第13話
数分後。結月は意識を取り戻す。上体を起こすと朱莉が安心したように息を吐いた。
「よかったぁ……大丈夫です? 気絶してましたよ」
「大丈夫……」
まだ一回目。残機は残り四つ。焦る必要はない。結月がリビングに戻ると零が紙に何かを書き留めていた。
「起きたか」
「うん。次の部屋割りは……」
「まだこのままだ。幸い、初心者連中は全員無事だからな」
「そうだね」
六十六回目の零と、ゲームに慣れてきている結月は感覚を一つ失った程度では取り乱さない。だが初参加プレイヤーはそうもいかないのが現実だ。一度でも見つかれば恐慌状態に陥ったとしても不思議ではないだろう。続く第三ゲーム。
「なんでッ?」
結月は二回連続で『亡霊』の標的にされた。
※※※
恐怖よりも怒りで震える結月を尻目に零が笑う。
「お前は本当に運が悪いな」
「ひどいよ!」
「部屋を変えるか?」
「……」
零の問いに結月はゆっくりと首を横に振った。
「いや、いいよ。このまま行こう」
「結月さん、私の感覚、譲りましょうか」
「ダメだよ、このゲームにおいて感覚は命と同じだ。私の残機が残り一つになって、朱莉の残機が五つのままだったら、その時お願いするね」
そして第四ゲーム。
「はは……やられました……」
フラグを回収するかのように朱莉が犠牲になった。
「ごめん、私が余計な事言ったからかな」
「いえいえ……こんなの運ですから」
これで残り残機は結月が三つ、零と朱莉が四つずつ。今回も部屋割りは変えず第五ゲームへ。結果は。
「いやあぁぁぁあぁぁ!」
薄紫色の髪を結い上げた小柄なプレイヤー、海月。彼女の絹を引き裂くような悲鳴が響き渡った。結月が扉を開けると脇をすり抜けるように桔梗が室内へと飛び込む。
「海月! 大丈夫ッ? しっかり!」
「き、きょう、ちゃ……やっぱり、怖い、よ……助けてよ……桔梗ちゃん……」
「……海月」
自分に縋りつく海月を、桔梗はしっかりと抱き締めた。そして。
「大丈夫……私が、代わってあげるから……」
ゲーム開始から六時間弱。初めての『身代わり』が行われる。海月と桔梗は唯一の初参加プレイヤー。席も常に隣同士に座り励まし合っている姿を結月は見ていた。桔梗はリビングに設置されているタブレットへ手を伸ばす。
「えっと……」
自分のプレイヤー名と感覚を譲るプレイヤー名を選択し、桔梗は震える手で確定ボタンを押した。これで桔梗の味覚が海月へと渡ったはず。海月は残機五つの状態に戻る。続く第六ゲームは。
「いやあぁぁああぁ!」
皮肉にも、桔梗が犠牲となった。




