフェテリアで、藍色の髪の少女と落ち合っていた。ハンドルネーム、紗蘭。クリア回数、四十五回のベテランプレイヤーである。結月が初参加したゲームで出会った少女なのだが、年が同じだったこともありいまだに交流は続いていた。
「お疲れさまです、結月さん」
「お疲れ、紗蘭。今回のゲームはどうだった?」
「初心者プレイヤーの方が多い印象でしたね、結月さんは?」
「こっちも似たようなものかな。私以外全員初参加だった」
紗蘭はアイスティーに口をつけながら考え込む。結月はチョコレートパフェのクリームを一口掬うと口へ運んだ。途端に甘味が広がり結月の頬は自然とほころぶ。しかし紗蘭は硬い表情で結月に視線を向けた。
「最近、新規プレイヤーを大量に掻き込んでいる様子が見受けられますが、決してプレイヤー不足というわけではないですよね」
「確かに新人は多いけど、それがどうかした? 私たちには関係なくない?」
「大有りですよ。もし運営がプレイヤーの総入れ替えを目論んでいるなら、結月さんはともかく私は確実に間引き対象です」
紗蘭は常に周りをよく見て行動する。結月は運営がベテランプレイヤーを間引こうとしているようには思えなかったが、結月よりも経験豊富な紗蘭だからこそ感じられることもあるのかもしれない。だが。
「死ななきゃいいだけの話だよ」
「……そうですね」
結局のところはこれに収束する。運営はこの島をゲーマーの理想郷と謳っているのだ。そのために限りない自由を与え、一つのゲームで相当な額の報酬を受け取れる。
「ですが私たちは運営について知らなすぎます。そもそも私たちがゲームをクリアすることで得られるポイントはどこから発生しているのでしょう。誰が、どうやってこの規模の島を維持しているのか……」
「知らない方がいいこともあるんじゃない?」
「結月さんは気にならないんですか?」
「んー、私は特に。私たちはゲームをこなしてポイントを獲得する。そのポイントで生きる。それでいいじゃん。紗蘭だって帰りたいわけじゃないんでしょ?」
紗蘭は結月と出会った当初から以前の暮らしに戻ろうとはしていなかった。結月も同じだ。帰りたいとは思わない。今の結月には『目標』があるのだから。
「それもそうですね。私は死にません。誰にも間引かれない」
「そうだよ。次のゲームどうしようかなぁ」
「最近頑張ってますね、結月さん」
「まぁね。今回のゲームでいいプレイヤーに出会ってさ。追い抜かれたくないから」
紗蘭に語って聞かせながら結月は青髪の少女を思い出す。ハンドルネーム、朱莉。彼女はきっといいプレイヤーになるだろう。
「とうとう結月さんにライバル現る、ですか」
「いや、向こうは全然そんなこと思ってないと思うよ?」
「どうでしょうか。結月さんが対抗心燃やすほどですからね」
「そんなんじゃないって……」
しかし心のどこかで結月は確信していた。彼女と自分は再会する運命にあることを。そしてその時は、結月の想像以上に早く訪れる。




