第2話
ハンドルネーム、朱莉。彼女はこのゲームに『招待』されるまで、情報屋兼ハッカーとしてネット上で活躍していた。そして依頼人から紹介されたネット掲示板でゲームの存在を知る。
トップゲーマーが次々と行方を眩ます謎。では消えたゲーマーはどこに行くのだろうか。
興味本意で複数のゲーム履歴を改竄してみた朱莉は、実際に『案内役』が自宅を訪ねてきた時、かなり驚いた。ただの都市伝説。ただの曰く話。それだけだった、はずなのに。しかしここで引き返せないのが好奇心の恐ろしいところだ。
『トッププレイヤーのあなたを、ご招待に参りました。命をかけてゲームをする覚悟はありますか?』
その問いかけに、朱莉は頷く。様々な相手と、ネット上とはいえグレーゾーンの駆け引きを行ってきた自負も朱莉の背中を押した。そして今に至る。
朱莉の前を歩く少女は既にこのゲームを十回クリアしているらしい。長い黒髪と、どこか闇を感じさせる瞳。あれは、人を殺している人間の目だ。他のプレイヤーは騙せても、朱莉は騙せない。とは言っても本人に隠すつもりはないのだろうが。それはこれまでの言動を見ていれば何となく察しがつく。
まずはこのゲームをクリアすることからだ。クリアさえできれば現実世界に帰れるようだし、まだまだ知りたいことは山ほどある。朱莉の情報屋としての好奇心は刺激される一方だ。
※※※
子供部屋を出た結月は慎重に辺りを見回す。右には扉、左には階段があり下の階へと続いているようだ。階段を子供部屋と挟むようにしてもう一つの部屋があり、その部屋の右側に更に扉がある。この階には子供部屋の他に三つの部屋があるようだ。結月は一番近い、階段の右側の扉を開けた。
「トイレ?」
「ですね」
「ここは一旦飛ばそう。右と左、どっち?」
「じゃあ、右で」
階段を降りるか少し迷ったものの戻ってこられなくなる可能性もある。最初にこの階の探索を終わらせるべきだろう。階段を無視して子供部屋の向かいの部屋を開けるとそこは和室のようだった。しかし障子は、猫でもここまで荒らさないのではと思うほどひどい有り様である。
「荒れてますねぇ」
「だね。特にめぼしいものはないかな……」
「入って大丈夫ですかね?」
「そこは自己責任で」
「了解です」
朱莉は軽く頷くと躊躇なく和室に足を踏み入れた。が、一枚の畳を踏んだ朱莉の足元でカチリと嫌な音がする。続いて襖が開き竹槍が一斉に飛び出してきた。結月は和室に飛び込むと朱莉の腕を掴み引き倒す。
「朱莉、大丈夫?」
「いてて……すみません、大丈夫です」
わずかに回避が遅れたのか、朱莉のフード付きパーカーは裂け傷口から出血していた。
「ごめん、ちょっと遅かったね。これ使って」
結月は制服のポケットから包帯を取り出すと朱莉の腕に巻き付ける。その時、階段が崩落するような轟音と共に少女の悲鳴が響き渡った。




