第12話
「思ったより広いな」
零が六番目の部屋に入ると中はベッドルームのようだった。小さなテーブルとシングルサイズのベッド、そして人一人くらいなら隠れられそうなクローゼット。他に特筆すべき点はない。零は隠れ場所を探すでもなく優雅にベッドに腰かけた。この室内ではどこに隠れようと確実に見つけ出される。部屋に入られたらアウトだ。ならばいつでも動ける体勢でいた方がいい。
「……そろそろ、か」
零が部屋に入ってからちょうど三分。部屋の扉がゆっくりと開かれた。『亡霊』のお出ましである。
「ほう、初手で俺を選ぶとは」
『見ーつけ……』
最後まで言い切る前に、零はシーツを投げつけ『亡霊』目掛けて蹴りを放つ。だがシーツは『亡霊』をすり抜けて零の蹴りを躱した。物理攻撃は無意味。即座にそう判断し、零はドアノブに手をかける。
「ふむ、開かないな」
しかし扉はびくともしない。完全に閉じ込められた。次の策を練るより早く『亡霊』の魔の手が零に迫る。そして。
『見ーつけたぁ……』
『亡霊』が零の肩に触れた瞬間、零は意識を手放した。
※※※
数分後。結月はスタート時に集められていたリビングに再び戻っていた。自動的に部屋の扉が開いたのだ。
「あ、結月さん。ご無事でしたか」
「朱莉。よかった、大丈夫そうだね」
他のメンバーも初期位置の椅子に腰かけている。だがそこに零の姿はない。
「零さんは?」
「さぁ……まだお戻りになっていないようです」
結月は閉まったままの六番目の扉に手をかけた。少し力を入れるとドアは簡単に開く。
「零さん? 零さん!」
「……結月か」
扉付近で気を失っていた零はゆっくりと上体を起こした。
「大丈夫?」
「あぁ、問題ない」
「『亡霊』に?」
「そうだ。その件も含めて、改めて情報共有が必要だな」
零は何事もなかったかのように立ち上がるとリビングに向かう。そしてプレイヤーを一瞥した。
「俺以外に『亡霊』に襲われた奴は?」
「……」
誰も何も言わない。
「なら『亡霊』は一体として考えていいか」
「プレイヤー数的にもそうだと思う。次の部屋割り、どうする?」
「とりあえずこのままいく。部屋を変えたい奴はいるか?」
少し待ってみても意見のあるプレイヤーはいないようだ。それもそうか。初参加や二回目で六十五回クリアのベテランに文句をつけられるわけもない。結月が逆の立場だとしてもそうしただろう。一時間のインターバルが終わり、再度六人のプレイヤーは各々の部屋に散っていく。第二ゲーム、『亡霊』の標的になったのは。
「……げ」
結月だった。




